川崎中一殺人事件,三人目の加害者の判決が出ました
昨年2月に起こった川崎の中一殺害事件。犯人グループ3人のうちの最後の一人に,横浜地裁の判決が出ました。
裁判では,無罪を主張する被告と,被告がカッターで被害者の中一少年を傷つけるのを見たという主犯少年の間で,証言が食い違っていましたが,主犯少年の意見を採用したという形です。
被告の証言は,カッターは自分の持ち物だが,主犯少年が自分のバッグごと現場に持ち込み,主犯少年がバッグから取り出して犯行に及んだもので,自分は手出ししていないし見ていただけと主張していました。
しかし主犯少年は,カッターは被告がバッグから取り出して「こんなものがある」と言って自分に渡したもので,主犯少年が被害者の首筋を傷つけたあと,被告少年に渡して被告少年も傷つけたと証言していました。もう一人の少年は,被告が傷つけたとされるときにはコンビニに買い物に行かされていて,被告が傷つけるところを見ていないと証言していました。
しかし,被告少年が被害者少年の頭ををコンクリートの壁にたたきつけたり,犯行後被害者を足で蹴り飛ばして川へ落としたりしたところを目撃しており,それは主犯少年の証言と一致していました。
被告以外の二人の共通したこの証言から,客観的に考えて,被告少年は被害者に同情をよせておらず,主犯少年と同様に,かなり残酷な事をしていてもおかしくない事が見て取れます。
被告は自分の都合の悪いことは忘れたと言っていたこともあったようで,主犯少年の目撃証言を正とした裁判員の判断だったのでしょう。
懲役6年以上10年以下の不定期刑は,被害者中一少年ともっとも親しかった二人目の犯人少年の4年以上6年半以下の刑期より重いものでした。実際,主犯少年の証言のように,わざわざカッターをバッグから取り出して主犯に渡しているなら,主犯に対してカッターによるリンチを教唆したともとれる行為で,その後の行為(被害者の頭をコンクリにたたきつけたり,瀕死の被害者を蹴りながら川へ落としたり)も非情なもので,三人の中では一番酷薄といえると思えます。
今回の刑期は検察側の求刑通りで,他の二人の犯人少年の刑期が検察の求刑より緩和されていたのと対照的です。裁判員にとっても,三人の中では最も同情に値せず,また反省もしていないと考えられたのではないかと思います。判決では,「不合理な弁解を繰り返し,自らの行為に向き合うこともできていない」という裁判長の言葉がありました。
たぶんこの被告は,他の二人と違って控訴するように思います。そんな往生際の悪さを持っているように感じます。
概してこの犯人グループは,犯人同士でさえ,まして他人との関わりにおいて,同情とか他人のことを考えるとか,他人への意識という物が希薄である様に見受けられます。特に今回の犯人は,被害者少年が瀕死であっても傍観するだけ,カッターを渡せば面白いことになるだろうという意識だけ。
これまでの生活の中で,他人からじめられてきて,学校のヒエラルキー的にも最下層にいて,その環境の中で意識的に他人との関わり,他人との同情を絶ってきた生活が,ここに現れている様な気がします。他人のことより自分の防御に気が向いてしまう。特に主犯少年が被害者少年を執拗に傷つけた怒りは,本人も語っている様に,自分と違って被害者少年が学校で人気があった事によります。
そういう意味では,起こるべくして起こってしまったということかもしれませんが,あまりにも残酷な事件でした。
(写真は事件現場となった多摩川の河原。事件があった2月と違い,草が茂っている。)
<追 伸>
「たぶんこの被告は,他の二人と違って控訴するように思います。そんな往生際の悪さを持っているように感じます。」と上に書いたのですが,6月15日,やはり被告は控訴しました。
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