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2015/10/16

河野裕「つれづれ北野坂探偵舎 感情を売る非情な職業」

Tsurezure_kannjyo

 河野裕(こうのゆたか)の「つれづれ北野坂探偵舎 感情を売る非情な職業」を読みました。以前紹介したことのある北野坂探偵舎シリーズの4作目です。
 このシリーズについての詳細は,上のリンクから前の記事を参照していただくとして・・・・・,今回は佐々波と雨坂等がシリーズ第二作「著者には書けない物語」中に描かれた交通事故にあった時から7年後を舞台にしています。佐々波が交通事にあったのは17歳のとき。佐々波は事故の昏睡からすぐ目覚めますが,雨坂は7年間昏睡状態を続けます。事故から7年後,佐々波は出版社の編集者になっています。その出版社で主催している文学賞の担当部門にいて,新米の女性編集者工藤の上司になっていいるのです。さらに佐々波は,結婚してもいいと思っている校正担当の女性と同棲しています。
 ところが,この女性が実家に帰っているとき,階段を踏み外して死んでしまうという事件が起こります。ミステリー的にいえば,この女性の死が事故だったのか自殺だったのか,自殺だとすればどのような理由があったのか,を解くミステリーということになります。
 実際にはそれとともに,7年の時を経て目覚めた雨坂,彼が目覚めてすぐに書いた7年ぶりの作品,佐々波が推すこの雨坂の作品と編集長が持ってきて工藤が担当になった新人作家の原稿のどちらが文学賞をとるのか,過去にこの文学賞を受賞した未完の作品の後編の行方,などなど,どれが本筋ともどれが傍筋ともわからないように渾然一体となってこの作品は進んでいきます。
 もちろん,雨坂の同棲相手の死の謎は,これまで同様雨坂によって解かれることになります。最後に紫色の指先の謎について,書評家であるカラスさんからのヒントの開陳があり,少しこの謎も前進して終わります。
 ミステリー的な謎よりも,登場人物たちがどうなるのか,事件よりもこの状況がどのように変化していくのか・・・・・という興味で読ませる作品です。その点,ミステリーファンとしては忸怩たるものがあるのですが,北野坂ファンとしては,興味深く読みました。
 次回作はこの10月中に出版される予定の「トロンプルイユの指先」,アマゾン書店ではすでに予約受付中になっており,次のあらすじが載っています。
「佐々波、雨坂……2人の探偵に最大の謎が立ちはだかる!突然気を失った小暮井ユキがめを覚ますと、そこは雨坂続の傑作『トロンプルイユの指先』の舞台だった。 異質な世界に迷い込んでしまったユキは現実の世界に戻ることができるのか? シリーズ最大の謎解きが始まる!」
 今回の舞台は,過去の世界(たぶん今から12年前)でしたが,次の作品も現実世界の現代が舞台ではないようです。とにかく出版が待ち遠しい。

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