岡田秀文の「海妖丸事件」を読了
岡田秀文の「海妖丸事件」を読みました。
岡田秀文作品としては,以前「伊藤博文邸の怪事件」を読んでいて,「黒龍荘の惨劇」を買ったものの積読状態になっています。そのいずれも,名探偵 月輪龍太郎の活躍を,彼の友人である杉山潤之助が一人称で語る推理小説です。
さて,「海妖丸事件」ですが,月輪シリーズ前2作と同じ明治時代の話。海妖丸という横浜からヨーロッパへ渡る貨客船で起こる事件を描いた作品です。殺人事件が2件,宝石盗難事件が2件,さらに脅迫事件もあり,それが海妖丸という船の中,それも一等船室フロアで起こる完璧なクローズド・サークルものです。完全なフーダニットで,途中,脅迫事件,宝石盗難事件は解決されますが,最後に驚きの殺人事件の真犯人が明らかになります。フーダニットはそもそもそういうものだと思いますが,サプライズエンディングの作品といえるでしょう。
この真犯人には驚きますが,そこまで行く間がとてもまともな推理小説で,あまり推理小説的なケレン味もなく,いささか退屈ではあります。殺人,盗難,脅迫と,事件は多彩ですが謎的興味はいささか薄く,以前「伊藤博文邸の怪事件」の紹介記事で書いた,「立派な推理小説ではありますが,私のような謎好きには今一歩といえましょう。」という感想は,この作品でも同じでした。サプライズエンディングの終わりまで読んで,はじめて ○○○○トリックの面白さが明らかになるので,損な作品だといえば言えます。
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