京極夏彦「今昔百鬼拾遺 鬼」
長編「姑獲鳥の夏」からはじまる京極夏彦の百鬼夜行シリーズのスピンオフ的な作品としては,「百器徒然袋」の雨と風という短編集,それと「今昔百鬼拾遺」の鬼,河童,天狗の長編3作品があります。前者は薔薇十字探偵社が受けた事件を榎木津探偵がかき回し,中禅寺秋彦が事件を収めるシリーズ。だからより本編長編に近いシリーズです。それに対して,後者は分量的には短い(京極夏彦にしては)長編ですが,中禅寺明彦の妹である科学雑誌編集者の中禅寺敦子と,「絡新婦の理」の登場人物であり女子高生の呉美由紀が事件を解き,呉美由紀が最後に犯行関係者を戒めるというシリーズです。
その中の「鬼」。昭和28年9月~昭和29年2月にかけて,世田谷区駒澤野球場周辺で日本刀を使った連続通り魔事件が発生。7人目の被害者である片倉ハル子の友人,呉美由紀が「絡新婦の理」事件で知り合った中禅寺秋彦の妹,中禅寺敦子に相談して,この二人が事件の解明に乗り出すという物語です。
犯人の見込みが二転三転し,今昔百鬼拾遺三作品のなかではフーダニットに関するサプライズエンディングがあって,3作品の中では最も推理小説らしい作品だと思います。
今昔百鬼拾遺シリーズ3作品は,事情があって講談社,新潮社,角川書店からそれぞれ発売されており,後に3冊が合本された「今昔百鬼拾遺 月」が講談社から発行されています。内容はほぼ分割発売された3冊と同じものなので(ほぼというのは,月では多少直しがある様です)お間違えの無い様。
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