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2023/02/18

森博嗣のGシリーズ第8作「ジグβ(ベータ)は神ですか」

Mori-hiroshi-jigubeta Gシリーズを読んできて,次は第8作「ジグβ(ベータ)は神ですか」です。なにしろ,Gシリーズのうち,初期9作の合本版電子書籍を買ったものだから,長編各作品を,まるで一作の大長編の各章であるかのように読んでいます。
 第8作は,第7作「目薬α(アルファ)で殺菌します」から2年後の話。おなじみの登場人物,加部谷恵美,山吹早月,海月及介,雨宮純は大学を卒業して,それぞれ社会人になっています。探偵の赤柳初朗は,前作「目薬α・・・」で何らかの組織の暴漢に襲われてパソコンを奪われたので,用心のために本来の女性に戻って水野涼子と名乗っています。
 これらの面々が久しぶりに集い,三重県の広大な公園,「美之里」に行くところから話が始まります。
 実はこの施設は宗教施設と言われ,一般人が入れる公園部分と,柵で隔離された芸術家が住み,創作に打ち込めるエリアが共存している施設です。ここの教祖はジグβと言われますが,誰も会ったことがありません。一部では,実在しないのではないかとさえいわれています。
 その芸術家エリアのとある家で発見されるのが,大きなフィルムでラッピングされ,棺桶のような箱に入れられた死体。真賀田四季の痕跡を探して,ドキュメンタリー作家の名刺を持って取材と偽ってここに入り込んだ水野探偵が発見しました。やがて別の人形作家の家で,真賀田四季そっくりの人形が発見され,その屋の住人である人形作家が真賀田四季そのものではないかということになり,会ったことがある瀬在丸紅子が呼ばれます。四季に会ったことのある人は少なく,犀川創平准教授は海外での学会に出席中,西之園萌絵は東京だし,一番近いのが名古屋在住の瀬在丸紅子でした。紅子はしっかりと役目を果たし,人形作家が本物の真賀田四季がどうかをきっぱりと指摘します・・・。
 適度に閉鎖されている公園,芸術家エリアはさらに閉鎖されています。でも,加部谷たち登場人物は適当にその宗教施設に入り込んでいるという状況で起こる事件。一種の閉鎖空間での事件ですが,広大な敷地の中の話であり,館もののような閉塞感はありません。美之里は宗教施設でありながら,毎日のお勤めなどもなく,住人である芸術家たちが宗教的な行動をとることもなく,宗教観はとても希薄です。
 この作品では,他のGシリーズ作品と同様,事件の真相,殺人犯人などは,確定的には示されません。登場人物たちの推測が示されるだけ。読者はそれを信じるしかない・・・と思いきや,ラストのラストで,推測が真実そのものであったことがわかります。本作はその意味で,Gシリーズの他作品よりかなり犯人やその動機が,はっきりわかるように描かれているといえるでしょう。

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