« 乱立するキャッシュレス | トップページ | 韓国LGの巻き取りテレビ »

2019/01/10

三津田信三「首無の如き祟るもの」

Kubinasi 刀城言耶シリーズ第三作,「首無の如き祟るもの」の舞台は首なしの伝説が生きている姫首村。姫首山の北,東,南に広がる村が舞台です。ここで支配的な地位を得ているのが秘守家という一族。先代の長男が当主である一守家,長女が当主である二守家,次女が当主である三守家の三家が,次の秘守家当主の座をめぐって抗争している状態です。
 初めの事件は,秘守家の子供が13歳のときに行われる十三夜参りという儀式のときに起こります。時は第二次世界大戦の最中の昭和18年。一守家の長男,長寿郎と双子の長女,妃女子が,一人づつ順番に媛首山にある媛神堂に参る行事で,井戸で水を浴び禊をして,婚舎と呼ばれる建物を経て媛神堂へ行くのですが,先に山に入った長寿郎が婚舎で妃女子を待っていても妃女子がやってこない。そこで戻ってみると,井戸の中で2本の脚が井戸水から突き出ているのを発見します。
 実はこのとき,長寿郎をつけて山に入っていた幾多斧高という6歳の少年がいました。身寄りがなく一守家にもらわれてきた一守家最年少の使用人です。斧高は,いつも「よき坊」と呼んでやさしくしてくれる長寿郎の事が心配で,こっそりつけてきたのです。長寿郎は井戸のところまで戻ってきて斧高と出合い,二人で井戸の中の足を発見したのでした。
 もう一人,この行事を心配していた人が居ました。村の駐在である高屋敷巡査です。高屋敷巡査は独断で,3ヶ所ある山の登り口に警察官をつけて,山に不審者が入るのを防いでいました。
 この作品は,斧高少年と高屋敷巡査の視点で交互に語られていきます。
 さてこの井戸の二本足の死体について,一守家は警察に届けることなく,妃女子として早々に火葬を済ませてしまいました。
 それから10年後,長寿郎が23才,斧高が16歳の秋,長寿郎の二十三夜参りが終わり,嫁選びの儀式,婚舎の集いが行われます。秘守一族から選ばれた三人の花嫁候補が三つの婚舎に入った後,三人の中の一人,毬子と思われる首無し全裸死体がその婚舎の中で発見されました。一方,長寿郎は各婚舎に一度は回ってきたらしいのですが,どこにも居らず失踪した状態でした。しかしその後,参道の途中の馬頭観音の祠の中で,長寿郎と思われる首無し全裸死体が発見されます。
 秘守一族の跡継ぎであった長寿蝋が死んだ事から,秘守一族を一守家に集めて,後継ぎ問題の話合いが行われます。その場で,斧高自身さえ知らなかった事実が一守家当主から発表され,長寿郎亡き後,一守家,さらに秘守一族の次期当主は斧高にきまります。斧高は,一守家当主が家庭教師の女性に産ませた子供だったのです。その事実を初めて知って,斧高は失神してしまいます。
 その後,話合いにも出席していなかった二守家の次男,身持ちのよくない紘弐と思われる首無し全裸死体が媛神堂で発見され,しかも祭壇上には発見されていなかった長寿郎の頭部が置かれていました。紘弐の首は林の中に捨ててありました。
 まあこんな調子で語っていったら,冊子になるくらいの長い話になってしまいます。話が複雑で,謎を語ろうとするだけでもいろいろなことを説明しなければならず,非常に紹介しづらい作品です。読み終わっても,よくよく読み込んでいないと誰が誰だか訳が分からず,私は2度読みしました。
 刀城言耶シリーズとはいえ,最後に謎解きをしたのが刀城言耶だったのかどうかも定かでなく,大変難物です。
 この作品,刀城言耶シリーズの最高傑作という誉れ高いのですが,私としては前作(刀城言耶シリーズ第一作),「厭魅の如き憑くもの」の方がすっきりしていて好きですね。そちらの方が,トリックも分かり易く納得できます。

 しかし,被害者が首を切られていること,全裸であることは単に猟奇を狙ったわけではなく,しっかり必然性があって,しかもその理由が想像の右上をいくものであったのには感心しました。

|

« 乱立するキャッシュレス | トップページ | 韓国LGの巻き取りテレビ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 三津田信三「首無の如き祟るもの」:

« 乱立するキャッシュレス | トップページ | 韓国LGの巻き取りテレビ »