芦辺拓「少女探偵は帝都を駆ける」
芦辺拓の「少女探偵は帝都を駆ける」を読みました。表題作の中編1作と短編6作を収めた短編集です。
舞台は昭和11年,表題作の中編は,主人公の女学校生,平田鶴子が修学旅行の最中,並走した列車で起こったもめ事を目撃したところから話が始まります。鶴子の列車に逃げ込んできた列車ボーイ姿の少年,それを追うルパシカ姿の男達3人。修学旅行の行く先々で起こる事件。
まあ題名から想像はできますが,本格推理小説ではなく,鶴子と青年新聞記者の冒険譚。謎は誰と誰がロマンの主人公なのかという事で,それはなかなかよくできていたと思います。
その他の6編の短編は,一世を風靡するエノケンの誘拐事件,ところがさらわれた自動車からこつ然と犯人が消えたという謎,テレビの創成期,生放送しか無い時代に放送が終わったとたんに人気落語家がスタジオからこつ然と消えた不思議,などなど,不思議で魅力的な謎の事件が描かれます。
ミステリーファンにはこの6編の方が面白いかもしれません。いずれにしろ,本格推理小説として読むより,昭和10年頃の風俗をミステリータッチで描いた作品として読んだ方が楽しめるでしょう。
| 固定リンク
コメント