坂口安吾の「不連続殺人事件」
以前読んだことのある坂口安吾の「不連続殺人事件」を再読しました。推理小説の専門作家以外の作家が書いた推理小説としては,最も本格推理小説らしい作品として知られています。
戦時中はたくさんの作家や画家が疎開していた県内有数の財閥である歌川多門邸に,終戦から2年経った昭和22年,再びそのころの人々が招待されます。しかし歌川家の人々が招待したわけではなく,だれかが偽の招待状を出して当時のメンバーを集めたのです。いまでは,疎開中の人間関係が壊れ,恋愛関係も複雑に変化しています。そこで起こる殺人事件。30人に及ぶ登場人物,刺殺,絞殺,毒殺,墜死と,その中の8人にが殺されます。名探偵巨勢博士(といっても,若い青年)の推理やいかに。
江戸川乱歩の評論集「幻影城」のなかに,この作品に対する秀逸な紹介・評論があり,私もまったく乱歩先生に賛成ですので,詳しくはそちらをぜひご覧ください。
犯人もトリックも知っていながら面白く読めたのは,さすがに坂口安吾先生の著作,やはり小説として面白いからでしょう。
Kindleには青空文庫版の無料のものがありますが,なぜかKOBOには青空文庫版がなく(基本的にはKOBOには「青空文庫」がある),角川文庫版で読みました。
「薬り」など,間違いではないかと思われる言葉使い,文字使いがあるのですが,そこには「ママ」とルビがふってあり,”編集者が見逃しているのではなく,著者を尊重して「そのまま」にしているのだ”と主張しています。さすが,坂口安吾先生の作品ともなると,編集者もそんな気遣いになるのですね。
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