2022/02/16

京極夏彦「今昔百鬼拾遺 鬼」

Kyougoku-oni 長編「姑獲鳥の夏」からはじまる京極夏彦の百鬼夜行シリーズのスピンオフ的な作品としては,「百器徒然袋」の雨と風という短編集,それと「今昔百鬼拾遺」の鬼,河童,天狗の長編3作品があります。前者は薔薇十字探偵社が受けた事件を榎木津探偵がかき回し,中禅寺秋彦が事件を収めるシリーズ。だからより本編長編に近いシリーズです。それに対して,後者は分量的には短い(京極夏彦にしては)長編ですが,中禅寺明彦の妹である科学雑誌編集者の中禅寺敦子と,「絡新婦の理」の登場人物であり女子高生の呉美由紀が事件を解き,呉美由紀が最後に犯行関係者を戒めるというシリーズです。
 その中の「鬼」。昭和28年9月~昭和29年2月にかけて,世田谷区駒澤野球場周辺で日本刀を使った連続通り魔事件が発生。7人目の被害者である片倉ハル子の友人,呉美由紀が「絡新婦の理」事件で知り合った中禅寺秋彦の妹,中禅寺敦子に相談して,この二人が事件の解明に乗り出すという物語です。
 犯人の見込みが二転三転し,今昔百鬼拾遺三作品のなかではフーダニットに関するサプライズエンディングがあって,3作品の中では最も推理小説らしい作品だと思います。
 今昔百鬼拾遺シリーズ3作品は,事情があって講談社,新潮社,角川書店からそれぞれ発売されており,後に3冊が合本された「今昔百鬼拾遺 月」が講談社から発行されています。内容はほぼ分割発売された3冊と同じものなので(ほぼというのは,月では多少直しがある様です)お間違えの無い様。

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2021/12/16

チェスタトンの読み方

Poet-lunatician いま,チェスタトンの「詩人と狂人たち」という短編集を読んでいます。随分前,多分高校生のころ,紙で読んだ本を今電子書籍で読んでいます。チェスタトンを読んでいて,時々浮気して他の本を読み,またチェスタトンに戻る。短編集だからできる事ですね。
 チェスタトンは難しい,というか読みにくいと言われています。私は中学校の時,あかね書房の少年少女世界推理文学全集の一冊,「ふしぎな足音」から入ったので,あまり読みにくいというイメージがつかなかったといえるのが幸いしたと言えると思います。やはり大人の本で読むと読みにくい。だから時々浮気して他の本を読むのです。
 あまり細部の描写を気にしないで読み飛ばす事が,チェスタトンの小説に耐えるコツだと思います。結構風景描写がきつい。その描写される景色を想像して読んでいくと,自分の想像と矛盾する文章があらわれ,「あれれ,難しい,読みにくい」ということになります。気にしないで読み飛ばすのが読むコツです。本来チェスタトンを読み飛ばすなどというと誰かに怒られるような気がしますが,そこは読み飛ばすのが読み続けるコツだと思います。

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2021/12/03

日本政府,在留資格保持者の再入国も停止へ 南アなど10カ国対象

Colonagreen 日本政府は,南アなど10カ国を対象に,在留資格保持者の再入国も停止されるという報道がありました。さらにその後,国際便の日本到着便の新規予約をずべて停止するよう,航空会社に要請しました。後者の新規予約の対策は,今後変更される可能性があります。帰国はできるが帰国したら何日か行動制限されるという事になると思います。
 オミクロン株の状況を見れば,このような水際対策は致し方ないと思います。年末の来日が多くなる時期ということもあります。だからこそ,海外に居る邦人への影響も大きいのですが,いつまでも行われる対策ではありません。
 水際対策に完璧に成功した国はなく,水際対策は時間稼ぎです。オミクロン株の調査研究の時間稼ぎとして,国内に入ってきてからの対策構築のために,時間稼ぎとし水際対策は存在しているわけです。そういう意味で,このような対策を取る事は致し方ないと思います。

 国内飲食店のグループ利用人数や利用時間など,利用規制緩和がおこなわれていて,これを再規制強化しないのかという意見もありますが,オミクロン株の市中感染が起こっているわけではないので,その必要は今のところないでしょう。今後,オミクロン株の市中感染が広がれば,飲食店への対応も,どうなるかわかりませんね。

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2021/11/29

フレンチクルーラー

French-cruller 写真は何の変哲もない,ミスタードーナツ店の定番,フレンチクルーラーです。
 なぜ今フレンチクルーラーなのかというと,今,ヘンリー・スレッサーの「快盗ルビー・マーチンスン」という本を読んでいるからです。この作品は,かつて小泉今日子と真田広之の映画「怪盗ルビイ」に翻案されました。随分昔,紙の本で読んでいた作品ですが,今月になって電子書籍化されたので,電子書籍で再度読んでいるのです。
 紙の本は「ハヤカワ・ミステリ文庫」の一冊でしたが,ミステリというより犯罪コメディーです。語り手であるハイスクールを出たばかりの「ぼく」の23歳の従兄,経理士のルビーが発想するさまざまな盗みを実行に移し,大抵の場合この2人が損をするという話が綴られている短編集です。「ぼく」が大袈裟に紹介するルビーの犯罪と哀れな結末がコメディーになっています。
 この2人が犯罪の相談をする場所が,ニューヨークブロードウェイのキャフェテリヤで,いつも2人でフレンチクルーラーを食べながら奇想天外な盗みを計画します。
 フレンチクルーラーというのは,シュー生地を使ったドーナツで,曲がったという意味のクルーラーのとおり,記事をねじりながら手作りされるのが本当ですが,ミスタードーナツでは,曲げた形を形押しして作っているらしいですね。本来は,機械では作れない手作りドーナツだそうです。

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2021/08/31

ブルーバックス「フォッサマグナ 日本列島を分断する巨大地溝の正体」

Fossamagna 講談社の自然科学や科学技術の話題を一般読者向けに解説・啓蒙している新書シリーズ,ブルーバックス。私が初めて読んだのは,都築卓司教授の「四次元の世界」でしたが,今回読んだのは「フォッサマグナ 日本列島を分断する巨大地溝の正体」です。
 新潟県の糸魚川と静岡県を結ぶ大地溝帯「フォッサマグナ」。・・・と私は思っていましたが,実はその線はフォッサマグナの西側の線でしかなく,東側の線がはっきりしておらず,いまださまざまな説があるという事を知りませんでした。まあ考えてみれば,大地溝帯というからには,大きな溝,渓谷であるわけで,西側の線と東側の線があるのは当然ということでしょう。
 さらに,その成り立ちが北側と南側が異なっている事など,私が知らなかった事がたくさん載っていました。
 秋には,フォッサマグナを体験できるジオパークに行きたくなりました。

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2021/06/16

Kindleの暗転

Kindle-ebook いつも不思議に思っている事の一つに,「Kindle PaperWhiteの暗転」というのがあります。
 ページめくりの時に,Kindleが一瞬暗転する(白黒が転換し,一瞬ページ全体が黒くなる。この時,通常黒で表示される文字部分は白くなる。つまり,一瞬黒地に白文字という画面になる)という現象のことです。
 SNSなどで,この暗転を気にしている人が意外と多いのです。この暗転は,設定によってページごとに起こすこともできますし,数ページごとに起こすこともできます。KindlePaperWhiteは電子ペーパーを使っている以上,仕組みとして起こる問題で,避けられないことです。私は以前このブログにも書いた様に,楽天の電子書籍端末KOBOも持っていますが,電子ペーパーを使っている以上KOBOでも起こります。これを避けたかったら電子ペーパー式ではない液晶式のKindleなりスマホのKindleアプリなりを使う事になります。
 私には全く気にならない「ページめくり時の暗転」を気にする人が多いことは,KOBOの念の入った暗転設定から気づいた事です。Kindleでの設定は,暗転をページめくり毎に起こすか,起こさないかという二択だけですが,KOBOでは,何ページごとに暗転を起こすかという選択肢があります。私にしてみれば,そんなことは適当にやってくれていいので,なぜ何ページごとに暗転を起こすかなど選択する必要があるのだろうと思いました。そこでネットで「Kindleの暗転」をキーワードとしてググってみて,結構な人がこの暗転を "悪いこと" だと認識していることに気づいたのです。
 電子書籍をお勧めするサイトなどでも,この暗転を問題点の一つに挙げてあったり,この暗転のために「目眩が起こる」なとという人もいて,病院の目眩外来の受診をお勧めしたくなります。
 私などはむしろ,「トイレに行きたい,でも本が佳境に入っている」などという時,「次の暗転が起こったら本を諦めてトイレに行こう」などと,暗転を楽しく利用しているんですけどねwww。

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2021/06/03

ローソンが本屋併設店を展開

Convenience_20210602000101 コンビニのローソンが,本屋を併設したコンビニ「LAWSONマチの本屋さん」を展開すると発表しました。
 私は知りませんでしたが,ローソンは地域の書店とのコラボで本屋併設コンビニ店を全国で21店舗展開しており,その成績がいいのでローソン単独で本屋併設店を展開することを決めたとの事。
 かねてより私は,本屋さんは,ネット書店や電子書籍のショーウィンドになるような大規模書店しか生き残れないと思っていたのですが,コンビニ併設というのは,可能性があると思います。別のものを買いに行って,隣に本もあるのでぶらっと立ち寄って「本や雑誌も買う」というスタイルです。
 このような形で,本屋さんが街で生き残っていくのは結構な事だと思います。自然な本へのアクセスが可能になります。

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2021/03/23

米澤穂信「いまさら翼といわれても」

Imasara-tsubasa 米澤穂信の古典部シリーズの短編集,「いまさら翼といわれても」を読みました。
 古典部シリーズで一番有名なのは,第一作長編「氷菓」でしょうね。「氷菓」が有名なのは,テレビアニメにも実写映画にもなっているからで,本を読まない層にも知られているという意味で有名だと思うのです。
 ある地方都市にある神山高校の「古典部」という廃部寸前の部活の,主として2年生部員4人の周りや自身に起きたちょっとした事件を解決していく日常系の推理小説です。神山高校は進学校で,そこの生徒はそれなりに頭も良く,推理力もあり,捜査力もあり,また進学校の生徒はそれなりの屈託もあり,4人中の誰かの身に起こった事件を別の部員が解決することもあります。
 このシリーズは,現在のところ長編4作品,短編集が本書を含めて2冊あります。その中の最新の本,短編集が本書です。収録作品は6作品,「いまさら翼といわれても」という書名は,最後の短編の表題でもあります。どの作品も,それなりに謎があります。
 例えば・・・,生徒会長選挙で,投票総数が生徒数より1クラス分多かった謎,動機の謎より常に監視されていたのにどうしてそんな事ができたのかという方法の謎が主体です。例えば,高校の話ではなく卒業した中学校の卒業制作の鏡の額縁の秘密,その完成した額縁を見て,額縁のデザイナーが号泣したのはなぜかという謎です。例えば,ヘリコプターが特に好きというわけではないある先生が,ある日ヘリコプターの音が教室に聞こえてくるたびに授業を中断し,窓から首を出してヘリコプターを見上げたのはなぜかという謎。例えば,合唱でソロを歌うことになっていた生徒が,合唱コンサートの出番6時間前に突然いなくなり,その生徒がどこへいったのか,なぜいなくなったのかを推理していく。・・・などなど。
 小さな謎かもしれませんが「なぜ?」という謎があり,その謎を高校生(主として折木奉太郎くん)が解いていくのは,なかなか面白いですね。

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2021/03/10

クリスティーの「死との約束」

Appointment-with-death 最近フジテレビで放送された野村萬斎主演の「死との約束」は,アガサ・クリスティー原作の同名推理小説を,舞台を日本に変えて三谷幸喜が翻案したものです。原作はヨルダンの死海とアカバ湾の間の渓谷にあるペトラ遺跡が舞台,野村萬斎版では和歌山県の熊野古道が舞台です。この原作本を私は高校生の時に読んでおり,今では被害者と犯人だけ覚えているという状態でした。
 原作に関してはそんな状態でしたが,「死との約束」については,数年前にデヴィッド・スーシェが名探偵ポアロを演じたテレビドラマを見ています。野村萬斎が名探偵ポアロならぬ勝呂を演じた今回のドラマとスーシェがポアロを演じた英国のドラマとは,内容がずいぶん違います。気になったので家にあった原作を探し出し,パラパラとめくってみました。そうしたら,今回の野村萬斎版こそ,原作をかなり忠実にドラマ化したものだった事がわかりました。もちろん長い原作を2時間ドラマにしているわけですから,全く同じというわけではありませんが,クリスティーの原作をかなり尊重した作りになっています。
 野村萬斎版=原作では,被害者であるボイントン夫人の夫は死亡しています。それに対して英国ドラマ版では,被害者の夫であるボイントン卿が遺跡発掘の責任者として登場しています。そして英国ドラマ版のボイントン夫人は株で儲ける会社持ちの大金持ち。野村萬斎版=原作では,女性刑務所の元看守。亡き夫は刑務所長でした。野村萬斎版=原作では,ウェストホルム卿夫人は代議士,英国ドラマ版では旅行作家。登場人物の設定,動機,殺害方法さえ異なり,したがってポワロの推理も違います。
 英国ドラマ版は,"家族を金と恐怖で支配するボイントン夫人が被害者である事" と "犯人の設定" が原作と同じだけで,クリスティーの「死との約束」とは別物のドラマとなっていました。なぜこれほど徹底的に改変したのか,不可解に思うほどです。
 「死との約束」には,もう一つ,映画版というのがあります。ピーター・ユスティノフがポアロを演じた「死海殺人事件」です。私はこの作品も見ているのですが,すっかり忘れてしまっています。こちらはどういう内容だったのか,もう一度見てみたいと思います。

 さて,ここでネタバレ的な記述をします。「オリエント急行の殺人」と「死との約束」のネタバレです。両作品を読んだ事,映画やドラマを見た事のない方は,ここからはこのブログを読むべきではありません。

---<ネタバレあり>----------------------
 今までそう思ったことがなかったのですが,今回の野村萬斎=原作のドラマを見て,「死との約束」はクリスティーの代表作の一つ,「オリエント急行の殺人」の真逆の設定なんだと思いました。 
 「オリエント急行」では,列車のツアー客は,被害者と関係ない偶然乗り合わせた人たちで,被害者にはなんら他意のない人たちだと最初は思われていました。しかしやがてツアー客全員が被害者と関係があった事がわかります。一方「死との約束」では,ツアー客は被害者の家族であって,当然被害者と関係のある人達です。しかも被害者は家族を金とわがままで恐怖支配する,家族にとって「死ねばいい」とか「殺したい」と思っている存在です。そして「オリエント急行」では,ツアー客全員が犯人でした。「死との約束」では,ツアー客全員に殺害動機があるにもかかわらず,ツアー客全員が犯人ではありませんでした。
 確かに真逆ですよね。この「オリエント急行」と「死との約束」の関係(真逆の設定である事)は,世間ではあまり言われていないと思います。少なくとも私は,そんな指摘に出会った事がありません。

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2020/11/21

横溝正史の「三つ首塔」(ややネタバレ注意)

Mitsukubi-tou 横溝正史作品で文庫本になっているものは全て過去に読んでいるはずなので,「三つ首塔」も読んでいます。しかし記憶にあるのは,三つ首塔にたどり着いて感慨に耽る主人公たちの光景から始まる冒頭の印象のみです。この作品をもう一度読みました。
 初読当時は毎月のように次々と横溝作品の文庫本が発売され,流れ作業のようにそれらを読んでいった時代で,一作々々をじっくり読んでいくような状態ではありませんでした。今回じっくり読んでみると,やはり面白い作品でした。
 中学生の時に両親を病気で亡くした宮本音禰は,母の姉の嫁ぎ先,大学文学部長の職にある上杉誠也教授の家で令嬢としてなに不自由なくらしています。その音禰の運命が転がり出したのは,アメリカにいる遠縁の親戚が,弁護士を通じて100億円の遺産を音禰に譲りたいという連絡をしてきたことによります。遺産を譲る条件は,高頭俊作という青年と結婚する事。ある意味理不尽な条件です。
 音禰自身がこの話に乗るのかどうか迷っている時,たまたま上杉文学部長の還暦のお祝い会が開かれます。そこで遭遇する3件の殺人事件。余興のアクロバットダンサーの女性,高頭俊作を探すために上杉家に雇われた探偵,さらに,その探偵が見つけた高頭俊作自身が毒殺されたのです。その場で気を失って倒れて,別室を与えられて寝ている音禰の元に現れた高頭俊作の従兄弟,高頭五郎と名乗った青年。音禰はその青年に手籠にされてしまいます。
 やがてその高頭五郎は,弁護士側の探偵,堀井敬三と名乗って再び音禰の前に現れます。高頭俊作が殺されたため,100億円の財産は富豪の日本人の遠縁の者で分けることになり,堀井は遠縁の者を探すために雇われた探偵でした。その富豪の親戚が一堂に集まる会に,弁護士とともに堀井敬三が出席していたのです。親戚とその周りの者たちは,終戦直後の不安定な時代にあって曰くありげな人物揃い。
 やがて,その親戚とその周り者が続けて殺される事件が起こっていく・・・。
 物語は音禰の一人称で語られます(中盤で,この小説は音禰が綴った事件記録であることがわかります)が,警察サイドの等々力警部と金田一耕助のチームに疑われているのではないかという音禰の焦躁,恐れながらも関係を断てない高頭五郎に悩む音禰。結局その後,音禰は高頭五郎と共に警察サイドや殺人者からの逃避行を繰り広げることになります。
 やがて発見される三つ首塔。なぜか高頭五郎はその塔に執着している様子。音禰も実は子供の頃その塔を見た記憶がある。その地での冒険。
 この作品,横溝先生自身はあまり評価しておらず,その理由の一つは「本格推理小説ではない」というものだったようです。謎としては,連続殺人事件の犯人が最後まで隠されており,しかもフーダニットとしてサプライズエンディングといっていい結末ですが,そんな謎よりも一人称で語られる音禰をめぐるサスペンスが半端ではなく,高頭五郎は音禰の敵なのか味方なのか,いいやつなのか悪いやつなのかを含めて,そんなサスペンスの方が気になって,本格推理小説として読めません。
 最後,探偵が関係者を集めて「さて・・・」というのが本格推理小説だとすれば,この作品では三つ首塔の古井戸に落とされて絶体絶命の音禰と五郎,それを助けるのは音禰が敵として恐れていた金田一耕助。その時の金田一耕助のカッコ良さは,横溝先生の本格推理小説作品では味わえません。
 横溝先生としては,雑誌連載の終了の都合で最後が十分に書き込めず,それも不満の元になっているらしいのですが,最後に付け加えられた「大団円」の章でもわかる通り,ハッピーエンドで終わります。最初に音禰が五郎に手籠にされた件を含めて,ハッピーエンドとなります。
 ややエロチックな部分があり,初読の頃の高校生としては "ちょっと・・・” というところがあったのですが,今となっては大したことはありません。実に面白いミステリーでした。

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