森博嗣の「探偵伯爵と僕」
「すべてがFになる」の森博嗣のジュブナイル作品,「探偵伯爵と僕」を読みました。「かつて子どもだったあなたと少年少女のための――」と銘打ったミステリーシリーズ,講談社ミステリーランドの一作です。
小学生の「僕」,馬場新太が,ある時探偵伯爵(これはニックネームで日本人の男性)と名乗る探偵に出会い,その秘書であるチャフラフスカ(これもニックネームで,日本人の女性)と共に同級生の誘拐事件を探っていきます。
推理小説というより少年冒険小説という感じの作品で,その意味で面白い作品でした。
最後には私たちが読んだこの作品は,「僕」が書いた実話小説である事が分かります。話の内容や登場人物の名前は,実際とは変えてある様です。
事件が解決し,「僕」である馬場新太を守ってくれた探偵伯爵とチャフラフスカを新太の両親が食事に招待する段階に至っても,犯人の犯行動機が今ひとつあやふやでした。
「僕」の書いた実話小説をおかあさんが知り,「これはお父さんにも読ませよう。それから,伯爵のところへも送ってあげる」ということになって,伯爵が読んだ後,伯爵から感想の手紙が届きます。
そこで明かされる「僕」の本名,伊藤薫。そして最後の最後,伯爵の手紙の中の「君も含めて,殺された子ども達の××が全部代わっている」という言葉。それで「少年少女」はともかく,「かつて子どもだったあなた」は,事件がそんな類いの動機によるものだった事を知ります。ジュブナイルで「この犯罪動機」というのがちょっと衝撃でした。最後の最後に××部分のほんの二文字で衝撃が来る作品でした。
さて森博嗣先生,次はVシリーズの「へっくん」を主人公にした推理小説をお願いします。おとなになってあの推理力なのですから,子ども時代もさぞや・・・。
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