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2019/06/20

三津田信三の「六蠱の躯」

Mukonokarada

 三津田信三の「六蠱の躯(むこのからだ)」は,死相学探偵シリーズの三作目です。死相学探偵シリーズは,死視という,人の死相が見えるという特殊能力を持った20歳の青年,弦矢俊一郎を主人公にした作品です。
 今回の依頼者は,お馴染みの曲矢刑事。はじめに3人の女性が襲われた事件が起こり,それは襲われると言っても下着姿にされた程度で,なんらいたずらされていないという事件です。その後,3件の凄惨な殺人事件が起こりました。胸,足,腕など,被害者女性の一部を除き酸で焼き殺すという事件です。特殊なキノコから取った催眠剤を染み込ませたタオルで被害者を眠らせて犯行を行い,そのタオルを現場に残していくという犯行で,連続殺人事件であることが明らかです。
 弦矢俊一郎はこの事件について相談されたのです。実際弦矢の探偵事務所を訪れたのは曲矢刑事ですが,そもそもの依頼者は警視庁の新垣警部らしい。俊一郎は新垣警部による警視庁の取り調べにも立ち会い,事件の謎を解きます。
 この作品,オカルトチックなのは,六人の体から美しい部分のみを残し,完璧な女性を作るというアソート殺人事件であること,その裏には黒術師の意向が働いていることくらいで,あとは極めて真っ当な本格ミステリーです。
 完全なフーダニットミステリーで,謎の一つは,犯行時,視線を感じた被害者が辺りを見回しても犯人と思える男がいない事,つまり見えない犯人の謎,それにとにかく犯人は誰かという一点。その意味で,非常に良くできている作品だと思います。関係者を集めて「さて・・・」という推理の披露場面では,俊一郎は指摘する犯人を次々に変えて真犯人を追い詰め,最後に「六蠱はあなたですね」と指摘する。私は,完全に予想外の真犯人でした。しかし女性読者なら,犯人の気持ちがわかって,ひょっとして予想外の犯人ではないかもしれませんね。私の周囲には,論理的にわかったわけではないけれど,犯人の気持ちがわかって,早くから「犯人を予想できた」という女性がいました。
 ネタバレをせずに紹介できるのはそんな事くらいで,後は読んでいただくしかありません。かなりすんなり読める作品でしょう。
 猫好きなのに猫が怖いという因果な曲矢刑事と俊一郎の飼い猫「僕にゃん」とのやりとり,相変わらず頼もしい相談相手の俊一郎の祖母,弦矢愛とのやりとりなどが楽しいアクセントになっています。

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