辻真先の「伊豆・踊り子列車殺人号」
辻 真先著の「伊豆・踊り子列車殺人号」は,トラベルライター瓜生慎のシリーズの1作です。
瓜生慎のシリーズは,彼の若い頃,恋愛時代の第一期,結婚して間もなく,そして子供が生まれた頃の第二期,中年になって息子の中学〜高校生の竜と彼の聡明なガールフレンド,うずらが脇役としてある程度の活躍をする第三期に分かれますが,これは第三期の作品です。
旅行会社が企画した伊豆のイベント「踊り子祭り」。踊り子と学生に扮した男女ペアのコンテスト。その踊り子祭りをトラベルライターとして取材する瓜生慎,さらに参加者として踊り子と学生に扮したうずらと竜。その中で優勝最有力と言われたカップルの女子高校生が失踪,それを追いかけた主催する旅行社の担当者が,電車の中で女子高生を捕まえる。しかしトイレに行くと言って降車し,駅のトイレに入ったきり第三者が見張っている前で女子高生は消失。やがて踊り子祭りを協賛している老舗旅館の主人が崖から投げ落とされた死体となって発見され,失踪した女子高校生が犯人の様にも思えて・・・・・。
トリックも盛られ,探偵の細かい推理もあり,しっかり本格推理小説しているのですが,あまり気負って読む必要がない辻作品,ラノベにも通じるような気さくな文体が心地よい作品になっています。
さらさらと読めてしまうのですが,よく考えたらかなり深刻な内容を扱っているんですよね。そこに気づいて,かえって衝撃を受けるという作品でした。
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