殊能将之の,名探偵 石動戯作シリーズの第二作目,「黒い仏」
殊能将之の,名探偵 石動戯作シリーズの第二作目,「黒い仏」を読みました。第二作目ですが,私にとってはじめて読む殊能作品です。
この作品を読んだ後で殊能通の知人に聞いたところ,かなり変化球な作品で,最初に読むには適当ではないようです。
まあ殊能作品は,ラストの驚愕に命を掛けているところがあり,ストレートな本格推理小説とは言いがたいというイメージがありましたが,この作品はさらに特別のようです。
ベンチャー企業の社長から石動が依頼されたのは,福岡郊外の安蘭寺という寺に伝説として伝わる秘宝の探索。石動と助手のアントニオ(といっても中国人)は早速現地へ行って,住職らの協力の下,書庫などの古文献の調査を始めます。
一方,福岡の安アパートで起きた殺人事件。一人暮らしだった被害者の身元もわからない状況ですが,容疑者の一人であるベンチャー企業の社長は,犯行時刻には正に石動に会って宝探しを依頼していた・・・。石動は社長のアリバイ作りに使われたのではないか?
このように書くと,いたってまともな推理小説の様なのですが,ラストは正に百鬼夜行,知人によるとバカミスの一種とも言われているそうです。好意的に見ると,名探偵の名推理が犯人に利するというアイデアの作品で,推理小説の常道を覆す事を目的とした作品といえるかもしれません。その意味では,石動は主人公の名探偵というより,狂言回し的,作者の駒の一つという感じの役割をしています。
Wikipediaの「黒い仏」の項では,この作品はSFミステリというジャンルに設定されています。しかし,SFというにはもう一つ感じが違っていて,妖怪ミステリーというものでしょうか? 初めて読む殊能作品としては,Wikipediaでしっかり「推理小説」に分類されている,石動ものの前作,「美濃牛」の方がよかったのかなと思います。
ところで,石動(いするぎ)とか社長の名前,大生部(おおうべ)など,初めに振られているルビで読み方が判っても,次に出てくると「なんて読むんだっけ?」と判らなくなる名前が多く,苦労しました。しかし石動は,「いするぎ」とパソコンに入力して,ちゃんと「石動」と変換してくれるんですよね。そう珍しい名前ではないのかな?
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