川瀬七緒「女學生奇譚」
オカルト・奇譚系の小さな出版社。そこから仕事をもらっているフリーライターの八坂。30代のその男がこの作品の主人公です。
竹里あやめというアメリカ在住の日系二世の女性からこの出版社に持ち込まれた古本,それには「この本を読んではいけない・・・」というメモがはさんであり,この本を読んだと思われるあやめの兄が失踪していました。あやめは兄の部屋でこの本を見つけたといいます。
八坂とカメラウーマンの篠宮,それにあやめの三人がこの古本の謎を追う。
読みやすい文章,古本の謎をはじめ,あやめ自身も謎めいており,つい一気読みしてしまうサスペンスミステリーです。
メモの警告にもかかわらず,八坂は古本を読んでいきますが,読者も古本の内容の一部を読むことになります。それはある屋敷に捉えられてい女学生の日記です。数人の女学生がその屋敷に捕らえられているらしい。後にその目的が八坂によって推理されますが,実におぞましい目的でした。
登場人物は八坂自身もどこか正常ならざるところが垣間見え,それでも男勝りの篠宮との掛けあいはユーモアも感じさせてくれます。登場人物のほとんどが癖のある病的な人々であるにしては,なかなかユーモアもありそれ程暗い話でもなく,不思議な魅力がある作品です。
読み終わってネットを見ると,「続編がありそうな終わり方」と言っている方が多いのですが,さてどうでしょう。確かに登場人物達の行く末が気になりますが,謎はこの作品で十分解けており,この先を描いてもミステリーというよりアクション物,普通のサスペンス物にしかならないような気がします。
ミステリーとしての内容は,この作品で完結していると思います。
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