麻耶雄嵩の「あぶない叔父さん」
麻耶雄嵩の「危ない叔父さん」を読みました。「失くした御守」「転校生と放火魔」「最後の海」「旧友」「あかずの扉」「藁をも掴む」作品を収める短編集です。麻耶雄嵩といえば,「このミステリーがすごい!」とか「本格ミステリ・ベスト10」とか,年間ベストテンの常連で,様々な作品が上げられていますが,この「あぶない叔父さん」は,どのベストリストにも載っていない作品です。
それでも面白い。一見フーダニット作品の様に見えますが,初めの1〜2作を読めばそうではなく,ハウダニット作品である事が分かります。それでも面白い。例えば,女子高生が学校で飛び降り自殺した。でも屋上の雪面に残された足跡は一つだけだった・・・など。謎の状況が提示され,それが解決される。誰がやったのかは分かっているけれど・・・という事。
しかしそうかと思えば,最初の2作を読んで,この短編集の趣向が分かった上で,3作目にそれを外した作品を投入するというミスディレクションであっといわせる。ある意味,一筋縄ではいかない麻耶雄嵩らしい作品集となっています。
語り手は高校生の斯蛾優斗,それに親友というか悪友の武嶋陽介と優斗の彼女,美雲真紀。後に三角関係になる転校生,辰月明美がからむ。そして優斗の叔父さんも。霧に包まれた地方都市,霧が町を舞台に,不思議な事件が起る。
最後の作品が優斗高校2年終了時となっているので,卒業までまだ1年あるし,登場人物は皆さん無事に過ごしているし,まだまだ続編が出来そうです。そこでは,優斗が真紀と明美のどちらを選ぶかも,描かれる事を期待して・・・。
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