ロドリゲス・オットレンギの「決定的証拠」
ロドリゲス・オットレンギは,アメリカのアメリカの歯科医師で,探偵小説を書いていました。歯科治療に関する専門書も出版しており,そっちの方が本業でしょう。「決定的証拠(Final Proof or the Value of Evidence)」は1898年(明治31年)に出版された短編集です。
この中で主人公として登場するのは,プロの私立探偵のバーンズと,大金持ちで宝石の収集家,バーンズの友人で素人探偵のミッチェルの2人です。この二人が,ある時は競い合い,ある時は協力して事件を解決します。
冒頭の「不死鳥殺人」は長めの短編で,死亡して火葬したはずの男の死体が,川から引き上げられるという不思議な事件が扱われています。この作品では,バーンズ探偵が捜査活動を行い,ミッチェルのところに事件の話を持ち込み,ミッチェルが解決します。こう書くと,ミッチェルが安楽椅子探偵のように思われるかもしれませんが,そういうわけではありません。作品によっては,バーンズが解決し,ミッチェルはバーンズの話を聞くだけという場合もあります。逆にミッチェルの行動が描かれ,バーンズはそれを見守るだけという作品もあります。
「ミッシングリング」という作品は,この短編集の中では特異な作品です。ちょっと殊能将之の「黒い仏」に似た味があります。「黒い仏」は,SFのベストテンに選ばれたりしており,ことによったら「ミッシングリング」も,そんなベストテンに選ばれるかもしれません。
「決定的証拠」に収められた11作品は,シャーロック・ホームズの時代に書かれたものですが,それぞれ機知に富んでいて,なかなか楽しめました。後の時代の推理小説に比べると,推理小説と言えるのかという面もあるかもしれませんが,少なくともこの先どう展開していくのだろうという興味で読ませる作品集です。
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