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2023/01/16

次の森博嗣作品は・・・「赤緑黒白」

Red-green-blackwhite これまで,森博嗣のGシリーズを4作読んできて,次は5作目「λ(ラムダ)に歯がない」という事になるのですが,ここらへんで以前読んだVシリーズの最終作,「赤緑黒白」を再読することにしました。VシリーズはGシリーズより前の出来事になるわけです。実際には,VシリーズとGシリーズの間にS&Mシリーズの出来事が入るわけで,森博嗣先生の3シリーズのうち,Vシリーズは最も古い出来事にあたります。そのシリーズの最終作が「赤緑黒白」です。「赤緑黒白」には,Gシリーズに出てくるMNIという組織が出てくるので,Gシリーズを中断して,この作品を再読することにしたのです。
 この作品では,4つの連続殺人事件が起こります。第一の殺人事件では赤井という人物がマンションの駐車場で射殺され,その死体は全身を真っ赤色に塗装されていました。第二の事件では,田口美登里がマンションの部屋で扼殺死体になって発見されますが,緑色に塗装されていました。第三の事件では,黒田実が公園で射殺死体となって発見され,黒田は黒色に塗装されていました。そして第四の事件では,山本百合がマンションで射殺され,彼女は白色で塗装されていました。最後の事件の被害者には,名前に白の字は入っていません。どうやらこのマンションに呼ばれたのは白鳥こずえというモデルの女性で,当日体調が悪くなり山本が代わりにマンションに派遣されたという事がわかります。
 実は第一の事件,赤井が射殺された事件の後,探偵の保呂草潤平は第二の田口美登里から「フィアンセである赤井を殺したのは推理小説家の帆山美零だから,彼女を捕まえてほしい」という依頼を受けていました・・・。
 この作品,すでに読んだことがあったのですが,初読の時には,最後にVシリーズとS&Mシリーズの関係について衝撃の事実の開示があり,そっちの方の印象が強くて,肝心のお話の方は全くおぼえていませんでした。殺人事件の犯人に関しても,ラストにどんでん返し的な展開があります。
 Vシリーズの登場人物は,没落前の瀬在丸家の屋敷である桜鳴六画邸の敷地内にある無言亭という小屋で一人息子のへっくんと執事の根来機千瑛と共に暮らしている瀬在丸紅子と,その近くの阿漕荘というアパートに住む探偵にして便利屋の保呂草潤平,大学生の小鳥遊練無,香具山紫子。彼らが遭遇した事件を,瀬在丸紅子が解決する物語がVシリーズです。どの作品にも,プロローグとして保呂草潤平のモノローグがついていますが,本文は三人称で,保呂草が書いたという体を取っています。
 再読して気づいたのですが,「赤緑黒白」のプロローグで保呂草が小鳥遊練無と香具山紫子の関係に言及しています。「お互いに自分が持っていることに気づいていない磁石,その微かな引力を部外者の私が感じている」「その分析の正しさを確認したのは,ずっと後の事だ」といっているのです。これだけ読んだのでは何の事かちんぷんかんぷんですが,「刀之津診療所の怪」という短編(短編集「レタスフライ」所収)の事だと今ではわかります。「刀之津診療所の怪」は2004年5月にメフィスト誌発表,「赤緑黒白」は2002年9月に講談社ノベルで出版されていますから,このプロローグを初出で読んでも,この部分は何のことかわからないわけです。少なくとも2年後の「刀之津診療所の怪」を読むまではわかりません。そこら辺が森博嗣ですね。
 私の知人で,四季シリーズをVシリーズの前に読んだ人がいるのですが,「赤緑黒白」最大のショッキングなラストを驚けなかったのです。すでに四季シリーズ「秋」でネタバレされてしまっていたわけです。危ない危ない。森博嗣作品は各所に爆弾を仕込んであるので,短編を含めて発表順に読むべきですね。短編「刀之津診療所の怪」は,Vシリーズを何作か読んだ後で読まなければ何にも面白くないし,作品の意味さえわからないでしょう。しかし前述のように,「赤緑黒白」のプロローグを読んでも,その後に発表された「刀之津診療所の怪」を読まなければわからないという事がありますからね。前述のように「そこら辺が森博嗣ですね」としか言えませんwww。
 なんだか「刀之津診療所の怪」も再読したくなってきました。

   ところで,この作品では,ラストで保呂草潤平が阿漕荘を去ることが示されています。「さらば保呂草」という事ですが,Vシリーズの第八作「捩れ屋敷の利鈍」では保呂草潤平が瀬在丸紅子に会って,捩れ屋敷事件の事を語っています。「捩れ屋敷の利鈍」事件,今考えれば,「赤緑黒白」を含む他のVシリーズの事件よりもずいぶん後で起こった事件なんですね。何しろ「捩れ屋敷の利鈍」には,大人になった犀川創平や西之園萌絵が登場するわけで,Vシリーズと同じ年代の話ではありえません。Vシリーズの他の作品の事件より25年以上後の事件が「捩れ屋敷の利鈍」でしょう。瀬在丸紅子と保呂草潤平は,保呂草が阿漕荘を出た後も連絡を取っていたという事ですね。

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