加藤実秋の「インディゴの夜 ブラックスローン」
以前紹介した事がある加藤実秋の「インディゴの夜」シリーズ。
大手出版社の男性編集者と女性フリーライターが「クラブみたいなハコで,DJやダンサーみたいな男の子が接客してくれるホストクラブがあればいいのに」というアイデアから始めた裏稼業,Club Indigo。渋谷で開業したホストクラブです。
ここのホストが関係した数々の事件を,ホスト達や二人のオーナーが解決していきます。これまでの4作は全て短編集ですが,この第5作「ブラックスローン」は初めての長編。しかしそれは短編と同じ乗りで展開していきます。
Club Indigoの常連客の女性が殺されました。その女性が持っていたメモには,Club Indigoのホスト達の名前と¥のついた数字。ホスト達が殺された女性と金銭的につながりがあったと疑われます。そこで,身に覚えのないホスト達と二人のオーナーの活動が始まります。
このメモの謎は,すぐに明らかになります。長編ならばもう少し種明かしを引っ張ってもいい様に思いますが,作者はメモの謎はほんの事件のきっかけにすぎないという考えなのでしょう。実はこの女性は,ネット上のバーチャルシティ系のゲームで,現実のClub Indigoをお手本としたバーチャルのホストクラブ,その名もClub Indigoというホストクラブを開いていたのです。このメモはそのバーチャルシティーで通用するお金で,各ホストの売上げが記載してあったのです。
作品は最後まで短編と同じ乗りで進み,解決します。長編という事で,ちょっと構えていたのですが,全く短編と同じ感じでした。最後は大立ち回りの末殺人犯を追いつめます。サラダ油を撒きライターで火をつけると脅す犯人。オーナー二人は手出しできませんが,若いホストはスマホ検索でサラダ油は火がつきにくい事を突き止め,ビビることなく犯人を捕らえます。バーチャルの世界が絡む事件で,ホストや渋谷署の早乙女刑事など,若手が活躍するミステリーでした。
このシリーズ,第6作「ロケットスカイ」が最新作です。2015年5月に出版されました。第6作では,再び短編集に戻っています。
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