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2018/01/17

北森鴻「なぜ絵版師に頼まなかったのか」

Ebanshi

 若くして亡くなった北森鴻の未読作品「なぜ絵版師に頼まなかったのか」を読みました。明治維新,大政奉還の年に生まれた葛城冬馬を主人公に,明治時代を舞台にした推理小説短編集です。
 5作品が収められていますが,最初の作品「なぜ絵版師に頼まなかったのか」では,両親を失くした侍の子である13歳の少年冬馬が,叔父の世話で東京大學医学部教授,エルウィン・フォン・ベルツの住み込みの給仕となり,新聞記者市川歌之丞と知合い,ベルツや仲間のドイツ人学者と共に横浜で起こった外人同士の殺人事件を解いていきます。
 その後,作品が進むごとに冬馬が成長していき,東大医学部の医学生となります。元はといえば侍だった新聞記者,市川歌之丞は,作品ごとに職業を変え,新聞小説作者の小山田奇妙斎,臨済宗住職の鵬凜,仮名垣魯文の門下生の仮名垣魯人と名乗るのが面白い。そもそもの本名は喜三郎というらしいのですが。
 作品は冬馬の主観で描かれますが,推理担当は主としてベルツ,冬馬やベルツに情報をもたらす足の捜査担当は歌之丞という役回りです。
 明治時代の時代背景も描かれ,また明治時代ならではの世相から起こった事件が語られます。途中の謎的興味も盛り上がり,北森鴻らしい推理小説として興味津々となるのですが,それに比べて最後の解決がどれもちょっとあっけなく,あっと驚き唸るところまで行かないのが残念です。
 各短編の題名は,「なぜ絵版師に頼まなかったのか」を初めとして,「九枚目は多すぎる」,「人形はなぜ生かされる」,「紅葉夢」,「執事たちの沈黙」という具合に,推理小説ファンならどこかで聞いた事のある題名が並んでいます。
 この本,アマゾン書店で検索すると,Kindle版は594円で販売されているのですが,紙の本は既に絶版になっているようで新刊本としては販売されておらず,古本が1円〜3660円というとんでもない値段で販売されています。まあ,絶版本も読めるという事で,Kindle様々といったところです。紙の本は絶版でも,Kindle版は現在でも生きているというわけですね。

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