綾辻行人「奇面館の殺人」
中村青司の設計した館の一つ,奇面館。そこの主人に招待された6人の人物。その中に館シリーズでおなじみの島田潔(推理作家としての筆名は鹿谷門実)がいました。実際は知人の作家,日向京助が招待されたのだが,彼が入院するので代わりに行ってほしいと頼まれたのです。鹿谷は仲村青司が設計した館という事に興味を持ち,代わりを引き受けます。館の中では,主人と招待客は,頭をすっぽり覆われる仮面を付ける事を強制されました。鍵がかかる仮面です。
折から雪の為に館の主人と3人の使用人,そして6人の招待客がその館に閉じ込められてしまいます。
そして主人が殺害されて発見されます。主人は首無し死体となり,首が持ち去られていました。また両手の指が全て切り取られて持ち去られています。招待客は睡眠薬で眠らされた状態で,夜中に仮面をかぶせられ鍵をかけられて,その鍵も盗まれていたため,仮面を外す事の出来ない状態にさせられています。
上下巻に別れたこの作品の上巻は,「いったいあの死体は,本当に奇面館主人のものなのか?」という疑問で終わります。外す事の出来ない鍵をかけられた仮面に隠れて,この館の主人が招待客の誰かと入れ替わっているのではないかという疑問が生じるわけです。それは主人の死体が発見されて以来,読者が皆感じてきた疑問で,それがやっと上巻の最後で鹿谷から指摘されるのです。
そして下巻に入って,鹿谷の怒濤の調査,推理がはじまります。上巻で比較的ゆったり進んだ物語が,下巻に入ってジェットコースターのような解決編に突入するのです。
何故睡眠薬で眠らされた状態で招待客が仮面をかぶせられたのか,死体は本当に館の主人なのか? やがて発見される主人の頭部。屋外のテラスにあまりにもぞんざいに捨てられていました・・・。
この作品は綾辻行人の館シリーズ第9作ですが,久しぶりに読んだ館物で,本格推理小説としてとても満足しました。深夜に招待客全員が仮面をかぶせられた理由,主人の死体から首を切り落とした理由,指を切り落とした理由は,予想外の物でしたが,納得できるものでした。
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