アガサ・クリスティーの「秘密機関」
クリスティーの「秘密機関」を再読しました。再読ですがもう内容はすっかり忘れており,ほとんど初読と言ってもいいくらい。そもそもこの作品を読もうと思ったのは,NHKでこの10月に放映された「トミーとタペンス」に触発されたためです。
テレビドラマを見て,拳銃を多用したり,ギャングが仲間の首を絞め,最後に首の骨を折って処刑したり,どうもクリスティーらしくないと思いました。じゃあ原作はどうだったのだろうという興味から読んだのです。
ドラマと小説を比べると,細かいところがずいぶん違います。そもそも時代背景も違います。原作は第一次世界大戦当時。ドラマは1950年代。原作は秘密文書の争奪戦。ドラマはアメリカ国務長官の暗殺。
でも話の骨格は同じです。犯罪を影で操るブラウン氏,失踪した謎の女性ジェーン・フィン,その知り合いのアメリカ人はブラウン氏ではないのか?,ブラウン氏の正体。ラストでブラウン氏が追いつめられて自殺するのですが,ドラマは派手に建物から後ろ向きに飛び降りる。原作では服毒自殺です。ブラウン氏の正体を原作ではトミーがある事実から推理しますが,そんなクリスティーの推理小説的な部分はドラマ版にはありません。
ドラマでは3話で構成されていましたが,私が原作を読んだのはその2話目をみた後です。したがって,ブラウン氏の正体はまだ明かされていませんでしたが,ドラマの展開から見当がついてしまいました。原作では別人をブラウン氏だと思わせる工夫がうまくなされており,原作を最初に読んだら,ラストで正体を知って驚いただろうと思います。さすがにサプライズエンディングの魔術師,クリスティーです。
この作品,なんとクリスティーの第二作目なのですね。処女作でポアロが登場する「スタイルズ荘の怪事件」に続く作品だったのです。トミーとタペンスの方がミス・マープルより早く世に登場していたのを,今回の再読で初めて知りました。
テレビドラマは,次回からはトミーとタペンスものの長編第2作目「NかMか」が放映されます。これも原作を読んでおこうと思います。こちらも再読のはずなんですが・・・・・。
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