クリスティーの「動く指」
アガサ・クリスティーの「動く指」は,以前このブログで紹介しました。今回,何回目かで「動く指」を読みました。犯人が誰だったか,記憶があやふやになってきたので,もう一度読もうと思ったのです。この作品がどんな物語かは,前のブログ記事を見ていただきましょう。
そして読了した後,今度はドラマを見ました。BBCで作られたジョーン・ヒクソンがマープルを演じる作品で,その中の一作に「動く指」があります。
原作では,名探偵ミス・マープルは全体の75%くらいのところで登場し,どんな活動をしたかわからないままに犯人を罠に嵌め,最後に一気呵成に真相を説明して終わります。つまり,ミス・マープルはほとんどこの推理小説には出てこないのです。そんな作品を,「ミス・マープル」と銘打ったシリーズの1作としてドラマ化する。さぞ作りにくかったろうと思います。何しろ前述のとおり,原作ではミスマープルは最後の方で少しだけ登場し,途中ではほとんど出てこないのですから。
実際ドラマを見てみると,初めからミスマープルは登場していました。主人公であるジェリーとジョアナの兄妹がリムストックの町に到着し,町の人々が次々と紹介され,ジェリーのところに切り張りの手紙が届いた後すぐに,ミス・マープルが牧師夫人の招きでこの町に列車で到着するのです。原作では殺人事件が起こった後,牧師夫人がミス・まープルの出馬を要請しますが,ドラマでは殺人が起こる前,町中に匿名の切り貼りの手紙がばらまかれた事から,その犯人,真相を突き止めてほしいとしてマープルを町に呼ぶのです。そして原作では,最後に一気呵成にマープルの言葉としてしか説明されない彼女の調査や推理が,ドラマでは其処此処で少しずつ挿入されていました。ドラマでも筋はほとんど原作と同じなのに,見事にミス・マープルの探偵物語になっていました。
(挿絵は,Amazonのホームページより。)
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