辻真先のキリコ・ポテトシリーズ,最初の3作
以前,瓜生慎シリーズのいくつかを紹介した事がある辻真先作品。今回は代表的なキャラクターである可能キリコ(スーパー),牧薩次(ポテト)のコンビ作品のうち,初期の3作読みました。
私が高校生の頃だったと想いますが,今はなき朝日ソノラマから発売された文庫本でこれらの作品は読んでいます。ありがたい事に,創元推理文庫で復刊され,Kindleにもなっていて,絶版の多い辻真先作品としては,例外的に入手しやすい作品でしょう。
「仮題・中学殺人事件」「盗作・高校殺人事件」「改訂・受験殺人事件」の3作は,キリコ・ポテトの中学・高校生時代の事件です。犯人が読者だったり,編集者だったりしますので,ご注意を。また作品を誰が書いているかという仕掛けもあります。まあ私としては,そんな仕掛けはご愛嬌で,純粋にキャラクターを楽しみたい立場としてはあまり評価できません。
さてそんな仕掛けを度外視すれば,シリーズ第一作「仮題・中学殺人事件」は,2つの短編推理小説と1つの作中作が入っている短編集という事になります。一つは時刻表トリックというより列車トリック,もう一つは中学校のトイレで起こった密室殺人,さらに作中作として事故を起こしたパイロットの密室からの墜落事件。特に列車トリックは,私の知らなかった当時のある事実が使われており,知っていたら自明だろうといわれればその通りですが,私は知らなかったので印象に残りました。
「盗作・高校殺人事件」ではキリコ・ポテトが高校二年生の時の事件です。ポテトが事故にあって入院し,退院してから同じ病室だった高校生の実家である田舎の温泉に行き,事件に遭遇する話です。事件は密室殺人事件。幽霊騒ぎもあります。そして東京のホテルで起こったもう一つの密室殺人事件。最後は二人にとっては苦い経験になります。
「改訂・受験殺人事件」は二人が高校三年の時の事件。受験生である彼らの仲間が殺されていきます。最初の事件は,教室の窓から落ちたはずのクラスメイトが何時間もたって地上に墜落死体となって現れた事件。ホックの「長い墜落」ばりの事件です。3つの受験生死亡事件に不可能興味をからめた長編作品です。
キリコ・ポテトの高校生時代の作品はこの3作で終わり。キリコが浪人生,ポテトが大学生になってからの3作「SFドラマ殺人事件」「SLブーム殺人事件」「TVアニメ殺人事件」が後に続きます。そしてその後,「宇宙戦艦富嶽殺人事件」からは二人が社会人になってからの事件で,第一作「仮題・中学殺人事件」から最後の「戯作・誕生殺人事件」まで,キリコ・ポテトシリーズは全19作あります。絶版で手に入りにくい作品もありますが,Kindle版になってくれる事をのぞみます。
| 固定リンク
« 落ち葉 | トップページ | トランプ氏が大統領に »
コメント