有栖川有栖の「双頭の悪魔」
有栖川有栖の「双頭の悪魔」。学生アリスシリーズの長編第三作です。
四国の山中の芸術家村とその対岸の村。鉄砲水で二つの村をつなぐ橋が落ちて芸術家村が孤立します。英都大学推理小説研究会のメンバーも,芸術家村に江神部長とマリア,対岸の村にアリスと望月,織田の両先輩がいて,互いに行き来ができない状態になります。その二つの村で起こる殺人事件,さらに芸術家村では第二の殺人が・・・。
推理小説研究会の面々が二手に分かれてしまうのは「なんだかな〜」と思っていたのですが,読み終わってみると,必然性があったのですね。芸術家村事件での江神部長の名探偵ぶり,マリアのワトソンぶりに対して,対岸の村での事件に対するその他三人のワイワイやりながらの推理も楽しいです。
三つの殺人事件に対して三つの「読者への挑戦状」が挿入されています。
互いに連絡できなくなった二つの村の事件ですが,事件の全体の動機の構造は一言で言い表せるものです。その一言が江神部長から発せられたとき,やはり「そうだったのか・・・」と思いました。
山中,村,孤立,洞窟,読者への挑戦状・・・,本格推理小説のアイテムがちりばめられた作品です。
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