森博嗣Gシリーズの次は τ(ちょっとネタバレ)
森博嗣Gシリーズ9冊合本版(電子書籍)の3作目は,「τになるまで待って」です。
愛知県の北の端の森の中に建つ「伽羅離館」が舞台です。ここは,一部に人気のある若い超能力者,神居静哉の別荘です。そこへ新聞記者とカメラマンの女性,富沢健太と鈴木倫子,そしていつもの赤柳初朗,可部谷恵美,山吹早月,海月及介の4人,総勢6人が登田昭一というこの館を管理している不動産業者に連れられてやってきます。富沢と鈴木は "超能力者" の取材のため,おなじみの4人は,この館の図書室にあるというMNI(真賀田四季との関連が疑われる宗教的な信者を集めた組織)関連資料を閲覧するためにこの館にやってきました。赤柳初朗が膨大な資料を調査するために,大学生3人を雇ったのです。
推理小説としては完全な館もの,その館の中での密室殺人をテーマにしています。館は車を降りてから1時間も森の中を歩かなければ到達しないし,屋外ではかろうじて携帯電話が通じますが,屋内では通じません。全ての館の窓は太っていない人ひとりがやっと出入りできる程小さく,しかもステンドグラスのように色付きのガラスが嵌っていて外が見えず,さらにすべての窓がはめ殺しです。そんな館から外へ出る路は表口と裏口の頑丈な鉄のドアしかありませんが,その2つのドアがどういうわけか開閉できなくなってしまいます。巻頭には,建築が専門の大学生3人が描いたという館の平面図が挿入されています。
そんな館の中で行われた神居静哉による超能力の披露。可部谷恵美が被験者になり,彼女が神居に連れられてある部屋に入り,しばらくして他の来館者達も部屋に入ったのですが,可部谷恵美と後で入った面々は話はできるのにお互いの姿は見えません。それが超能力として示されます。それが第一の謎。
もう一つが神居静哉がその部屋で首を絞められて殺害されます。その部屋へのドアは一つしかなく,それは来館者によって見張られていました。
そんな状態で起こった密室殺人事件ですが,外部へ連絡するために来館者達が協力して窓を壊し,そこから電気コードを垂らして携帯電話のアンテナとし,それで警察や西之園萌絵に電話を掛けます。そして死体収容のためにやってきた消防のヘリに乗って,萌絵と犀川助教授がやって来て,5分間でなぞ解きをしてそのヘリに乗ってまた帰っていきます。なにしろヘリが帰るまでの5分間でなぞ解きをしなければ,車で到達できるところまで1時間も歩かなければならないというので,あわただしいなぞ解きでした。
まあ,はっきり言って,それほどの密室トリックではありませんwww。超能力の謎解きの方が面白かったかな。まあ,巻頭の平面図を見て,変なドア配置だとは思ったのですよね。ただ常識的には別のトリックを考えてしまいます。それが隠れ蓑になって,真相には至りませんでした。
ただし,犯人や犯行動機は,最後まで読んでもわかりません。この作品の中では明かされていないのです。Gシリーズの他の作品で明かされるのかはわかりません。まあ犯人は,漠然とした "組織" でいいのかもしれませんし,犯行時は館の外部にいたはずの不動産業者の登田なのかもしれないし,動機は神居が不要になったからというだけなのかもしれません。
| 固定リンク
コメント