二階堂黎人「ラン迷宮」
二階堂黎人の短編集,「ラン迷宮」は,「泥具根博士の悪夢」「蘭の家の殺人」「青い魔物」の3作品が収められています。分量的には,「泥具根博士の悪夢」「蘭の家の殺人」は中篇。「青い魔物」は短編といえるでしょう。全てシリーズキャラクター,二階堂蘭子が謎を解きます。
「泥具根博士の悪夢」は,雪の上に被害者の足跡だけが印された建物,その中の鍵のかかった4つの扉で遮断された中の部屋で殺害されていた被害者。犯人はどうやって脱出したのかという謎。レトロといえばレトロですが,トリックもシチュエーションの割には不自然ではなく,なかなか面白い作品でした。
「蘭の家の殺人」は衆人環視の中の毒殺事件です。青酸カリ入りのコーヒーでの殺害。用意した人とカップを配った人が異なり,用意した人が犯人だとすれば毒入りコーヒーが誰に渡されるか分からなかったはずだし,配った人が犯人ならばどのカップに毒が入っていたか分からなかったはずというシチュエーション。12年前の毒殺事件の真相を,二階堂蘭子が明らかにします。
最後の「青い魔物」。主人公は高校生と中学生の兄妹。両親をなくした二人が引き取られた遠縁のマッドサイエンティストの洋館。博士は永遠の命を研究している。さらに呪術に精通しているアフリカから来た二人の同居人。洋館の内外を跋扈する青い皮膚の怪人。
ひと昔前のジュブナイル推理物の雰囲気の中,蘭子が謎を解いて兄妹を救い出します。
この作品集はかなり人を選ぶでしょうが,私は楽しめました。
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