Gシリーズ2作目は「θは遊んでくれたよ」
先日書いたように,森博嗣Gシリーズ9作合本版(電子書籍)を読み始め,2作目にやってきました。2作目は「θは遊んでくれたよ」というタイトルです。
はじめ,ニートであった男性が25歳の誕生日にマンションから転落死しました。状況からみると自殺に見えるのですが,額にΘのギリシア文字が描かれていたのが特異な状況でした。
次はそれから半月後,やはり自殺としか思えない状況で看護師の女性が病院の屋上から飛び降りたらしい事件が発生,今度は手のひらにΘが描かれていました。シータは,どちらも口紅で描かれていす。
その後も,国枝助教授の同期の男性とか,全部で5人の男女が飛び降り自殺に見える状況で発見されます。なぜ "一連の自殺" という事になるのかというと,すべてどこかにΘのメークが口紅で書いてあったからです。
問題は,その5件の自殺者間になんの関連性も見いだせなかった事です。
Θの意味については,最初の自殺者である男性のパソコンから,「theta(Θ)」という名のついたチャットソフトが発見されます。AIがチャットの相手をすると思われるソフトです。さらに4人目の自殺者である女性のパソコン画面で,Θを描いた壁紙を見たと話す人もいました。ただ,手掛かりはそこで途切れ,他の自殺者とAIソフトとの関係は見いだせません。チャットソフトの素性についても,警察の捜査でもわかりませんでした。
Θを口紅で描いた意味は? 自殺者たちは本当に自殺なのか? 事件性は? それが謎として読者を引っ張ります。しかしまあ,Gシリーズでは,事件の謎よりもレギュラーメンバーによる推理談議が面白い。今回はいつものメンバーに加え,被害者の家族に依頼された探偵の赤柳初朗と西野園萌絵の友人の女性,警察から口紅の分析を依頼された研修医,反町愛が加わります。そして最後には海月及介がいつもの重い口を開いて謎を解きます。
海月が謎を解くのはGシリーズの定番ですが,今作では海月より前に犀川助教授が事件の真相を見抜き,それを萌絵に語っていたことを萌絵が反町愛に打ち明けました。何も知らない様子で推理談議に参加していた近藤刑事は,実は犀川助教授の推理を知っていたのです。チャットソフトについては最後まで分からずしまいですが,わけのわからないコンピューターシステムというと,森博嗣作品では,あの人,真賀田四季の存在を感じます。しかしこの作品に出てくることはありませんでした。
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