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2023/03/13

森博嗣の「イナイ×イナイ」

Inai-x-inai これまで,森博嗣のGシリーズを第1作「φ(ファイ)は壊れたね」から10作「χの悲劇」まで読んできて,先日書いたように第11作「ψ」は未刊の第12作「ω」が発売されてGシリーズが完結した後読もうと思いました。そこで次読む作品として選んだのは「Xシリーズ」です。
 Xシリーズは,美術品鑑定と探偵業を兼業している「SYアート&リサーチ」という東京にある事務所の事務員二人,30代の小川令子と芸大生のアルバイト(報酬をもらっていないのでボランティア)真鍋瞬市が係わった事件を描くシリーズです。常連の登場人物としてはもう一人,資産家の三男で,SYアート&リサーチにしばしば事件を持ってくる鷹知祐一朗がいます。所長の椙田泰男はめったに事務所に顔を見せず,何か別に活動しているようです。それもそのはずで,その正体は保呂草潤平らしい。あるGシリーズの作品で,椙田の事を女性探偵の赤柳初郎がうっかり「保呂草さん」と呼んで,椙田が顔をしかめるというシーンがありました。
 このXシリーズは,舞台となっている時期的には,Gシリーズの「η」の後辺りという考察がネット上に上がっていました。一作目「イナイ×イナイ」には,西之園萌絵もほんの一瞬登場するシーンがありました。萌絵がW大学に赴任してすぐという時期ですから,「η」のすぐ後という事になるでしょう。まあ,S&Nシリーズ,Vシリーズ,Gシリーズ等と地続きというか,同じ世界の作品です。
 さて第1作「イナイ×イナイ」。SYアート&リサーチに佐竹千鶴という若い美人が「私の兄を捜していただきたい」と依頼にやってくるところから始まります。探してほしいという兄は,千鶴が住む離れと同じ敷地にある母屋の地下に幽閉されているらしいというのですが,その母屋には義母(死亡した千鶴の父の後妻)佐竹絹子が住んでいます。佐竹家にはもう一人,千鶴の双子の妹,佐竹千春がいて,千鶴とは別の離れに住んでいます。双子の姉妹は,義母絹子と折合いが悪く,母屋にもあまり行ったことがないという事です。
 そもそも,SYアート&リサーチの椙田所長は,義母絹子から佐竹家の資産である絵画の鑑定を依頼されていて,その絵画の写真撮影を口実に小川と真鍋の二人が母屋へ調査に赴きます(そもそも千鶴がSYアート&リサーチを訪れたのは,絵画鑑定で佐竹家を訪れた椙田を知ったから)。
 その母屋で発見した地下牢,そしてその中では,双子の妹千春が首を絞められ,さらにのどをカミソリで切り裂かれて殺害されていました。地下牢は鍵がかかっていて入ることができない状況でした。やがてもう一つの地下牢への入口が発見されますが,千春の死体が入口の扉にもたれかかって死んでいたので,犯人がそこから逃げることはできません。密室状況の地下牢から犯人はいかに脱出したのか・・・。
 Gシリーズとは趣が異なり,「イナイ×イナイ」では主として小川,真鍋,鷹知達の細かく理屈っぽい考察が描かれ,しっかり本格推理小説しています。しかしその真相は,"やっぱり森博嗣先生" というような感じのものでした。
 Xシリーズがこの調子でいくのならば,オーソドックスな本格推理小説として読めるので,なかなか期待できます。

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