久しぶりの森博嗣作品--------「φは壊れたね」
久しぶりに森博嗣の作品を読みました。Gシリーズの第一作,「φは壊れたね」という長編です。Gシリーズは,作品名に新型コロナのようにギリシア語のアルファベットがついているシリーズです。シリーズ名のGは,もちろんギリシアの頭文字からきています。Amazonで検索したら,Gシリーズ9作の合本版という電子書籍が出ていたので,それを購入しました。Gシリーズはそもそも12作からなるシリーズとされており,その中の9作が前期作品,その後の3作は後期作品で登場人物も違うらしいです。しかも最終作「ωの悲劇」はまだ出版されていません。今回購入した合本版は,前期作品9作を収録したものというわけですね。
このシリーズのレギュラーメンバーは,C大学の学生(大学院生を含む)である山吹早月,海月及介,加部谷恵美,それにS&NシリーズではN大学の犀川研究室の助手として登場し,今はC大学の助教授になっている国枝桃子,N大学の大学院生である西之園萌絵,それに犀川創平助教授(この作品にはほんの一瞬登場するだけだが)です。
私が好きなVシリーズは,阿漕荘に住んでいる面々と阿漕荘の近くに住む瀬在丸紅子とへっくん親子が登場する作品群ですが,その雰囲気そのままに大学チームが研究室で,ファミレスで,推理を繰り広げます。まるで部活の乗りですね。
事件そのものは,二人のC芸大生,戸川優と白金瑞穂が友人町田弘司のマンションを訪れてみると,町田弘司が両手を広げたまま縛られ,空中にYの字形につるされ,胸を刺されて死んでいたというものです。部屋の出口となりえる戸口や窓はすべて施錠され,鍵は複製が作りにくい電子錠,しかも戸口を開けたらその内側に積み上げられていた箱が外に向かって崩れ落ち,そこから犯人は出ていないことがわかります。おまけに念の入ったことに,部屋には固定カメラ取り付けられ,室内の様子がビデオテープに録画・録音されていました。被害者は角度的に画像では見えないものの,被害者の後ろから撮影されており,発見者である2名が部屋の鍵を引出しに入れるなど,何ら不審なことは行っていないのが証明されます。この密室はどのように解かれるのか,犯人は誰か,それらが謎として読者を引っ張っていきます。もちろん,部活の乗りの心地よさと共に・・・。
山吹早月,海月及介,加部谷恵美の名前に見覚えがあると思ったら,私が以前読んだ短編集「レタスフライ」の中の「刀之津診療所の怪」という楽しい短編にに出てきたメンバーだったのですね。
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