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2020/10/21

ジョン・ディクスン・カーの「帽子蒐集狂事件」

Mad-hutter-mystery 不可能犯罪を書かせたら随一のジョン・ディクスン・カーの「帽子蒐集狂事件」を読みました。いまからウン十年前,高校生の頃,創元推理文庫で読んだ作品です。
 この作品,電子書籍を入手するのに苦労しました。Kindleで書名検索しても出てきません。著者名で検索しても出てきません。書名で検索すれば,創元推理文庫の紙の本はヒットしますが,電子書籍はありません。しかし知人は,確かに電子書籍で読んだと言っていました。どういう事?,というわけで,知人のKindleを見せてもらって,書名は「収集狂」ではなく「蒐集狂」であり,著者名は「ディクソン・カー」ではなく「ディクスン・カー」である事を知りました。私は「収集狂」「ディクソン・カー」で検索していたのです。ちなみに,創元推理文庫の紙の本は「収集狂」だったために,私の検索でヒットしたのですね。
 さてその内容,何しろ高校生時代に読んだ本ですから,今ではすっかり忘れています。しかし高校生の時の感想として,面白い作品揃いのカーの推理小説の中にあって,あまり面白くなかったという記憶だけが残っています。カーの代表作ともいわれている作品で,しかも江戸川乱歩が「カー問答」(乱歩の評論集「続・幻影城」に収録されている有名なカー作品の評価)で絶賛しているので,そんなはずはないという思いが常にしていました。最近,電子書籍で「続・幻影城」を読んだのと,知人から最近電子書籍版で読んだという話を聞いたので,どうしても読みたくなったのです。というわけで,グーテンベルク21という出版社の宇野利泰訳電子書籍版を読みました。
 ロンドンで帽子の連続盗難事件が発生し,盗まれた帽子がロンドン市街の外灯の上に被せてあったり,トラファルガー広場のライオン像にかぶせてあったりという奇妙な事件が起こった。それだけでは大した事件ではないが,やがてロンドン塔で,盗まれた帽子をかぶった死体が発見され,事件はにわかに殺人事件に発展する。
 その被害者の叔父にあたる引退した著名な政治家,ウィリアム・ビットン卿の家で貴重なエドガー・アラン・ポーの未発表推理小説の直筆原稿が盗まれるという盗難事件が起こる・・・。
 カーには珍しく,不可能犯罪を扱っていません。まあ,そう言うと語弊があるかもしれませんが,不可能犯罪は強調されていません。だから途中の謎興味は,帽子盗難事件と原稿盗難事件はどう関係しているのかが中心になります。犯人と目される人物については,途中二転三転しますが,結局フェル博士はかなり前から真犯人をお見通しだったという事になって,真犯人の自白で終わります。
 真正面からの不可能犯罪でないだけに,やはり途中の謎興味が不足しがちです。それと帽子収集狂の正体はずいぶん前から推測がついてしまったので,その興味も薄くなります。だから興味は,殺人の犯人はだれかというフーダニットとなります。
 そういう意味で,カーにもこんな作品がありますという作品で,”初めて読むカー”としてはお勧めできません。カーの特徴をあまり表していない作品な訳です。
 いまいちという感想は,高校時代から変わりませんでした。

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