有栖川有栖の「朱色の研究」
この作品は,以前から持っていて,しばしば本棚で見かけるものの,まだ読んでいませんでした。何故といわれても特段の理由もないのですが,あえて言えば,表紙が地味だったという事でしょう(現在の最新刊は,私が持っているものと表紙の絵が変わっています)。
その作品が前後編のテレビドラマになり,時間の関係で前編だけ見て後編を見ることができなかった。それじゃあ読むしかないでしょ・・・という事で読んだ本です。
時期が異なる,3つの事件が起こります。一つは現在,アパートの一室での殺人事件。もう一つは2年前,和歌山周参見での撲殺事件。もう一つはそれに先立つ放火とその火事による焼死事件。
まずは教え子の女性,貴島朱美から火村先生が和歌山県周参見での事件解決を依頼されるところから始まります。
そうこうしているうちに,火村に対してある高級マンションの一室へ行けという誰からとも判らない謎の電話がかかってきて,火村とアリスがそのマンションへ急行すると,朱美の叔父の死体を発見します。その部屋に残っていた香水の匂いが,このマンションへ急行するとき火村達とすれ違った男の香水の匂いと同じである事から,その男,六人部四朗に殺人の疑いがかかります。
貴島朱美,六人部,マンションで殺されていた朱美の叔父,内山は知り合いで,周参見の事件の関係者でした。
周参見の事件は,ピアノ教師の女性,大野夕雨子が別送近くの黄昏岬の野外で読書中に撲殺され,さらにその後被害者の背後のがけの上から石をぶつけられるという事件です。
マンションの事件で,疑われた六人部の容疑を火村が晴らすのが前半(この段階では真犯人はわからない),後半は周参見に舞台が移って,全ての殺人事件の謎を解くのが後半です。
前半に感じたモヤモヤ,「なんて犯人は面倒なことをするのか」が,全ての謎が解かれてみれば納得できて,さすがは有栖川先生だと思いました。
これぞ本格推理小説という感じの作品でした。
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