殊能将之の「ハサミ男」
本来なら,森博嗣のXシリーズ第5作目を読むところを,ちょっと浮気して殊能将之を読みました。これまで「美濃牛」など,いくつかの作品をこのブログで紹介してきた殊能将之ですが,今回は「ハサミ男」を読みました。過去に読んだように感じていたのですが,電子書籍の履歴にこの作品がなく,まだ読んだことがなかったのですね。
既に二人の女子高生の殺害事件が起こり,マスコミが「ハサミ男」という名前を付けていて,警察が犯人を追っていました。その状況で,「ハサミ男」は三人目の女子高生に目をつけて,尾行で行動を探ったり,学校や自宅を確認したり,犯行の準備をしていました。物語は「ハサミ男」が三人目の女子高生に目をつけるところから始まります。冒頭は,「ハサミ男」の一人称で語られます。そして途中から,警察の磯部刑事の視点でも語られるようになり,「ハサミ男」視点の章と磯部刑事視点の章が交互に現れます。
そして「ハサミ男」が第三の被害者を殺害しようとして被害者の自宅を見張っていますが,女子高生なのに夜になっても帰宅しません。仕方ないと帰る途中の公園で,意中の被害者が殺害されているのを発見します。しかも,絞殺の後自分が持っているのと同種のハサミでのどを突かれていました。これまでの二件の自分の犯行と同じ手口でした。現場のもう一人の発見者が警察に通報し,「ハサミ男」は発見者の一人として警察の事情聴取を受けます。そして自らも犯人を捜していきます・・・。
この作品の構造,つまり叙述トリックに脱帽しました。「ハサミ男」と磯部刑事が交互に語り手となるわけですが,磯部刑事目線で認識している「ハサミ男」ともう一人の語り手の「ハサミ男」が同一人物なのかという事です。読者は当然同じ人物だと思うわけですが・・・。
なお,第三の事件の真犯人は「ハサミ男」ではないわけで,その真犯人が誰かは途中で推測がつきました。
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