トランプ氏が大統領に
11月8日に投票,9日に開票されたアメリカの大統領選は,まさかのトランプ候補が選ばれました。
世論調査では拮抗していたクリントン対とランプの大統領選は,何のかんの言っても常識的なクリントンが結果的には選ばれるだろうと思われていました。世界の株価も,投票日直前ではそのように推移していたわけです。アメリカの新聞社も,57社がクリントン支持,2社がトランプ支持という事でした。
トランプ支持層というのは,ヒルビリーとも呼ばれる低学歴白人貧困層,白人労働者階級だと言われます。新聞社は低学歴白人貧困層ではないので,前述のほとんどの新聞社がトランプを支持していないというのは理解できます。この層は,多分に没落した中間層を含んでいるように思います。
さて,ふたを開けてみたら,僅差ではあるがトランプが選出されました。
アメリカの富は一部のものの独占かもしれないが,民主主義では選挙に行きさえすれば,数で勝る低学歴白人貧困層を主体とする現状に不満を持っている層が勝利する。トランプ氏は非常にうまく,彼らが使う上品とは言えない言葉を使って,うまくこれらの層を拾い上げ,この選挙戦に勝利しました。
結局民主主義の世界では,富を持っていても数でまさる貧困層には勝てなかったという事です。行き着くところまでいってしまった格差社会アメリカは,結局大多数の不満を持っている人達のしっぺ返しを食らったという格好です。この点では,富は持っていないが数の多い人々の意見が通るアメリカという国が,ある意味うらやましい気もします。投票に行きさえすれば,マイナーと思われる意見が通る世の中だというわけです。マイナーと思われる意見が実はマイナーでなく,同じ意見を持つ人がたくさんいたという事です。格差の拡大を放置した,またはむしろ賛美したツケを払わされたという事もいえるでしょう。
しかし選ばれたみると,貧困層ではないトランプ氏が,彼らの期待に応えられるのか疑問です。トランプを選んだ層がガッカリしたら,アメリカ社会はどうなるのか? ちょっと恐ろしく思います。
そして議会は? 上下院ともトランプの共和党が過半数を得ていますが,議員は必ずしもトランプ支持の人達とは限りません。何しろ彼らは低学歴白人貧困層ではないし,没落した中間層でもないのですから。
70歳という過去最高齢の大統領,政治経験の全く無い大統領。アメリカの政治がどうなるのか,今のところ読めません。何か変わっていくのでしょう。変わらなければ,トランプに投票した層の怒りをさらに増長させるでしょう。やはり恐ろしい。
少なくとも,寛容で自由で理想に満ちた誇り高いアメリカは終わりの様に思われます。その意味では,古き良きアメリカを求めてトランプに投票した人の期待は,裏切られるのかもしれません。
さてその後,今回の選挙のデータがわかってきてみると,トランプ氏支持者が多いというわけでもないようです。得票数ではクリントン氏はトランプ氏より20万票おおく,0.2ポイント得票率がたかいようです。まあほぼ拮抗という事で,トランプ勝利は州ごとに一票でも多い候補が選挙人を総取りするというアメリカ大統領選の仕組みが,トランプ大統領を作ったといえそうです。各州の選挙人を,得票数なり得票率なりで分ける精度ならば,トランプ氏が勝利したかどうかは分かりません。
(写真は,フリー写真素材サイト「足成」より。)
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