山田風太郎の「妖異金瓶梅」
中国明代に成立した伝奇歴史小説「水滸伝」。その一部をスピンオフした作品が「金瓶梅」。それをさらにスピンオフして山田風太郎が書いた推理小説がこの「妖異金瓶梅」です。
金瓶梅の設定そのままに,手広く商売している豪商,西門慶。彼は本妻の他何人もの妾女や美少年を屋敷に住まわせている好色家です。この屋敷で妾女や寵童をめぐる様々な事件が発生し,それを西門慶の友人にして幇間のような事をしている応伯爵が解決します。
この短編集には14編と特別編である1編(本編中の1編の原型)が収められていますが,犯人は全て同じ,犯人の動機は全て西門慶への愛。最後に西門慶自身も死亡してしまいますが,その動機も西門慶への愛です。
さらに,応伯爵が謎解きを語るのがどの作品でも犯人に対して語るのです。
かなり特殊設定の短編集である事がわかるでしょう。 読者には犯人は判っているので,どちらかというと,どういう方法で殺人等を犯すのかという,ちょっと倒叙物に似た興味で読ませるもので,犯罪とトリック解明と犯人の指摘という通常の推理小説とは違います。
最後の3編はこの作品集全体のエンディング,この短編集全体を一つの長編化するための作品で,それだけの風格のある作品といってもいいかと思います。
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