2023/11/28

江戸川乱歩の少年探偵団シリーズ

Kaijinnijyumenso 以前,芦辺拓の「怪人対名探偵」を読んで,その勢いで,電子書籍kindleで発売されていた江戸川乱歩の少年探偵団シリーズ34冊合本版を買ってしまった(unlimitedで0円でしたが)という話をこのブログに書きました
 このシリーズ,なにしろ34冊もあるのですが,まだ4冊分しか読んでいません。その中には,小学1年生や2年性向けの怪人二十面相も含まれています。あとの2冊は,「怪人二十面相」と「少年探偵団」。乱歩最初の子供向け長編と2番目の長編です。
 いやいや,面白いですね。怪人二十面相が,なぜ変装の名人という設定なのか,よく分かります。明智小五郎と小林少年も変装して,誰の正体が誰なのか,それが読んでいく興味の源になっています。

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2023/10/29

芦辺拓の「怪人対名探偵」を読了

Kaijintaimeitantei 芦辺拓の「怪人対名探偵」を読了しました。
 はじめ,小学6年生の三谷駿という少年が一つ目の怪人に誘拐されます。さらにその従姉である村下玲美という高1の少女が,同様の異形の怪人に頬を切られる事件が起こります。村下玲美は,友人の勧めに従って,弁護士名探偵 森江春策に解決を依頼します。そこで,怪人対名探偵の枠組みができました。
 犯行は次第にエスカレートし,連続殺人事件,それもかなり凄惨な殺人事件が起こります。アドバルーンでの絞殺,時計塔の短針,長針を利用した磔刑,廃業した遊園地のパノラマ館での監禁など,往年の少年探偵団に出てくるような方法で,往年よりはるかに残虐な殺人事件が展開していきます。
 本作は,「~した。」調で,普通の現代小説のような語りの部分と,「~しました。」調で,往年の少年もの探偵小説のような部分が交互に展開します。前者の名探偵は森江春策,助手は新島ともか,警察は滝儀一警部というおなじみのトリオに対して,後者の名探偵は花筐(はながたみ)城太郎,助手は有明雅彦少年,警察は滝大之進警部。この二様並列がどのように展開するのかと思ったら,最後には見事にどちらも現実の世界に合体しました。さすが,「探偵小説」でした。
 本作に触発されて,Kindleで,江戸川乱歩の少年探偵団シリーズ34冊合本版を買ってしまいました(unlimitedで0円でしたが)。

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2023/10/17

芦辺拓の「大鞠家殺人事件」読了

Ohmarike-satujinjiken 芦辺拓の推理小説「大鞠家殺人事件」を読了しました。
 舞台は商都大阪の商人文化の中心である船場。化粧品や薬品を製造・販売する大鞠百薬館を経営する大鞠家。時は戦前。この小説は,まず船場の商家の丁寧な説明から入り,そこの人々,経営者一家,番頭や丁稚など奉公人が紹介され,さらにその長男,千太郎が難波駅前にあった混雑する大パノラマ館で神隠しに遭う事実が描かれます。長男がいなくなり,妹が奉公人の中から婿を取って大鞠家は続いていく。
 そんな大鞠家の次の世代の長男は大鞠家を嫌い,医者,陸軍軍医になる。その新しい長男に嫁いだ軍人の娘中久世美禰子。軍医の夫はすぐ上海に単身赴任。美禰子は慣れない船場の商家で暮らすことになります。剣道をたしなむ美禰子は,いざという時には凛とした風情で,家内にもあこがれの眼でみる信奉者もできる。
 そんな大鞠家で起こる殺人事件(実は殺人に至らない傷害事件だったが),さらに時を経ずして発見される大鞠家当主(奉公人だった婿)の首つり死体。その検視にやってきた監察医と助手の女医。その女医西ナツ子は,なんと美禰子の女学生時代の友人でした。
 本当はここで気づかなければいけなかったのですが,私は気づきませんでした。美禰子と西ナツ子は,実は他の作品でおなじみだったのです。
 さらに起こる殺人事件,樽に押し込められ,薬品製造用のアルコールで溺死していた家付き娘である当主の妻,風呂の中で殺害された男,天井裏に隠されてたレコードと蓄音機は殺人事件に関係あるのか?
 やがてアメリカとの開戦,大阪大空襲,戦後の焼け野原の中で,生き残った美禰子や西ナツ子,そうして私がやっと気づいた名探偵の登場,中久世美禰子と西ナツ子と言ったら「少女探偵は帝都を駆ける」事件の時の登場人物であり,そこに登場する名探偵が平田鶴子です。鶴子に美禰子とナツ子が語るこれまでの事件の経緯,そして鶴子による怒涛の謎とき。
 これまで芦辺作品を読んでおらず,「大鞠家」が初めての芦辺作品だったとしたら,鶴子登場とその怒涛の謎解きを唐突だと感じる事でしょう。他の作品があっての「大鞠家」での謎解きです(別に謎の解明には,他の作品を読む必要はありませんが,どうしても平田鶴子の登場と謎ときには唐突感は生じますね。「少女探偵・・・」を読んでいれば,むしろ鶴子が出てこない方がおかしいと感じます)。
 船場の商家を舞台にした教養小説的な雰囲気もあり,戦争の悲惨さも描かれ,それでいて戦争があったからこそ因果応報的に悪だくみをしていた者たちが亡くなり,今回の連続殺人の犯人も病院で亡くなる。それを看取った三人の老女,もちろん美禰子とナツ子と鶴子ですね。彼らの最後の言葉,「さあ・・・お茶でもします? 女学生時代もその後もしばらくは,そんな事さえ不自由やったはらいせも込めて?」。
 いやはや面白い推理小説でした。これだから芦辺拓はやめられない。久しぶりに,翌日は寝不足でしたよ。

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2023/07/30

H・H・ホームズの「9人の偽聖者の密室」

Nine-times-nine 先日紹介した,国書刊行会から出ている「奇想天外の本棚」の中の一冊,「9人の偽聖者の密室」を読みました。作者,H・H・ホームズは,推理小説評論家としてのアントニー・バウチャー という名前の方が有名です。わたしも,バウチャーなら,江戸川乱歩の評論集「幻影城」でおなじみの名前でした。そのバウチャーが,密室の巨匠,ジョン・ディクスン・カーへの献辞付きで書いた長編推理小説がこの作品です。もちろん密室殺人事件がとりあげられています。
 作家のマット・ダンカン青年が,大学時代の友人,グレゴリー・ランドールと偶然出会い,ランドールの婚約者が尼僧になるというという話を聞いて,それをやめる様説得する役を買って出るところから話が始まります。友人の婚約者はコンチャ・ハリガンという娘で,マットがハリガン家を訪れた時,彼女はカトリックの尼僧であるシスター・アーシュラと話し合いをしている最中でした。
 マットは,シスター・アーシュラがコンチャを尼僧にすべく話し合っていると思って血相を変えて止めようとするところに,シスター・アーシュラがコンチャとの話し合いをを終えて部屋から出てきて言ったのは,「ようやく説得できましたわ。あの子は修道女になるのをあきらめました。」という言葉でした。シスター・アーシュラは,マットの予想に反して,コンチャが尼僧になるのを止めるべく話し合いをしていたのでした。名探偵,シスター・アーシュラの颯爽とした登場です。
 マットはコンチャの父,ウルフ・ハリガンに気に入られ,彼の仕事を手伝う事になります。ウルフは宗教詐欺の研究家で,目下のところアハスヴェルという男が主催する「光の子ら」という新興宗教の裏の闇を暴こうとしていました。
 やがて,そのウルフが自室でアハスヴェルに射殺されるという事件が起こります。黄色い特徴的な服装の男,アハスヴェルがウルフの部屋の中に居て,部屋の外からマットとウルフの兄,弁護士のR・ジョーゼフ・ハリガンの二人がそれを目撃していました。しかし部屋に押し入ってみると,ウルフの射殺死体があるだけで,外から見た犯人のアハスヴェルは,影も形もありませんでした。部屋は完全な密室で,事件は完全な密室殺人事件でした。
 マットと捜査班のテレンス・マーシャル警部補は,ジョン・ディクスン・カーの「三つの棺」の中の「密室講義」を参照しつつ,密室を解明しようとします。ところが今回の殺人事件は,「密室講義」のどのケースにも当てはまらない密室事件でした。
 本作品の最大の興味は,犯人は誰かという事と共に,この密室殺人がいかにして行われたのかという事なのですが,それにしてはトリックがちょっと弱いかなと思います。シスター・アーシュラによるラストの謎解きに向けて,興味津々盛り上がってきたのに,解明されてみると,密室トリックがちょっとあっけなかったという感想を持ちました。つまらなくはないけれど,ちょっと肩透かしという感じは否めませんでした。ネタバレになってしまうので題名をはっきり書くことはできませんが,江戸川乱歩が絶賛したカーのある作品に似たトリックが使われています。さらに,高木彬光のある長編のトリックも思い浮かびます。本作では,密室トリックの細かい部分はともかく,カーのある作品に似た密室トリックの大まかな構図は,途中でわかってしまうという事もあります。
 何はともあれ,この作品の原題名「ナイン・タイムズ・ナイン」という名は,密室好きの本格推理小説好きは結構聞いたことのあるもので,機会があれば読んでみたいと日頃思っていた作品でしたので,それが「奇想天外の本棚」シリーズで読めた事には満足しました。

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2023/07/26

クリスチアナ・ブランドの「濃霧は危険」

Noumuhakiken  昨日,国書刊行会から発行されている「奇想天外の本棚」シリーズを紹介しましたが,そのシリーズの一冊,クリスチアナ・ブランドの「濃霧は危険」を読みました。そもそも国書刊行会の本は高いのですが,「濃霧は危険」は電子書籍でも2024円(紙の本は2530円)なのですが,これまでにたまっていたポイントを使用して102円で購入しました。
 クリスチアナ・ブランドといえば,「はなれわざ」とか「ジェゼベルの死 」といった本格派推理小説作品が有名ですが,「濃霧は危険」は少年少女向けのジュブナイル作品です。
 ダートムーアの旧家,レデヴン館の相続人ビル・レデヴン少年が,両親の海外旅行中のある日,3か月前に来たばかりの運転手によって,乗っていた自家用ロールスロイスから荒野の真っただ中で乱暴に引き降ろされるところから話が始まります。ビル少年は,会ったことのない同年代の少女の家へ向かう途中でした・・・。
 ダートムーアの刑務所から脱走した「ナイフ」と称する20歳の危険な青年,レデヴン家から盗まれた家宝の宝石,ビル少年が荒野をさまよっているときに出会ったパッチという少年,宝石泥棒から追いかけられる二人,宝石泥棒の仲間割れ,最後に回収される伏線。クリスチアナ・ブランド作だからと言って,推理小説と思うなかれ,冒険小説といった方がいいでしょう。  ジュブナイルの悪党にしては,この宝石泥棒一味は結構過激なことをやります。ビル少年とパッチは,サンドイッチに仕込んだ毒で殺される寸前までいきます。
 ダートムーアやウェールズの自然の中の冒険は,英国伝統のジュブナイル冒険小説と考えれば,なかなか面白かったです。それにしても,ブランドの本格推理小説,「はなれわざ」とか「ジェゼベルの死 」を電子書籍で手に入れたいです。

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2023/07/25

奇想天外の本棚

Book230724 「生ける屍の死」や「日本殺人事件」の作者として知られる推理作家の山口雅也氏が企画・総指揮を行っている「奇想天外の本棚」というシリーズがあります。国書刊行会から出版されているシリーズで,そのコンセプトは「噂には聞くが、様々な理由で、通人でも読んでいる人が少ない作品、あるいは本邦未紹介作品の数々をご紹介します。ジャンルについても、ミステリ、SF、ホラーから普通文学、戯曲まで」というものです。つまり,名前は知っているが手に入りずらい,または日本語訳されていなかった推理小説(とは限らないが)をそろえたシリーズで,私にとってもなかなか興味深い作品がそろっているようです。
 Amazon書店の中で検索してみると,「奇想天外の本棚」のなかに,クレイトン・ロースンの「首のない女」という作品が載っています。クレイトン・ロースンの作品は,長編「帽子から飛び出した死」や短編「天外消失」などを読んだことがあり,長編「首のない女」が手に入るなら切実に手に入れたいと思いました。Amazon書店で見ると,「奇想天外の本棚」シリーズは電子書籍化されているらしいので,当然「首のない女」も電子書籍で出ていると思ったのです。ところが,この作品は電子書籍化されていないのですね。調べてみると,「奇想天外の本棚」の中で,3冊だけは電子書籍化されていないことがわかりました。
 さらに調べてみると,「奇想天外の本棚」シリーズは,はじめ原書房で出版され,3作目が出たところで中絶してしまったらしいのです。その後,国書刊行会がこのシリーズの出版を引き継ぎ,12冊が出版されました。つまり,原書房の3冊は電子書籍化されておらず,国書刊行会の12冊は全部電子書籍化されている,そんな状況である事がわかりました。
 「首のない女」の紙の本は原書房から入手できるのですが,私は最近,圧倒的に便利な電子書籍以外では本を読まなくなりました。「奇想天外の本棚」シリーズは中絶するわ,電子書籍は出さないわ,原書房という出版社は,とんでもない出版社だと思いますwww。

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2023/06/15

鯨統一郎の「金閣寺は燃えているか」

Kinkakuji-kujira230614 鯨統一郎の「金閣寺は燃えているか」を読みました。鯨統一郎の作品として,「邪馬台国はどこですか?」シリーズの一つであり,「文豪たちの怪しい宴」シリーズでもあります。「邪馬台国・・・」は,歴史上の事件に新解釈を行うシリーズですが,「文豪たちの怪しい宴」シリーズは,過去の文学作品を新解釈するシリーズです。
 バー「スリーバレー」で,文学の権威である大学教授,曽根原とバーテンのミサキが文学談義を行い,そこに後からやってくる宮田が文学作品に新解釈を加えるというパターン。曽根原目線で語られる作品です。
 この「金閣寺・・・」は「文豪たち・・・」シリーズの2作目で,今回は,川端康成『雪国』,田山花袋『蒲団』,梶井基次郎『檸檬』,三島由紀夫『金閣寺』に新解釈を加えます。
 テーマは面白く,新解釈も面白いのですが,テンポが悪いのか,一作一作が長すぎるのか,あまりグッと来ないのは残念です。

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2023/06/05

仁木悦子の「冷えきった街」を再読

Hiekittamachi 仁木悦子の推理小説は,何十年も前にほとんどすべて読んでいるはずです。しかし今では作品名のみ覚えているばかり。そんな仁木悦子作品が,この度創元推理文庫で出版されました。「冷えきった街/緋の記憶」という作品集で,「日本ハードボイルド全集」というシリーズの第4巻目が,仁木悦子に割り当てられているのです。
 仁木悦子がハードボイルド? 私の感覚では,仁木悦子の推理小説は本格推理小説だと思っていたので,ちょっと意外でした。処女作「猫は知っていた」以来の仁木兄妹が活躍し,「日本のクリスティー」と称される仁木悦子作品は,本格推理小説以外の何物でもありませんでした。しかし,この「日本ハードボイルド全集4」に集められているのは,私立探偵三影潤を主人公とする作品です。もちろん三影潤が活躍する作品も過去に読んでおり,しかしその作品がハードボイルドだと思ったことはありませんでした。三影潤の代表作(唯一の長編作品)「冷えきった街」でさえ,密室が出てくるのですから。事件が起こった屋敷の図も,2枚挿入されていて,それで普通ハードボイルドとは思いませんよね。
 そんな「冷えきった街」を再読しました。しかし気分はまったく「初めて読む作品」です。今回読んだのは創元推理文庫版ではなく,講談社文庫版の電子書籍でした。創元の「日本ハードボイルド全集」は,電子書籍版が出ていなかったからです。
 読み終わって,たしかに一種のおとぎ話である本格推理小説とは違う雰囲気は感じました。非常にソフトなハードボイルドですね。まあ,ハードボイルドというより,きわめて本格派寄りの社会派,松本清張に近いような雰囲気を感じました。
 高校から短大,大学,さらに花嫁学校的なレディースクールを運営している堅岡清太郎の家族に,様々な事件が起こっていました。高校生の次男が体格のいい男に襲われてけがをした。次に学校の運営に携わっている長男がガス中毒に倒れた。そしてまだ小さい長女を誘拐するという手紙が届いた。それで,桐影秘密探偵社に依頼があったのです。学校経営に影響するからというので,堅岡清太郎は警察に通報するつもりはないという事でした。
 三影が調査するうちに,家族には評判が悪い次男の高校生,冬樹と心を通わせることができました。堅岡清太郎の子供たち3人は,すべて母親が違います。次男冬樹の母親は心臓発作で10年以上前に亡くなっています。「もし生きていたら・・・」という冬樹に対して三影は,「もしという事はありえない。『もし・・・』の世界の自分は,自分ではない。今の自分こそ唯一の自分なのだから,『もし・・・』を考えても意味がない。」と語ります(この通りの言葉が作品に出てくるのではありません。作品中の文章の意味を汲むと,こういう会話になるのです)。人は「もしあの時,こうだったら」と考えがちですが,三影の言葉は本当ですね。「もし」を考えても意味がないのです。
 事件はさらに,長男の毒殺事件,冬樹の自動車事故へと続きます。冬樹は崖の上から突き落とされて走ってきたトラックの前に投げ出された模様です。話の途中で,三影の調査は冬樹の母親が死亡した真相に迫ります。そしてラスト。やはり本格推理小説ではないのかと思わせるように,驚愕の幕を閉じます。
 傑作といっていいでしょうね。結局今回の事件は,冬樹の母親が亡くなった事件を核とする事件でした。
 三影潤の探偵譚は,この作品以外は短編ですが,短編集「緋の記憶」を早速電子書籍で購入しました。仁木悦子作品は,結構電子書籍化していて,しかも安価なので,これからも楽しめそうです。

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2023/05/08

ゴールデンウィークの最終日は雨

Geneijyo-ranpo ゴールデンウィーク最終日の5月7日(日),東京地方は一日中雨でした。
 結局散歩にも行かず,一日中読書三昧。
 何回目かに読んでいるのは,江戸川乱歩の「幻影城」と「続・幻影城」。うちのどこかに文庫版もあるはずですが,今回はKindle unlimitedで,端末にダウンロードして読みました。
 乱歩が雑誌などに発表した随筆や評論を集めたものです。以前このブログで紹介した,坂口安吾の「不連続殺人事件」を絶賛する随筆など,面白いですね。カーの「帽子収集狂事件」など,2度読んでも乱歩が言うほどの傑作とは思えず,もう一回読みたくなりました。

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2023/04/05

殊能将之の「鏡の中は日曜日」,ふたたび

Kagaminonaka 先日紹介した殊能将之の「ハサミ男」以来,殊能将之ブームが私の中に起こってしまい,引き続き「鏡の中は日曜日」を再読しました。
 この作品は,以前このブログで紹介しています。2016年7月の記事ですから,なんと7年ぶりに読んだことになります。
 その結果,2016年の紹介記事は,我ながら妥当な記事だったと思います。前の記事でも言及していますが,この作品は紹介するのが極めて困難な作品で,まったくネタバレなしに紹介することは不可能だろうという思われます。なにしろ,読者に対して様々な勘違いを起こさせることを身上とする作品で,叙述トリックを駆使した作品だからです。
 とにかく,第3章で,第1章,第2章での勘違いが次々と覆されていく(正されていく)快感に酔いしれる作品です。まあ,この殊能作品は,「黒い仏」に次ぐ,"本格推理小説とは言えない作品" ですね。

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