森博嗣の「ムカシ×ムカシ」
森博嗣のXシリーズ第4作目は「ムカシ×ムカシ」です。
東京郊外の広い敷地を持つ邸宅で老夫妻が殺害され,残された膨大な美術品の鑑定を依頼されたSYアート&リサーチの小川と真鍋が屋敷に赴きます。その屋敷には,殺された老夫婦の孫である若い女性,君坂一葉が滞在していました。
その後,その屋敷の敷地にある古井戸から,男性の死体が発見されます。死体はこの屋敷,百目鬼家の係累の男でした。そしてそれから,君坂一葉の母,妙子が密室で殺害されます。百目鬼家の古井戸には河童の伝説があり,君坂妙子は皿を頭に乗せて殺害されていました・・・。
推理小説としては,ホワイダニットの作品です。密室については,「密室物の推理小説はたくさんあるよね」で終わり,どのように犯人が密室を作ったかは明らかにされません。頭の皿の意味もわかりません。眼目はあくまでも "犯人はどんな理由で殺人を犯したのか?" にあります。この殺害動機は,一般的な想像の右上を行くもので,そういう意味ですぐれた作品だといえるでしょう。
さらにまた,エピローグも印象的です。この屋敷のかつての主人が,何のためにモネの絵画を購入したのかという事に関して,真賀田四季の名が表れます。ここでも彼女の影が表れてくるのですね。Xシリーズでありながら,何だかGシリーズのように感じます。
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