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2017/09/28

エドワード D ホックの「大鴉殺人事件」

Oogarasu 短編作家という印象のあるホックの長編「大鴉殺人事件」を読みました。以前読んだ事があるはずですが,私は全く覚えていませんでした。
 はじめ著名なニュース解説者,ロス・クレグソーンからビクター・ジョーンズという人物に宛てた手紙が紹介されます。20数年前,彼ら二人ともう一人の女性がある犯罪を犯し,最近になって女性から名を成したクレグソーンに脅迫があった事を知らせる手紙です。クレグソーンは思いあまって近々開かれるアメリカ探偵作家クラブ(MWA)の受賞パーティーでその事を公表し,脅迫から逃れる決心をしたという内容でした。しかしやはり名を成しているらしいビクターはそれをよしとせず,クレグソーンを殺そうと思い立ちます。
 そして授賞式の日にクレグソーンが遠隔式の銃というべき凶器によって殺害され,さらに脅迫していた女性もやがて首を絞められて殺されているのが発見されました。
 MWAは,現在は推理作家,以前は探偵だった副会長のバーニー・ハメットに事件の解決を正式に依頼,バーニーはたまたま取材に訪れていたマンハッタン誌の女性記者スーザン・ベルトと共に事件解決に飛び回ります。
 この作品の謎の構造はシンプルです。犯人であるビクター・ジョーンズは,数多い登場人物の中のだれなのか? 本名はビクター・ジョーンズ,成功した今は別の名を名乗っているわけですが,それが一体だれなのかというのがこの作品の唯一の謎です。まあ途中,過去の三人の犯罪がどのようなものだったのかという興味もあるにはありますが,最大の興味は,だれがビクター・ジョーンズなのかという事なのです。
 その謎は最後にバーニーの推理により明らかにされますが,長編を支える謎としてはちょっと弱い感は否めません。また,たくさんの登場人物が印象深く描写されているわけでもなく,途中何回もこの名前の人はだれだっけと前を参照する(電子書籍では,名前により全文検索をかけて前のその名前の登場場面を読むという作業をおこなう)事が多かったのです。だれがビクター・ジョーンズだったかという事については,登場人物の中でも登場場面は少ないが最も印象に残っていた人物が彼であったと分かり,「まあそうですよね」と感じました。もうひとひねりする作家なら,男性と思ったら実は女性だったとかいう事になるのでしょうが,そんなひねりもありませんでした。
 色々文句を言いましたが,それほどつまらない作品というわけではありませんよ。

(この作品,上の写真で分かる様に,懐かしい早川ポケットミステリーのKindle版です。ちょっと珍しい。)

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