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2022/10/20

岡部一明著「パソコン市民ネットワーク」

Pcshimin-network 長いこと片付けたことがなかった本棚を片付けました。何しろ,壁いっぱいに作ってもらった本棚で,本を一列に並べた前にさらに一列本を並べ,その本の上に本を積み上げるようにして並べた本棚で,千の単位で数える位の本があるはずです。
 そこで見つけたのが「パソコン市民ネットワーク」という本で,岡部一明さんという方の書いた本です。著者略歴によると,明治大学を卒業後アメリカにわたり,カリフォルニア大学自然環境保全課を卒業し,市民団体系の研究所や大学の講師を勤めた方の様です。Amazonで著書を検索してみいると,市民団体によるパソコン利用に関する本やアメリカ西海岸地方の自転車旅の本などがでてきます。
 そんな一冊が「パソコン市民ネットワーク」という本です。出版は1986年ですから,いまから36年前ですね。その頃のパソコンといえば8ビットパソコンの時代,サーバーはVAXなどミニコンの時代です。インターネットはまだ黎明期で,ネットといえば一般的にはパソコン通信,つまり音声電話回線にモデムをつないで,ピーヒャラヒャラという音と共にパソコン通信を行っていました。そんな時代に,各種市民団体や市民運動が,パソコン通信の先進地域であるアメリカ西海岸でどのように使われているかを紹介したのがこの「パソコン市民ネットワーク」という本です。
 何しろインターネット以前の様子を書いた本なので,当時は実用的な本だったのでしょうが,今となっては資料としての価値しかないかもしれません。しかし久しぶりに読んでみると,古き良き時代のパソコン通信時代のノスタルジーや,新進気鋭の技術であるパソコンとネットワークを何かに使ってやろうという熱意が感じられ,今読んでも読み物としておもしろい本だと思います。
 写真は,Amazon書店のサイトから拝借したものですが,他の本と違ってモロに写真なのです。つまり新刊本はAmazonでも売っておらず,「古本しかありませんよ」という事ですね。確かに,実用書としては役割を終えている本なのでしょうが,ピーヒョロヒョロというパソコン通信を使っていた私などには,今読むと懐かしく,当時が思い起こせるような本です。

   この本の一節に,著者がアメリカの市民運動に携わっている人に,「政府や巨大組織が個人を管理するための道具であるコンピュータ技術を,市民運動家が使うことにためらいはないのか?」と意地悪な質問をした話が出てきます。それに対して,アメリカの市民運動家は,「原発などの巨大技術ではなく,小型コンピュータに関しては,新しい分散型社会のコミュニケーション手段として一定の期待をかけている」とか,「分散的な相互依存ネットワークは,1980年代の社会政治的運動の中枢である。このネットワークは,中央集権的な政治と資源分配に対して,地域所有・地域管理の民主的なオルターナティブを提供する。同時に比較的安価なマイクロコンピュータの出現が,分散型の地域所有・地域管理のコミュニケーション・情報交流ネットワークを物理的に可能にする。この技術は現れつつある社会変革ネットワークの "神経系" となる。」とか答えています。
 ここで,アメリカの活動家が使う「分散的」という言葉が,キーワードのように何回も出てきます。それで思い出されるのが,ビットコインやブロックチェーン技術の出現時に絶賛したアメリカ人たちの言葉です。それらの人々は今に至るも,ビットコインやブロックチェーンが中央集権的ではない「分散的」な仕組みであることを絶賛していました。その源流として,アメリカの一部の人々,市民運動活動家のなかに,「分散的」という事を絶賛する人たちがいて,それが脈々とビットコインやブロックチェーンの分散技術礼賛につながっているのだろうなと思いました。
 この「分散的」を好むアメリカの風潮は,最近の「Web3」,つまり「分散型のインターネット」への期待にもつながっているような気がします。

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