10年越しの小野不由美「東亰異聞」をやっと読みました
もう大分前,文庫本になる前に買って置いた単行本の「東亰異聞」。小野不由美作のこの作品を何故長い間ツンドク状態にしておいたかというと,そのうち読もうと思っていて,つい忘れてしまったという事です。推理小説だと思って買って,やがて推理小説ではないという評判が耳に入り,だから「そのうちに・・・」と思っているうちに忘れてしまったのです。
それをなぜ急に思い出したかというと,綾辻行人の「奇面間の殺人(上下)」を買って,綾辻氏つながりで「あれ,そういえば未だ読んでない」と気づいたのです。小野不由美氏は綾辻氏の夫人です。
さて,もう何年も前(かれこれ10年前?)に買った単行本が本棚のどこにあるかも不明状態で,この際Kindle版を買おうかと思って検索したら,Kindle化されていない事が分かりました。そうするとますます読みたくなって,散々探した挙句,やっと見つけました(単行本でよかった。文庫本ならまず見つからない・・・・・)。
もう一度さて,この作品はまずは推理小説でした。
舞台は明治時代の東京,いや東亰。実在の東京のパラレルワールドかと思われる東亰です。
その夜の闇の中で,火に包まれて現れ人を殺す火炎魔人,長い爪で人を引き裂く闇御前の跳梁跋扈。その正体を探る新聞記者平河新太郎と便利屋の万造。闇御前や火炎魔人に好意を寄せる人形遣い,さらに事件は貴族である鷹司家のお家騒動が外部に噴出してきたものだと分かる・・・・・。
この道具立てで,果たして推理小説的に解決されるのかと思いきや,解決されてしまうのですね。闇御前と火炎魔人の正体が明らかにされ,その彼らの目的も明らかになります。新聞記者平河の推理は外れ,どちらかというと相棒の万造の方が探偵役です。
そこで終わればこの作品,れっきとした推理小説となるのですが,その後があります。
欧米推理小説黄金期の巨匠,ジョン・ディクソン・カーに「火刑法廷」という作品があります。この作品は,魔女をテーマにしていて,ひとまず合理的な解決が示されますが,その後がある作品です。今回の「東亰異聞」も同様の趣向の作品といえるでしょう。推理小説からあやかしの世界に最後には戻ってエンドとなります。
読みやすく面白い作品でした。
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