法人が給与をPayPayなどの決済アプリに振り込むことができる「給与デジタル払い」を23年春にも解禁することで政府が調整しているという報道がありました。
現在給与は,現金支給ではなく銀行口座に振り込まれるわけで,PayPayは残高が3000円を切ったら自動的に決まった額がその口座からチャージされるし,交通系のPASMOへはクレジットカード経由でその口座から自動的にチャージされるし,デビットカードを店で使えば,その都度その口座から支払われます。給与が現在の口座振り込みで,キャッシュレス的にも全く不便はありません。銀行口座を全く意識せずにキャッシュレス手段が使えています。
逆に,例えばPayPayに給与がデジタル払いで払い込まれたら,PASMOの方が足りなくなった時,PayPayからPASMOに分ける事が出来ないのだから不便だでしょう。そもそも店によってPayPayが使えずPASMOは使えるとか,クレジットカードが使えずPayPayは使えるとか,決済方法を一種類だけ持っていればすべての店でキャッシュレス決済できると思ったら大間違いです。そんな状態でどれか一個の決済アプリに給与を支払われても困ります。
通常の支払い方法が多様化している今,支払う一方で取り出せない決済アプリに給与をデジタル払いされても,かえって不便な世の中になります。
給与を様々な決済アプリに分けて支払うなどという面倒なことを会社がやってくれると思えず,やったとしても相当の事務量になるでしょう。決済アプリ側が他のアプリへお金を取り出せるようにしてくれればいいのですが,それも相当の事務量になって不合理。今ある銀行口座を使うのが一番便利で合理的だと思うのですがどうでしょう。
>キャッシュレス推進協議会のまとめでは日本のキャッシュレス決済比率は20年に30%程度と、60%台のオーストラリアや英国、50%台の米国などと差が大きい。
これは給与が決算アプリに直接振り込まれないからではありませんね。キャッシュレスを使えない店が多いからです。
そこのところを間違えないように。すべての店がキャッシュレスを受け入れれば,キャッシュレス決算比率などたちまち上がります。
そう考えると,実験中のデジタル円ができればいいのかもしれません。
記事中に言及のあるペイロールカードは,現金を引き出せても他の決算アプリにお金を分けることはできません,現金を経由する必要があって,銀行口座に比べれば不便です。
まあ,法人が決済アプリにデジタル支払いできるようになるというのは,銀行口座を作れない人への便宜以外にメリットはないように思えます。日本では,戸籍があれば小学生でも銀行口座を作れますから(実際には0歳でも作れる),少なくとも日本人にはデジタル支払いにはメリットはありません。
(挿絵はAIによる描画サイト,Dream by WOMBOが「QRcode」のタイトルで描いた絵。)
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