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2015/12/30

久住四季「星読島に星は流れた」

Hoshiyomito

 作者の久住四季は,ライトノベル作家。私も初めて読む作家です。そもそもミステリーっぽい作品を発表してきているらしいのですが,この「星読島に星はながれた」は,東京創元社からミステリ・フロンティアの一環として発行されたもので,ラノベというより完全に推理小説しています。ミステリ・フロンティアシリーズからは,以前紹介した事のある伊坂幸太郎の「アヒルと鴨のコインロッカー」や加藤実秋の「インディゴの夜」シリーズが生まれています。
 さて「星読島に星は流れた」の舞台はアメリカ。ボストンで家庭訪問医を仕事としている日系アメリカ人の加藤盤が主人公で,加藤の目線で物語りが語られます。
 ネット上で天文フォーラムを開いている女性天文学者,サラ・ディライト・ローウェル博士。彼女は数年に一度は隕石が落ちるという星読島に個人天文台を持っています。フォーラムのメンバーの中から選ばれて毎年数人この島に招待されます。今年は加藤盤も招待されました。
 やがて隕石が落ちて,そして招待された7人の中で殺人が起こる。
 数年に一度という頻度で同じ島に隕石が落ちる謎,もちろん殺人犯人の謎。そして最後の最後には,さらにその奥にあった真相。孤島ものながら決して軽いミステリーではないものの,ガチガチの推理小説というわけでもありません。でも謎が生まれそれが解決されて,ハッピーエンドで終わります。
 細かい謎は,よみすすむにつれてちりばめられています。隕石をを誰が手にするのか分からない段階でなぜ犯行が行われたのか,閉ざされた島で,隕石と殺人を行なって,どうやって島から運び出す事ができるのか,加藤の実験の結果,遺体を海へ投げ込んだ現場が分かったが,そこまで被害者をどのようにして運び上げたのか,なぜそんな運搬困難な場所から遺体を海へ投げ込む必要があるのかなどなど。ここら辺の謎の連続が,ミステリー感を盛り上げています。
 後味のいい推理小説といえるでしょう。殺人が起こるのは,物語りが半分以上進んだ後です。その意味では,謎が現れるのが物語りが半分進んだ後という事になります。本来稀な隕石がなぜこの島に頻繁に落下するのかという謎は初めから常にありますが,それが謎として解決されるのか,超自然現象としてそのまま放っておかれるのか,読者には分かりません。そこら辺が不満なところでしょうか。殺人が起こってから外部への通信手段が壊され,島の中に犯人が居るという情況の恐怖も描かれ,サスペンスもあります。面白く読みやすい作品でした。

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