全聾の作曲家としてテレビなどに取り上げられていた佐村河内 守氏のゴーストライター騒動には驚きました。
まあゴーストライターを使うこのようなケースはありがちな事だと思います。ビートルズの楽曲は,Lennon-McCartney作品として発表されていますが,親友同士の若いときからの取り決めで,作詞・作曲を夫々単独で行っても両者の名前で発表していました。フェラガモ氏やサンローラン氏が,全て自身でデザインしているとは誰も思っていないでしょう。よくてイメージをデザイナーに伝えるだけ,せいぜいデザイナーの作品にOKを出すだけだと思います。
今回の協業も,そんな形,佐村河内氏はイメージを伝えるだけ,実際に作曲したのは新垣 隆氏だったという事です。公表されている佐村河内氏の新垣氏に対する指示書は,かなり本気で作っているようです。しかし,この指示書を複数の作曲家に渡した場合,各人違う曲ができるだろうなと思いますから,やはり新垣氏が作曲したという事になるんでしょうね。
クラッシックの過去の作曲家の作品で,昔の曲から発想したという作品はたくさんあります。リヒャルト・シュトラウスは,交響幻想曲「イタリア」にイタリア民謡だと思って取り入れた「フニクリフニクラ」の曲が,ベスビオス山へのケーブルカーのCM曲だったのを知って,演奏する毎に著作権料を作曲者に支払っていた話は有名です。そんな事を考えると,新垣氏がリヒャルト・シュトラウスのような立場で,佐村河内 のイメージを取り込んだという事かなと思います。その場合の作曲者はやはり新垣氏なのです。
ゴーストライター使用は普通にあり得るとしても,今回の場合罪なのは,佐村河内氏が全聾の作曲家として自身を売り出してしまったという事でしょう。ある意味,超人的な才能をアピールし,人々は感動して,それによってCDが売れ,コンサートに人が集まり,高橋選手はそれをソチ五輪のショートプログラムに採用した。
人々の善意を裏切り,今回の事で迷惑を被っている人がいるのです。ここまで広がってしまうと,その罪は重いと言わざるを得ません。高橋選手のショートプログラムは,時間的にもうこの曲を使って演技せざるを得ない情況になっています。しかしJASRACは,当然の事ですが「著作権者がはっきりするまで,この楽曲の使用を保留する」と言っています。これは何とかして欲しいですね。著作権者は新垣氏か佐村河内氏のどちらか,または双方で,他にはあり得ず,両者共高橋選手には楽曲を使って欲しいという意向があるという事ですから,このまま使えないではJASRACだけが悪者というイメージになってしまいますよ。まあ,JASRACに対してそんな思いをさせてしまうというのは,そもそも佐村河内氏の罪の一つなのですが・・・・・。
---------<追 伸>------------------------------------
その後,3月7日,佐村河内氏が記者会見を開きました。それを見ると,「むしろ開かなかった方がよかったのではないか」と思える様な会見でした。
そもそも佐村河内氏の最大の罪,自身の全聾を最大限に売名行為・金儲けに利用しただけではなく,,義手のバイオリン少女とか,被災して母親をなくした東北の少女とか,原爆被災者とか,人々の同情を買いそうな人に自ら近づき,他人が作曲した曲を利用して自身の売名行為につなげ,金儲けにつなげた事,つまり人々の善意をもてあそんだ罪については,全く謝罪の言葉がありませんでした。
この人には,自分自身の最大の罪が分かっているとは思えません。
本当の作曲者である新垣氏が「何回ももうヤメよう」と言ったのは嘘だから訴える,妻の母親が何回も電話をかけたと言ったのは嘘だから訴えるなど,些末な事をあげつらって「訴える」などと言っていて,本当にこの人はわかっていないひとなんだなという事を印象づけました。
耳が聞こえないという事についても,まだ本当の事を言っていないという印象で,もう融けてなくなってしまったプライドのかすかなカケラをかき集めたような会見で,印象が悪い事おびただしく,正直とは正反対の印象しか持ち得ない会見でした。
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