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2015/03/19

ウーバーという配車サービス

Uber 米カリフォルニア州のベンチャー企業,ウーバーテクノロジーズが展開するウーバーというサービスは,スマホにダウンロードしたアプリによってウーバーに登録されている車(ハイヤー)を呼び出すシステムです。アプリの地図上で車を呼ぶ場所を示すというハイヤーを呼び出すシステムですが,ハイヤーといっても,既存のタクシー会社のハイヤーが来るわけではなく,ウーバーに登録されている運転手の多くはウーバーが募集した素人です(六本木で行っている試行では,既存タクシー会社と提携しているらしい)。
 それだけ聞いても既存タクシー・ハイヤー業界との軋轢が想像されますが,事実,世界各国でサービスが開始されたものの,営業停止などの処分にあっています。
 理由は様々で,一種の白タク営業である事を法律違反とされたドイツの例,タクシー運転手組合の大規模な反対運動が起こって政府がウーバー営業停止措置を取ったフランスの例,ドイツでは裁判所から営業停止命令が出されているし,インドではウーバーで呼び出した運転手が乗客の女性に乱暴して営業停止に追い込まれています。その他韓国ソウル市や中国でも営業を禁止する措置が行われているし,既存タクシー業界の反対はスペインやオランダなどでも起きており,逆にそんな反対運動が起きない国は,よっぽど現状のタクシー行政に問題があるのではないかと思ってしまいます。
 日本でも,前述の六本木とは別に,ウーバージャパンは福岡市と周辺市町で「ライドシェア(相乗り)」というサービスの試行を始めました。
 ライドシェアの発想は,ネットがヒッチハイクを仲介するという事です。スマホで乗りたい場所と降りたい場所を指定し,それを見たドライバーが「同じ方向だから」と車に乗せてくれる・・・それをネットが仲介しようというサービスです。
 ヒッチハイクですから,本来ドライバーは乗客から料金を受け取らず,せいぜいガソリン代のカンパを受けるだけというのが原則です。
 ところがウーバーの福岡でのサービスは,広告によってウーバーに登録する運転手を募集し,一時間いくらという決まった報酬を支払うというものでした。試行期間のため,乗客からは料金を取らなかったようですが,営業許可のない一般人がお金めあてにマイカーを走らせるという行為は完全に白タクではないかという事になって,国交省から道交法違反の疑いで試行の中止を申し渡されることになりました。
 日本はタクシーに関する規制が特に厳しく,消費者より業界人を守る力が強い国で(それが結局消費者を守ることになるのだという発想),そこで白タク営業をしようと思ったのは,ウーバーの意気なのか単なる世間知らずなのかわかりませんが,各国で営業停止に遭っている状況では,日本への参入は極めて厳しいといわなくてはなりません(六本木では既存タクシー会社と提携するという慎重さを見せていますが)。
 ウーバーは実質的に現行の法律に違反していますが,「消費者に役立つなら規制緩和したらいいじゃないか」という事になります。しかし運転手は二種免許も持っていないアマチュアドライバー,法律的にも一般運転者と同じ法律が適用されていることから,本当に安全なのかという疑問はついて回ります。
 実際に規制緩和で交通事故が増えたとう業界があります。
観光バス業が規制緩和され,その結果安い値段で乗客を運ぶ小さなバス会社が増え,既存の私鉄などは観光バス業をやめてしまい,利用者はそんな小さなバス会社に依存せざるを得なくなりつつあります。しかしそんな観光バスは,会社の規模が小さく安全管理がなおざりにされるケースがあります。記憶に新しいところでは,2012年に起こった関越道でツアーバスがガードレールで串刺しになった事故。これは運転手の居眠りが原因でしたが,一人で長時間運転せざるを得ない業務環境が大元の原因でした。この時の調査では,旅行会社が直接頼んだバス会社ではなく,さらに小さなバス事業者に仕事を丸投げする事も行われていたことが明らかになりました。
 今回のウーバーサービスも,消費者は目に見えない安全にお金を払う事を忘れている・・・というより,規制緩和以前の長年の習慣から,タクシーやバスの安全性というのが染み付いていて,安さに目がくらみ安全性に疑問を持つ頃さえしないという事があります。ところがどっこい,ウーバーシステムは私がお金をもらって乗客を乗せると考えると,とても信頼できるものではありません(チョットwww)。
 ネットに対するリテラシーの高い人には絶賛されがちなウーバーサービスですが,そんな消費者にはウケるサービスでも,根本的なところが劣っていて,消費者が見過ごしがちな重大な欠陥がある場合がある事を,観光バスの例を思いつつ考えました。

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