アーサー・B・リーヴの「エレインの災難」
「エレインの災難」には,"ケネディー教授の冒険より" という副題がついています。先日紹介した「無言の弾丸」と同じ,アーサー・B・リーヴのケネディー教授の活躍を描くシリーズの5冊目の本で,1915年に出版されたものだそうです。「無言の弾丸」と同じく,Kindle版ヒラヤマ探偵文庫で読みました。
当時の連作映画の脚本のノベライズ版だという事で,全編,"拳骨" という殺人も辞さない泥棒とそれを捕まえようとするケネディー教授の活躍を描く連作短編集です。大人向けと子供向けの違いはあるものの,今やはりkindleで読んでいる江戸川乱歩の「少年探偵団」もののようなノリの作品で,推理小説ではなく,冒険活劇,冒険サスペンスといったものです。"拳骨" という悪党は,決して殺人は犯さない怪人二十面相と違って,宝石を盗むときは必ず殺人を犯すという悪党です。エレインというのは,最初の短編で殺される大金持ちのドッジ氏の令嬢で,ケネディー教授と一緒に全編に登場して,毎回 "拳骨" からひどい目にあわされるヒロインです。
この連作集の最大の謎は,"拳骨" の正体は誰かという事です。それは最後の短編で明らかにされますが,表の顔は最初から登場している人物です。往年の連作映画の雰囲気が味わえる連作集で,ハラハラドキドキは推理小説のそれとは違いますが,それなりに面白く読めました。
この悪党の名前 "拳骨" というのは,拳骨の絵を署名代わりに残すことからきていて,名前としては何だか奇妙ですが,巻末の訳者解説によれば,日本語に最初に翻訳された本の名前が「探偵小説拳骨」といい,大正3年に出版されたそうです。大正5年には「拳骨上下」が出版され,その後の大正時代の翻訳版も "拳骨" の名前を使っていて,現代訳の本書も,それに倣ったという事でしょう。原語(英語)では何というのでしょうね。"Fist" とでもいうのでしょうか? 「フィスト」と表現されていたら違和感はないのでしょうが,あえて大正時代に敬意を表して本書でも "拳骨" と呼ぶのでしょう。
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