戦後70年の平和教育
昨日は終戦記念日。それに先立って,今月に入って,各所で戦争体験者の講演会が行なわれています。それを聞くと,当時の大変な経験をされた方々に対して,同情を禁じ得ません。そんな体験者の方々も,戦後70年が経ち,当時10歳だった方も80歳になるわけで,戦争時成人だったの方の体験が次第に聞けなくなるというのも,時代の流れで仕方ない事なのでしょうね。映像などで残しておく事も大事な事かと思います。
一方,当時の体験,特攻とか(93歳のカミさんの父上は,学生時代に赤紙で徴兵され,海軍で海の特攻隊を送り出す立場だったし,私の母は従軍看護婦として中国に渡っていた),塹壕の中で戦士した戦友の様子,赤紙一つでかり出された徴兵制,学徒出陣,戦後の様子など,その悲惨な様子を聞くわけですが,おそらく万が一今戦争が起こっても,現代の戦争では,語られているようにはならないだろうなという思いもあります。
スイス,フィンランドなど,現在徴兵制のある国も多いですが,戦争要員というよりは,国民統合の象徴としての徴兵制だったり,教育の一環だったりします。最近まで徴兵制があったが,廃止したスウェーデン(2010年廃止)やドイツ(2014年廃止)のような国もありますね。実際,近代の戦争は素人がそれ程大勢必要なわけではなく,少なくとも先進国では,訓練されたプロが操る機械兵器での戦いになります。さらに近年は,無人兵器ロボットによる戦いに移行しつつあります。国会前でデモをする若者は,「戦争に行きたくないから反対している」という人が多い様ですが,おそらく戦争が起こっても,一般人が戦争に行く機会はかなり少ないでしょう。(大人にだまされる事の方が,多いと思いますよ。)世界一の軍事大国,アメリカが,実質的に現在徴兵制を採っていない事が,徴兵制の必要なさを物語っています。
先進国同士が戦う第二次世界大戦の様な戦争も,今後は起こりにくいでしょう。先進国同士では,経済的に損失である戦争は,起こす動機がありません。中東のIS支配地域の一般住民の悲惨な様子は,日本の戦争体験者の話とダブります。しかし,テロ国家として欧米の先進国から攻撃されるという事は,日本ではまず起こらないでしょうね。
地域紛争や,経済的な事をいとわず宗教的な事や国力発揚・国威向上・覇権拡大などの目的で新興国やグループが起こす戦争に,先進国が巻き込まれる事は考えられます。だから先進国であっても,一定の抑止力を持っている必要があるのですが,でも日本を舞台にして一番起こりそうなのは,おそらくテロです。その様子は,今語られている戦争体験とは全然別のものとなるでしょう。
戦争は純粋に経済的に見て,得する事はありません。儲かるのは一部の兵器製造メーカーくらいのもので,それも戦争への準備として兵器を買ってもらい,実際は平和であった方が実は経済的にお得です。
日本が戦前の大日本帝国の時代に戻る事を本気で心配しているのは日本人くらいのもので,外国はどこもそう思っていないでしょう。池内恵東京大学准教授は,「かつて『日本を縛る』ことが東アジアの平和になにがしか役立っていた時代があって(といってもその間に東アジアに地域紛争は起きていたが),その時代を生きてきて,『どう日本を縛るか』を考えて発言して,それによって自我を形作り人生を築いてきた人たちが現在高齢化し,新たな世界状況を見る意欲や能力を失っている。」と語っていますが,若い人達はそんな大人達に惑わされない様にしなければなりません。
そんな事を考えていくと,歴史の証言者として戦争体験者の話は貴重で重要ですが,これからの日本人が語られるのと全く同じ目にあうという事は考えにくいのです。
だから戦争体験談を聞く事で,平和教育になると思わない方がいい様な気がします。聞いている若者は,歴史の授業を受けている様な感覚しか持たないのではないかと思うからです。例えば戦国時代の合戦や関ヶ原の戦いを聞いている感覚・・・・・。(そんな話を聞く事も,それなりに歴史の証言として重要です。)
これからの平和教育は,近代戦がどのようなもので,どのように攻撃されるのか,日本のおかれた立場ではどのような戦争が起こりえるのか,起こりえないのか,起こったらどんな事になるのか・・・,それは徴兵や学徒出陣や特攻とは全然別の事が起こるでしょうね・・・,それを回避するにはどうすればいいのか,そんな事を教育していく事が重要だと思います。
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