岡田秀文の「伊藤博文邸の怪事件」
岡田秀文の「伊藤博文邸の怪事件」を読みました。
明治の元勲,伊藤博文邸で起こった殺人事件。新たに伊藤家の書生となった二人のうち一人が語り手,もう一人が探索します。
最後まで読めば,サプライズエンディングがあり,見事な推理小説であったと思います。
しかし,どうも途中の謎的な興味が薄い。完全な密室ではないが,監視者等を考えると密室状況といえる殺人事件を扱っているものの,これが密室事件で一番やってはいけない方法で解決されています。まあ密室がメインではないものの,肩透かしといえるでしょう。
クリスティーはありふれた屋敷の殺人事件を扱っても,途中の謎的サスペンスは半端なく,どの作品も謎好きな私好みの推理小説になっていますが,それとは逆の行き方ですね。
最後のサプライズエンディングはこれまでも前例があるもので(例えば近年では森博嗣氏の長編),「ああ,あの趣向だったの」という感じで,サプライズエンディングとして感心するところまではいかない。
立派な推理小説ではありますが,私のような謎好きには今一歩といえましょう。
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