三津田信三の「五骨の刃」
先日,三津田信三の「六蠱の躯」を紹介しましたが,今回は同じ死相学探偵シリーズの第4作,「五骨の刃」を紹介します。
他人の死相が見える探偵,弦矢俊一郎の探偵事務所に20歳そこそこに見える峰岸柚璃亜と菅徳代の女性が訪ねてきました。俊一郎がとっさに死視したところ,そのうちの一人,大学三年生の菅徳代にだけ死相が現れていました。二人は「無辺館」という今では廃屋になっている屋敷に入ったと話し始めます。そこは,その年の4月に凄惨な連続殺人事件が起こった館でした。当時この館では「恐怖の表現」という芸術展のオープニング・仮想パーティーが開かれており,その会場で「13日の金曜日」のジェイソンのような格好をした犯人によって4人の客が殺害され,1人が襲われたがかろうじて生還したという事件が起こりました。第一の兇器は剣,第二は鎌,第三は斧,第四は槍,第五は鋸。5つの凶器により殺傷されていました。
そして11月,ホラー趣味の俊一郎を訪れた二人の女性と男性二人が廃屋になっている「無辺館」を訪れました。男性のうち一人が不動産会社に勤務しており,この館の鍵をあずかっていたのです。その館の中で四人を襲う怪異。命からがら四人は館から逃げ出します。
そして,「無辺館」殺傷事件の慰霊祭が行われ,その慰霊祭の出席者の一人が心臓麻痺で死亡する事件が起こります。心臓麻痺なのに不思議なミミズ腫れが皮膚にできていました。おなじみの新垣警部と曲矢刑事の依頼で俊一郎が慰霊祭の参加者を死視したところ,4人の人物に死相が現れているのがわかります・・・・・。
前作「六蠱の躯」は,一部の設定を除いて本格ミステリーでしたが,今作はかなりオカルトに寄っている作品でした。ミステリー的には,フーダニットミステリー,犯人はいつもながら思いがけない人物でした。
ミステリーファンの私としてはオカルト寄りは残念なのですが,なにしろ「角川ホラー文庫」の一冊ですから,まあ致し方ないと言えましょう。
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