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2023/03/07

森博嗣の「キウイγ(ガンマ)は時計仕掛け」

Morihiroshi-kai 建築学会が伊豆の日本科学大学で開催され,M県庁の職員になっている加部谷恵美やM大学助教になっている山吹,それにW大学准教授の西之園萌絵,N大学の犀川準教授ら,おなじみのメンバーが久しぶりに集合します。加部谷と山吹は,学会で共著(加部谷はほとんど名前を貸しただけだが)の論文発表するようです。
 その大学の学長が自らの部屋で射殺されました。その模様は防犯カメラでとらえられており,犯人はキウイに飲料缶のプルトップが刺さったもの手に持ち,逆の手で拳銃を持って学長を射殺しました。学長室には今回の建築学会のトップを務めていた副学長もいましたが,防犯テレビの映像では,犯人は副学長には目もくれず学長を射殺する様子が捕らえられていました。キウイの意味は何か?,副学長を無視したのはなぜか? 
 そしてその副学長も,密室の中で射殺死体で発見されます。学長射殺の時に副学長は無視したのに,後に副学長を殺害したのはなぜか?
 この作品でも他のGシリーズ作品と同様,事件の真相,殺人犯人などは,確定的には示されません。登場人物たちの推測が示されるだけ。読者はそれを信じるしかありません。しかも今回は,犯人の動機も全く示されていません。
 この作品,おなじみのメンバーが集合するのですが,この作品をもってGシリーズ第一部が終了します。NHKの朝ドラの最終回には,これまでの登場人物が一堂に会する場面が描かれますが,そんな感じでしょうか。西之園萌絵は本作の中で,懐かしい島田文子と再会しますが,つまりGシリーズの第二期の主人公である島田文子へのヒロインのバトンタッチという意味もあるのでしょう。私はもうすでに次作「χ(カイ)の悲劇」を読み始めていますが,萌絵たちおなじみのメンバーは登場せず,島田文子が主人公となります。
 Gシリーズは,以前の記事で述べたように,各作品が一つの大きな長編の章のように感じます。一つ一つの作品では,完璧に解明されず,それぞれの作品が謎を残しています。いちばん顕著なのは各作品の犯罪の動機の点です。物理的にこうやれば犯行は可能なのだから,犯人はこの人だろうというところまでは言及される(加部谷や萌絵たちの推測の形で)のですが,なぜそんな犯行が行われたのかは謎のままです。
 そういう意味で,「χ」からはじまる第二期Gシリーズが楽しみではあります。これまでの作品の謎が,「χ」以降の作品でどこまで解決されるのか・・・・・。

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