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2023/07/30

H・H・ホームズの「9人の偽聖者の密室」

Nine-times-nine 先日紹介した,国書刊行会から出ている「奇想天外の本棚」の中の一冊,「9人の偽聖者の密室」を読みました。作者,H・H・ホームズは,推理小説評論家としてのアントニー・バウチャー という名前の方が有名です。わたしも,バウチャーなら,江戸川乱歩の評論集「幻影城」でおなじみの名前でした。そのバウチャーが,密室の巨匠,ジョン・ディクスン・カーへの献辞付きで書いた長編推理小説がこの作品です。もちろん密室殺人事件がとりあげられています。
 作家のマット・ダンカン青年が,大学時代の友人,グレゴリー・ランドールと偶然出会い,ランドールの婚約者が尼僧になるというという話を聞いて,それをやめる様説得する役を買って出るところから話が始まります。友人の婚約者はコンチャ・ハリガンという娘で,マットがハリガン家を訪れた時,彼女はカトリックの尼僧であるシスター・アーシュラと話し合いをしている最中でした。
 マットは,シスター・アーシュラがコンチャを尼僧にすべく話し合っていると思って血相を変えて止めようとするところに,シスター・アーシュラがコンチャとの話し合いをを終えて部屋から出てきて言ったのは,「ようやく説得できましたわ。あの子は修道女になるのをあきらめました。」という言葉でした。シスター・アーシュラは,マットの予想に反して,コンチャが尼僧になるのを止めるべく話し合いをしていたのでした。名探偵,シスター・アーシュラの颯爽とした登場です。
 マットはコンチャの父,ウルフ・ハリガンに気に入られ,彼の仕事を手伝う事になります。ウルフは宗教詐欺の研究家で,目下のところアハスヴェルという男が主催する「光の子ら」という新興宗教の裏の闇を暴こうとしていました。
 やがて,そのウルフが自室でアハスヴェルに射殺されるという事件が起こります。黄色い特徴的な服装の男,アハスヴェルがウルフの部屋の中に居て,部屋の外からマットとウルフの兄,弁護士のR・ジョーゼフ・ハリガンの二人がそれを目撃していました。しかし部屋に押し入ってみると,ウルフの射殺死体があるだけで,外から見た犯人のアハスヴェルは,影も形もありませんでした。部屋は完全な密室で,事件は完全な密室殺人事件でした。
 マットと捜査班のテレンス・マーシャル警部補は,ジョン・ディクスン・カーの「三つの棺」の中の「密室講義」を参照しつつ,密室を解明しようとします。ところが今回の殺人事件は,「密室講義」のどのケースにも当てはまらない密室事件でした。
 本作品の最大の興味は,犯人は誰かという事と共に,この密室殺人がいかにして行われたのかという事なのですが,それにしてはトリックがちょっと弱いかなと思います。シスター・アーシュラによるラストの謎解きに向けて,興味津々盛り上がってきたのに,解明されてみると,密室トリックがちょっとあっけなかったという感想を持ちました。つまらなくはないけれど,ちょっと肩透かしという感じは否めませんでした。ネタバレになってしまうので題名をはっきり書くことはできませんが,江戸川乱歩が絶賛したカーのある作品に似たトリックが使われています。さらに,高木彬光のある長編のトリックも思い浮かびます。本作では,密室トリックの細かい部分はともかく,カーのある作品に似た密室トリックの大まかな構図は,途中でわかってしまうという事もあります。
 何はともあれ,この作品の原題名「ナイン・タイムズ・ナイン」という名は,密室好きの本格推理小説好きは結構聞いたことのあるもので,機会があれば読んでみたいと日頃思っていた作品でしたので,それが「奇想天外の本棚」シリーズで読めた事には満足しました。

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