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2015/02/03

鯨統一郎の「桜川東子シリーズ」

Kujira 鯨統一郎の「桜川東子シリーズ」は,これまで5つの短編集が出版されている推理小説シリーズです。
 渋谷にある日本酒バー「森へ抜ける道」に集まる厄年トリオ(バーのマスターである島,フリーライターとも犯罪心理学者ともいわれる山内,それに各物語の語り手である刑事・・・それが2作目からは私立探偵に職業替えをする工藤の42歳同士三人)と,金曜日にこのバーにやってくる常連の大学院生,桜川東子。
 厄年トリオがこのバーで昔の歌手や映画や子どもの遊びや歌謡曲などについて語り,やがてそれが関連した最近の事件の話題に移り,マスターはワイドショーや週刊誌の知識から,工藤は犯罪専門家の立場から語っていると,三人のマドンナである桜川東子がそれに加わり,結局東子が謎を解く。つまり桜川東子による安楽椅子探偵譚というわけです。鯨統一郎作品ですから,どの作品も肩がこらない短編推理小説です。
 全くワンパターンですが,第一短編集では海外の童話,第二作では日本の昔話,第三作ではギリシア神話,第四作では歌舞伎,第五作ではオペラにちなんだ謎解きが行われます。そして,その童話からオペラまで,新解釈が行われるところが鯨統一郎らしいところです。
 このシリーズ,作者としては第一短編集で終わらせることを意図していたと思われるのですが(第一短編集の最終作を読めばそのように思う),好評だったのかその後続々と作品が書き続けられたという感じがします。
 たぶん若い読者には,各作品前半の厄年トリオによる昔語りが退屈だろうと思うのですが(例えば,現実のレコード大賞発足前からレコード大賞があったとしたら,どんな唄が受賞するかなどという話題が語られるのですから),そんな昔の時代を共有している人が読めば,楽しく読めるミステリーです。
 これまでの5作は全てKindle化されていますが,第5短編集だけは1000円以上(他は数百円代)します。これは4作目までは文庫版が出版されており,文庫版の電子書籍化であるのに対して,5作目は文庫版が出版されておらず,単行本からの電子書籍化であるからでしょう。実際のところ,4作目の文庫版も昨年11月に出版されたばかりで,それまでは単行本しかなく,電子書籍版も1000円以上していました。文庫化にしたがって500円台に値下げされたのです。
 電子書籍では文庫も単行本も区別がないのですが,文庫化にしたがって値段を下げるのはなかなか良心的です。

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