小島正樹「扼殺のロンド」
以前小島正樹作品としては,「十三回忌」を紹介しましたが,今回紹介するのは同じ海老原浩一を探偵役とするシリーズの「扼殺のロンド」です。
休止している整備工場に突っ込んで柱に激突した車から若い男女の死体が発見される。直前にこの車と中の二人は目撃されており,工場に衝突する直前まで生きていたのは確からしい。しかし男性は山の上でもない工場で重い高山病で死亡している事がわかり,女性は胃腸を取り出されていた。工場は外から施錠されており,車は衝突の影響でドアが開かなかった。犯人はどうやって殺人を犯し,この二重密室から脱出したのか?
次に車の女性の母親が顔と両手首に包帯を巻いた状態で密室の中で殺害されているのが発見され,そして父親が閉ざされたアトリエの廊下で,死体が突然出現するという不思議な状況で発見される。姉川家を襲う3重殺人事件。
「十三回忌」にも登場した静岡県警の小沢,笠木の両刑事と笠木刑事の高校時代の友人,海老原浩一がこの事件を解きます。小沢刑事も海老原に大分慣れてきたようで,海老原に何かと突っかかりながら結構頼りにしている。最後には真犯人に殺されそうになるところに,事件を全て見通して「小沢さんが危ない」と叫んで海老原が駆けつけて助けられます。
小島作品としては,以前「十三回忌」を読み,今回「扼殺のロンド」を読んで,小島作品の特徴というのが分かりました。トリックが機械的な事,それと非常に細かい手順である事です。その手順を文章だけで理解するのはなかなか大変で,実際の所,私の理解が作者の意図通りであるかどうかもわかりません。同じ機械的トリックでも,島田荘司師匠くらい大胆なら分かり易いのですがね・・・。
さてこの作品,プロローグで,犯人とおぼしき女性の詫びの言葉から始まります。詫びる相手の名前が書いてありますが,詫びを言う側は女性である事以外明らかにされていません。推理小説の強者ならこのプロローグを読んだだけで,犯人が指摘できるでしょう。私もフト頭をよぎりました,「ひょっとしてこの人が犯人?」。
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