2023/01/30

森博嗣Gシリーズ5作目は,「η(イータ)なのに夢のよう」

Mori-hiroshi-ita 5件の首つり自殺事件。はじめは,常識はずれの神社境内の12mもの高さの木の上で首をつっていました。「ηなのに夢のよう」という絵馬が残されていました。2件目は池の中の小島で,そして3件目は,西之園萌絵の友人,反町愛の自宅マンションのベランダで首をつっていました。どれも自殺としか思えない状況でした。普通自殺とは考えられない特異な場所を選んでいることを除けば・・・。
 という事で,普通の推理小説なら,その特異な場所でどのように自殺したのか,そんな場所を選んだ訳は?というのが最大の謎興味になります。しかしこの作品では,最後まで読んでもそれらの回答は明確には与えられません。最後まで読んでも,えっ,これでおわり?という感じなのです。
 今回は,萌絵の愛犬トーマの老衰死の事を含めて,「死とは?」「萌絵の両親を奪った飛行機事故の真相は?」「萌絵の東京移動をはじめとする様々な転換」を描いた外伝的な作品だと思います。ミステリーとしてはぎゃふんという作品ですが,結局内容的には盛りだくさんな作品だったと言えるでしょう。
 山吹,加部谷ら,Gシリーズの中心人物はとりあえず脇にどいて,Vシリーズの瀬在丸紅子,保呂草,などなどが登場し,結局ミステリーとしての言及は,紅子が担当するという事になっています。
 そういえば,ηという文字は首つりの形ですね。

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2023/01/24

森博嗣Gシリーズ「λ(ラムダ)に歯がない」

Mori-hiroshi-ramuda Gシリーズ4作を読んだ後,Vシリーズの長編「赤緑黒白」とVシリーズの短編2本を読んで,またGシリーズに戻りました。Gシリーズの第5作「λ(ラムダ)に歯がない」です。
 おなじみの山吹草月,海月及介,それに国枝桃子助教授ら,国枝研究室の面々がT建設の研究所で共同研究の実験を行っていた時,向かいの構造関係の実験棟がにわかに騒がしくなり,何か事件が起こったことを知ります。たまたま現場に来ていた顔なじみの近藤刑事から話を聞き,西之園萌絵に山吹が電話しました。「近藤さんが捨て台詞のようにおっしゃったんですけど・・・,密室だって」。密室という話を聞き,たまたま萌絵の家を訪れていた加部谷恵美と共に萌絵が研究所にやってきます。
 研究所の構造実験所では4人の男性が密室の中で射殺されていました。研究所の関係者ではなく,研究所の人々のだれもが知らない4人でした。しかも,全員が歯をすべて抜かれていました。歯は死後に抜かれたらしいのですが・・・。
 終わりになって,懐かしい保呂草探偵(泥棒?www)が登場し,彼からもたらされた情報により事件の構造は明らかになります。そこら辺は安直な感じがします。今回の事件は,過去の事件が生み出したもので,ちょっと松本清張風です。しかし密室の謎は残ったままです。
 結局密室の謎は海月及介が解きます。しかし彼が解く前に,犀川助教授が真相を見抜き,警察に話をしていました。この密室トリックは建設会社の実験場ならではのもので,ちょっと面白かったです。

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2023/01/21

森博嗣の短編「ぶるぶる人形にうってつけの夜」

Buruburu-doll 先日の「刀之津診療所の怪」の時に,「ぶるぶる人形にうってつけの夜」を再読したくなったと書いたのですが,やっぱり再度読みました。「今夜はパラシュート博物館へ」という短編集に収録されている短篇作品です。
 三人称視点で書かれた作品ですが,Vシリーズでおなじみの国立N大学に通う医学生,小鳥遊練無の見聞に沿っで書かれています。
 練無が大学の図書館に入った時,掲示板にレポート用紙がセロテープで貼りつけてあって,そこに「ぶるぶる人形を追跡する会(一般参加を歓迎)」と書いてあるのを目にします。それを眺めているとき,後ろから「あなたもこれに?」と声を掛けられます。振り向くと会ったことのない女性が立っていました。「私の事はフランソワって呼んでちょうだい」というこの女性,練無をぶるぶる人形を追跡する会に誘います。このぶるぶる人形については,昨夜,練無が阿漕荘の自室にいる時,向かいの部屋の香具山紫子がやって来て,今度の土曜日の夜,ぶるぶる人形を見る会に一緒に参加して欲しいと頼まれていました。
 ぶるぶる人形とは,紫子によれば「大学院生の女の人が,ノイローゼで自殺して,その直前に残した遺書がびりびりになり人形の形になって,それがその人の死んでいる場所を知らせたとかいう話」だそうです。練無が通うN大学に現れるという20~40㎝紙の人形で,夜,校内のあちこちで踊りを踊り,最後には燃えて燃えがらになってしまうのだといいます。
 やがて「追跡する会」当日,フランソワと名乗る女性や紫子も参加する中で,会の主催者が案内する校内の3カ所の建物のうち,最後の三番目の建物,工学部4号館でぶるぶる人形を目撃する事になります。予想に違い,上から吊って紙を躍らせているのではない様です。
 この短編は,人形のからくりとフランソワが誰なのかが謎となって読者を引っ張ります。女性は「フランソワ」とも「西之園」とも名乗りますが,萌絵ではありえません。わざわざ三つも建物の配置図を掲載して,萌絵を暗示していたのですが,西之園萌絵なら練無より年下のはずですからね。そしてそれから何十年か後,「刀之津診療所の怪」での,練無の「懐かしいなあ。お茶でも淹れましょう。フランソワ」という発言になるわけですwww。
 S&MシリーズとVシリーズの交錯する物語でした。

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2023/01/18

森博嗣の「刀之津診療所の怪」

Mori-hiroshi-retasufurai 先日,森博嗣の長編推理小説「赤緑黒白」を紹介した時に,短編「刀之津診療所の怪」(短編集「レタスフライ」所収)にも言及しました。そしてそれを読みたくなったといったのですが,どうせkindleの中に入っているのだからという事で,久方ぶりでもう一度読みました。
 この作品では,診療所の医師の名前も,診療所を月に一回程度訪れる男性?の名前も,一切明かされていません。しかし,Vシリーズを読んだ読者なら,この50代くらいの医師は小鳥遊練無であり,男性?は香具山紫子であると推測できます。特に医師については,その最後のセリフ,診療所を訪れた西之園萌絵の叔母である佐々木睦子に対して「懐かしいなあ。お茶でも淹れましょう。フランソワ」と呼んでいることから,小鳥遊練無で確定です(フランソワについては,短編集「今夜はパラシュート博物館へ」所収の「ぶるぶる人形にうってつけの夜」を参照)。その佐々木睦子が作中で男性?の事を「では,グライダーを飛ばしに来る人ってあの方だったのね?」といっており,それを小鳥遊練無が否定いていないのです。つまり「ぶるぶる人形にうってつけの夜」で知り合った佐々木睦子が練無との関係で「あの方だったのね? そう,背の高いボーイッシュな感じだったわ。」という人というと,香具山紫子しかありえないでしょう。
 小鳥遊練無が小島の診療所の医師になることについては,「赤緑黒白」に伏線がありました。瀬在丸紅子の「小鳥遊君,どうしてお医者さんになりたいの?」という問に対して,練無は「なんとなく。ほら,離れ小島に行ったりするんだよ」と答え,「ああ,そういうイメージか」と紅子が応えるという会話がありました。白刀島という静岡県の小島の診療所に赴任することは,練無の夢が実現したという事なんですね。
 さて,男性?が香具山紫子だったとして,作中,練無は加部谷恵美の「ここへやってくる背の高い黒い服を着た人っていうのは,どなたなんですか?」という問いに対して,紫子の事を「僕の身内」と言っているのです。この身内というのが "妻" という意味かどうかが気になるところです。おそらくこれは "妻" という事でいいと思いますね。先日「赤緑黒白」の紹介の時に書いたように,「赤緑黒白」のプロローグで保呂草が小鳥遊練無と香具山紫子の関係に言及し,「お互いに自分が持っていることに気づいていない磁石,その微かな引力を部外者の私が感じている」といっているのです。これはつまり,練無と紫子がこの時から微かな引力(磁力)で引かれあっていたという事でしょう。その結果の「刀之津診療所の怪」というわけです。妻か,少なくともパートナーですね。
 紫子さんは,Vシリーズの長編「夢,出会い,魔性」の最後に,男装の女流探偵,赤柳初朗としきりに連絡を取っているという描写があり,そもそも刑事か探偵になりたいと言っていましたから,たぶん赤柳初朗にならって,男装の探偵になっているのかと想像します。「刀之津診療所の怪」のなかで,佐々木睦子が練無に「どうしてこの島で一緒に住まないの?」と尋ねたとき,練無は「彼女は仕事があるんですよ」と答えています。島ではできない仕事=探偵の仕事ということなのだと推測します。
 こうなってくると,「ぶるぶる人形にうってつけの夜」についても再読したくなってきました。

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2023/01/16

次の森博嗣作品は・・・「赤緑黒白」

Red-green-blackwhite これまで,森博嗣のGシリーズを4作読んできて,次は5作目「λ(ラムダ)に歯がない」という事になるのですが,ここらへんで以前読んだVシリーズの最終作,「赤緑黒白」を再読することにしました。VシリーズはGシリーズより前の出来事になるわけです。実際には,VシリーズとGシリーズの間にS&Mシリーズの出来事が入るわけで,森博嗣先生の3シリーズのうち,Vシリーズは最も古い出来事にあたります。そのシリーズの最終作が「赤緑黒白」です。「赤緑黒白」には,Gシリーズに出てくるMNIという組織が出てくるので,Gシリーズを中断して,この作品を再読することにしたのです。
 この作品では,4つの連続殺人事件が起こります。第一の殺人事件では赤井という人物がマンションの駐車場で射殺され,その死体は全身を真っ赤色に塗装されていました。第二の事件では,田口美登里がマンションの部屋で扼殺死体になって発見されますが,緑色に塗装されていました。第三の事件では,黒田実が公園で射殺死体となって発見され,黒田は黒色に塗装されていました。そして第四の事件では,山本百合がマンションで射殺され,彼女は白色で塗装されていました。最後の事件の被害者には,名前に白の字は入っていません。どうやらこのマンションに呼ばれたのは白鳥こずえというモデルの女性で,当日体調が悪くなり山本が代わりにマンションに派遣されたという事がわかります。
 実は第一の事件,赤井が射殺された事件の後,探偵の保呂草潤平は第二の田口美登里から「フィアンセである赤井を殺したのは推理小説家の帆山美零だから,彼女を捕まえてほしい」という依頼を受けていました・・・。
 この作品,すでに読んだことがあったのですが,初読の時には,最後にVシリーズとS&Mシリーズの関係について衝撃の事実の開示があり,そっちの方の印象が強くて,肝心のお話の方は全くおぼえていませんでした。殺人事件の犯人に関しても,ラストにどんでん返し的な展開があります。
 Vシリーズの登場人物は,没落前の瀬在丸家の屋敷である桜鳴六画邸の敷地内にある無言亭という小屋で一人息子のへっくんと執事の根来機千瑛と共に暮らしている瀬在丸紅子と,その近くの阿漕荘というアパートに住む探偵にして便利屋の保呂草潤平,大学生の小鳥遊練無,香具山紫子。彼らが遭遇した事件を,瀬在丸紅子が解決する物語がVシリーズです。どの作品にも,プロローグとして保呂草潤平のモノローグがついていますが,本文は三人称で,保呂草が書いたという体を取っています。
 再読して気づいたのですが,「赤緑黒白」のプロローグで保呂草が小鳥遊練無と香具山紫子の関係に言及しています。「お互いに自分が持っていることに気づいていない磁石,その微かな引力を部外者の私が感じている」「その分析の正しさを確認したのは,ずっと後の事だ」といっているのです。これだけ読んだのでは何の事かちんぷんかんぷんですが,「刀之津診療所の怪」という短編(短編集「レタスフライ」所収)の事だと今ではわかります。「刀之津診療所の怪」は2004年5月にメフィスト誌発表,「赤緑黒白」は2002年9月に講談社ノベルで出版されていますから,このプロローグを初出で読んでも,この部分は何のことかわからないわけです。少なくとも2年後の「刀之津診療所の怪」を読むまではわかりません。そこら辺が森博嗣ですね。
 私の知人で,四季シリーズをVシリーズの前に読んだ人がいるのですが,「赤緑黒白」最大のショッキングなラストを驚けなかったのです。すでに四季シリーズ「秋」でネタバレされてしまっていたわけです。危ない危ない。森博嗣作品は各所に爆弾を仕込んであるので,短編を含めて発表順に読むべきですね。短編「刀之津診療所の怪」は,Vシリーズを何作か読んだ後で読まなければ何にも面白くないし,作品の意味さえわからないでしょう。しかし前述のように,「赤緑黒白」のプロローグを読んでも,その後に発表された「刀之津診療所の怪」を読まなければわからないという事がありますからね。前述のように「そこら辺が森博嗣ですね」としか言えませんwww。
 なんだか「刀之津診療所の怪」も再読したくなってきました。

   ところで,この作品では,ラストで保呂草潤平が阿漕荘を去ることが示されています。「さらば保呂草」という事ですが,Vシリーズの第八作「捩れ屋敷の利鈍」では保呂草潤平が瀬在丸紅子に会って,捩れ屋敷事件の事を語っています。「捩れ屋敷の利鈍」事件,今考えれば,「赤緑黒白」を含む他のVシリーズの事件よりもずいぶん後で起こった事件なんですね。何しろ「捩れ屋敷の利鈍」には,大人になった犀川創平や西之園萌絵が登場するわけで,Vシリーズと同じ年代の話ではありえません。Vシリーズの他の作品の事件より25年以上後の事件が「捩れ屋敷の利鈍」でしょう。瀬在丸紅子と保呂草潤平は,保呂草が阿漕荘を出た後も連絡を取っていたという事ですね。

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2023/01/11

森博嗣Gシリーズの次は ε

Mori-hiroshi-swearing-ip 森博嗣Gシリーズ9冊合本版(電子書籍)の4作目は,「ε(イプシロン)に誓って」です。
 別々の用事で東京へ行ったおなじみ,山吹早月と加部谷恵美が,たまたま同じ高速バスで那古野へ帰ることになります。おりしも降雪でバスターミナルに着くのが遅れた二人,もうバスは出て行ってしまったものと乗車をあきらめていたら,バスの方も雪で出発が遅れて,二人は予定通り高速バスに乗車することができました。
 そのバスがハイジャックされてしまいます。都内に複数の爆弾を仕掛けた組織の者にバスが乗っ取られますが,バスはとりあえず那古野へ向かうようです。
 今回は,バスの中に山吹と加部谷の二人,那古野の山吹の留守宅に他のメンバー,西之園萌絵,赤柳初朗,海月及介,国枝桃子助教授が集まり,テレビ中継を見守ります。犀川助教授は会議で東京に滞在し,萌絵や警察と連絡を取っています。
 皆がテレビ中継を見守る中で,バスはトンネルを通過した後火災を起こし,なんと崖から転落してしまいます。しかし・・・。
 最後まで読んでみれば,大トリックがあり,あっと驚く結末ですが,結末に至る間までは謎があるわけではなく,だた山吹と加部谷をはじめとする乗客たちの運命はこの先どうなるのだろうというサスペンスに終始し,ミステリーとしての謎興味はきわめて希薄です。最後に明かされる大トリックを楽しみに,読み進んでください。

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2023/01/09

森博嗣Gシリーズの次は τ(ちょっとネタバレ)

Tau-morihiroshi 森博嗣Gシリーズ9冊合本版(電子書籍)の3作目は,「τになるまで待って」です。
 愛知県の北の端の森の中に建つ「伽羅離館」が舞台です。ここは,一部に人気のある若い超能力者,神居静哉の別荘です。そこへ新聞記者とカメラマンの女性,富沢健太と鈴木倫子,そしていつもの赤柳初朗,可部谷恵美,山吹早月,海月及介の4人,総勢6人が登田昭一というこの館を管理している不動産業者に連れられてやってきます。富沢と鈴木は "超能力者" の取材のため,おなじみの4人は,この館の図書室にあるというMNI(真賀田四季との関連が疑われる宗教的な信者を集めた組織)関連資料を閲覧するためにこの館にやってきました。赤柳初朗が膨大な資料を調査するために,大学生3人を雇ったのです。
 推理小説としては完全な館もの,その館の中での密室殺人をテーマにしています。館は車を降りてから1時間も森の中を歩かなければ到達しないし,屋外ではかろうじて携帯電話が通じますが,屋内では通じません。全ての館の窓は太っていない人ひとりがやっと出入りできる程小さく,しかもステンドグラスのように色付きのガラスが嵌っていて外が見えず,さらにすべての窓がはめ殺しです。そんな館から外へ出る路は表口と裏口の頑丈な鉄のドアしかありませんが,その2つのドアがどういうわけか開閉できなくなってしまいます。巻頭には,建築が専門の大学生3人が描いたという館の平面図が挿入されています。
 そんな館の中で行われた神居静哉による超能力の披露。可部谷恵美が被験者になり,彼女が神居に連れられてある部屋に入り,しばらくして他の来館者達も部屋に入ったのですが,可部谷恵美と後で入った面々は話はできるのにお互いの姿は見えません。それが超能力として示されます。それが第一の謎。
 もう一つが神居静哉がその部屋で首を絞められて殺害されます。その部屋へのドアは一つしかなく,それは来館者によって見張られていました。
 そんな状態で起こった密室殺人事件ですが,外部へ連絡するために来館者達が協力して窓を壊し,そこから電気コードを垂らして携帯電話のアンテナとし,それで警察や西之園萌絵に電話を掛けます。そして死体収容のためにやってきた消防のヘリに乗って,萌絵と犀川助教授がやって来て,5分間でなぞ解きをしてそのヘリに乗ってまた帰っていきます。なにしろヘリが帰るまでの5分間でなぞ解きをしなければ,車で到達できるところまで1時間も歩かなければならないというので,あわただしいなぞ解きでした。
 まあ,はっきり言って,それほどの密室トリックではありませんwww。超能力の謎解きの方が面白かったかな。まあ,巻頭の平面図を見て,変なドア配置だとは思ったのですよね。ただ常識的には別のトリックを考えてしまいます。それが隠れ蓑になって,真相には至りませんでした。
 ただし,犯人や犯行動機は,最後まで読んでもわかりません。この作品の中では明かされていないのです。Gシリーズの他の作品で明かされるのかはわかりません。まあ犯人は,漠然とした "組織" でいいのかもしれませんし,犯行時は館の外部にいたはずの不動産業者の登田なのかもしれないし,動機は神居が不要になったからというだけなのかもしれません。

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2023/01/05

Gシリーズ2作目は「θは遊んでくれたよ」

Theta 先日書いたように,森博嗣Gシリーズ9作合本版(電子書籍)を読み始め,2作目にやってきました。2作目は「θは遊んでくれたよ」というタイトルです。
 はじめ,ニートであった男性が25歳の誕生日にマンションから転落死しました。状況からみると自殺に見えるのですが,額にΘのギリシア文字が描かれていたのが特異な状況でした。
 次はそれから半月後,やはり自殺としか思えない状況で看護師の女性が病院の屋上から飛び降りたらしい事件が発生,今度は手のひらにΘが描かれていました。シータは,どちらも口紅で描かれていす。
 その後も,国枝助教授の同期の男性とか,全部で5人の男女が飛び降り自殺に見える状況で発見されます。なぜ "一連の自殺" という事になるのかというと,すべてどこかにΘのメークが口紅で書いてあったからです。
 問題は,その5件の自殺者間になんの関連性も見いだせなかった事です。
 Θの意味については,最初の自殺者である男性のパソコンから,「theta(Θ)」という名のついたチャットソフトが発見されます。AIがチャットの相手をすると思われるソフトです。さらに4人目の自殺者である女性のパソコン画面で,Θを描いた壁紙を見たと話す人もいました。ただ,手掛かりはそこで途切れ,他の自殺者とAIソフトとの関係は見いだせません。チャットソフトの素性についても,警察の捜査でもわかりませんでした。
 Θを口紅で描いた意味は? 自殺者たちは本当に自殺なのか? 事件性は? それが謎として読者を引っ張ります。しかしまあ,Gシリーズでは,事件の謎よりもレギュラーメンバーによる推理談議が面白い。今回はいつものメンバーに加え,被害者の家族に依頼された探偵の赤柳初朗と西野園萌絵の友人の女性,警察から口紅の分析を依頼された研修医,反町愛が加わります。そして最後には海月及介がいつもの重い口を開いて謎を解きます。
 海月が謎を解くのはGシリーズの定番ですが,今作では海月より前に犀川助教授が事件の真相を見抜き,それを萌絵に語っていたことを萌絵が反町愛に打ち明けました。何も知らない様子で推理談議に参加していた近藤刑事は,実は犀川助教授の推理を知っていたのです。チャットソフトについては最後まで分からずしまいですが,わけのわからないコンピューターシステムというと,森博嗣作品では,あの人,真賀田四季の存在を感じます。しかしこの作品に出てくることはありませんでした。

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2023/01/03

久しぶりの森博嗣作品--------「φは壊れたね」

Photo_20230102200601 久しぶりに森博嗣の作品を読みました。Gシリーズの第一作,「φは壊れたね」という長編です。Gシリーズは,作品名に新型コロナのようにギリシア語のアルファベットがついているシリーズです。シリーズ名のGは,もちろんギリシアの頭文字からきています。Amazonで検索したら,Gシリーズ9作の合本版という電子書籍が出ていたので,それを購入しました。Gシリーズはそもそも12作からなるシリーズとされており,その中の9作が前期作品,その後の3作は後期作品で登場人物も違うらしいです。しかも最終作「ωの悲劇」はまだ出版されていません。今回購入した合本版は,前期作品9作を収録したものというわけですね。
 このシリーズのレギュラーメンバーは,C大学の学生(大学院生を含む)である山吹早月,海月及介,加部谷恵美,それにS&NシリーズではN大学の犀川研究室の助手として登場し,今はC大学の助教授になっている国枝桃子,N大学の大学院生である西之園萌絵,それに犀川創平助教授(この作品にはほんの一瞬登場するだけだが)です。
 私が好きなVシリーズは,阿漕荘に住んでいる面々と阿漕荘の近くに住む瀬在丸紅子とへっくん親子が登場する作品群ですが,その雰囲気そのままに大学チームが研究室で,ファミレスで,推理を繰り広げます。まるで部活の乗りですね。
 事件そのものは,二人のC芸大生,戸川優と白金瑞穂が友人町田弘司のマンションを訪れてみると,町田弘司が両手を広げたまま縛られ,空中にYの字形につるされ,胸を刺されて死んでいたというものです。部屋の出口となりえる戸口や窓はすべて施錠され,鍵は複製が作りにくい電子錠,しかも戸口を開けたらその内側に積み上げられていた箱が外に向かって崩れ落ち,そこから犯人は出ていないことがわかります。おまけに念の入ったことに,部屋には固定カメラ取り付けられ,室内の様子がビデオテープに録画・録音されていました。被害者は角度的に画像では見えないものの,被害者の後ろから撮影されており,発見者である2名が部屋の鍵を引出しに入れるなど,何ら不審なことは行っていないのが証明されます。この密室はどのように解かれるのか,犯人は誰か,それらが謎として読者を引っ張っていきます。もちろん,部活の乗りの心地よさと共に・・・。
 山吹早月,海月及介,加部谷恵美の名前に見覚えがあると思ったら,私が以前読んだ短編集「レタスフライ」の中の「刀之津診療所の怪」という楽しい短編にに出てきたメンバーだったのですね。

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2022/12/02

はやみねかおる著「奇譚ルーム」

Kitan-room はやみねかおるの作品は,名探偵夢水清志郎シリーズ少年探偵 虹北恭助シリーズなど,これまでもこのブログで紹介してきました。主にジュブナイルミステリーの作家です。
 ここで紹介する「奇譚ルーム」は,ストレートにミステリーというには変化球すぎるかもしれません。登場人物が自分の知っている奇譚を披露していく構成から,各お話は奇譚といえるホラーやファンタジー的な話といえるでしょう。しかし後述する謎もあるし,エンディングまで読めば,ミステリーだったと思えるのです。
 舞台はゴーグルをかけて参加する,「ルーム」というVR的なSNSです。そこに物語の語り手が招待されるところから話が始まります。そこには,シロクマやゾウなど,動物のぬいぐるみをアバターとした10人の参加者が集まっていました。「ルーム」は主宰者が独自のテーマを持ったルームを開設し,そこに参加者を招待できるシステムです。主人公が招待されたのは,「奇譚ルーム」という名のルームでした。
 主宰者は10人の参加者の中にいるはずですが,それが誰(どのアバター)かはわかりません。主宰者は「マーダラー(殺人者)」と名乗って神の位置から奇譚ルームに参加してきます。しかも参加者を実際に殺す事ができると宣言し,参加者の中の一人を消し(リアルな殺人?),別の参加者をリアル世界で骨折させしまいます(ルームで殺された少年は,後で調べると,それらしい交通事故の死亡者がいた事がわかる)。マーダラーは,参加者が毎週このSNSに集まり,奇譚といえる話を披露することを要求します。その奇譚がつまらない,またはマーダラーの興味をひかなければ,語り手を殺すと言います。そうして毎週1~2回の奇譚ルームで,一人,また一人と,奇譚の話し手が消されていきます。
 ルーム内から消された人は,マーダラーが言うように実際に殺害されているのか,マーダラーは参加者のだれなのか,マーダラーが奇譚ルームを作った目的は何か,謎が深まります。
 そしてエンディング,サプライズエンディングといえるでしょう。ルームで消された参加者は,現実世界でも消されていることがわかるのですが,一種のハッピーエンドといっていいでしょう。主宰者がルームを作った目的,参加者を消す意味,それぞれ納得できるものです。まあジュブナイルで,一人一人が消されていくというのは穏やかではありませんが,最後まで読めば納得できますよ。
 リアル世界でもルームの参加者が消されていくのにハッピーエンディングとはどういう事かと思うかもしれませんが,それが成立するこの特殊なシチュエーションを考え出した作者に拍手を送りたいと思います。
 この「奇譚ルーム」には,2020年に出版された続編があります。「夏休みルーム」という作品で,「奇譚ルーム」の最後に誕生した「探偵ルーム」で,探偵助手になった主人公が遭遇する事件の数々を描くものの様です。「奇譚ルーム」よりはミステリーしているようで読みたいのですが,電子書籍版は今のところないのです。

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