2021/08/31

ブルーバックス「フォッサマグナ 日本列島を分断する巨大地溝の正体」

Fossamagna 講談社の自然科学や科学技術の話題を一般読者向けに解説・啓蒙している新書シリーズ,ブルーバックス。私が初めて読んだのは,都築卓司教授の「四次元の世界」でしたが,今回読んだのは「フォッサマグナ 日本列島を分断する巨大地溝の正体」です。
 新潟県の糸魚川と静岡県を結ぶ大地溝帯「フォッサマグナ」。・・・と私は思っていましたが,実はその線はフォッサマグナの西側の線でしかなく,東側の線がはっきりしておらず,いまださまざまな説があるという事を知りませんでした。まあ考えてみれば,大地溝帯というからには,大きな溝,渓谷であるわけで,西側の線と東側の線があるのは当然ということでしょう。
 さらに,その成り立ちが北側と南側が異なっている事など,私が知らなかった事がたくさん載っていました。
 秋には,フォッサマグナを体験できるジオパークに行きたくなりました。

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2021/06/16

Kindleの暗転

Kindle-ebook いつも不思議に思っている事の一つに,「Kindle PaperWhiteの暗転」というのがあります。
 ページめくりの時に,Kindleが一瞬暗転する(白黒が転換し,一瞬ページ全体が黒くなる。この時,通常黒で表示される文字部分は白くなる。つまり,一瞬黒地に白文字という画面になる)という現象のことです。
 SNSなどで,この暗転を気にしている人が意外と多いのです。この暗転は,設定によってページごとに起こすこともできますし,数ページごとに起こすこともできます。KindlePaperWhiteは電子ペーパーを使っている以上,仕組みとして起こる問題で,避けられないことです。私は以前このブログにも書いた様に,楽天の電子書籍端末KOBOも持っていますが,電子ペーパーを使っている以上KOBOでも起こります。これを避けたかったら電子ペーパー式ではない液晶式のKindleなりスマホのKindleアプリなりを使う事になります。
 私には全く気にならない「ページめくり時の暗転」を気にする人が多いことは,KOBOの念の入った暗転設定から気づいた事です。Kindleでの設定は,暗転をページめくり毎に起こすか,起こさないかという二択だけですが,KOBOでは,何ページごとに暗転を起こすかという選択肢があります。私にしてみれば,そんなことは適当にやってくれていいので,なぜ何ページごとに暗転を起こすかなど選択する必要があるのだろうと思いました。そこでネットで「Kindleの暗転」をキーワードとしてググってみて,結構な人がこの暗転を "悪いこと" だと認識していることに気づいたのです。
 電子書籍をお勧めするサイトなどでも,この暗転を問題点の一つに挙げてあったり,この暗転のために「目眩が起こる」なとという人もいて,病院の目眩外来の受診をお勧めしたくなります。
 私などはむしろ,「トイレに行きたい,でも本が佳境に入っている」などという時,「次の暗転が起こったら本を諦めてトイレに行こう」などと,暗転を楽しく利用しているんですけどねwww。

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2021/06/03

ローソンが本屋併設店を展開

Convenience_20210602000101 コンビニのローソンが,本屋を併設したコンビニ「LAWSONマチの本屋さん」を展開すると発表しました。
 私は知りませんでしたが,ローソンは地域の書店とのコラボで本屋併設コンビニ店を全国で21店舗展開しており,その成績がいいのでローソン単独で本屋併設店を展開することを決めたとの事。
 かねてより私は,本屋さんは,ネット書店や電子書籍のショーウィンドになるような大規模書店しか生き残れないと思っていたのですが,コンビニ併設というのは,可能性があると思います。別のものを買いに行って,隣に本もあるのでぶらっと立ち寄って「本や雑誌も買う」というスタイルです。
 このような形で,本屋さんが街で生き残っていくのは結構な事だと思います。自然な本へのアクセスが可能になります。

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2021/03/23

米澤穂信「いまさら翼といわれても」

Imasara-tsubasa 米澤穂信の古典部シリーズの短編集,「いまさら翼といわれても」を読みました。
 古典部シリーズで一番有名なのは,第一作長編「氷菓」でしょうね。「氷菓」が有名なのは,テレビアニメにも実写映画にもなっているからで,本を読まない層にも知られているという意味で有名だと思うのです。
 ある地方都市にある神山高校の「古典部」という廃部寸前の部活の,主として2年生部員4人の周りや自身に起きたちょっとした事件を解決していく日常系の推理小説です。神山高校は進学校で,そこの生徒はそれなりに頭も良く,推理力もあり,捜査力もあり,また進学校の生徒はそれなりの屈託もあり,4人中の誰かの身に起こった事件を別の部員が解決することもあります。
 このシリーズは,現在のところ長編4作品,短編集が本書を含めて2冊あります。その中の最新の本,短編集が本書です。収録作品は6作品,「いまさら翼といわれても」という書名は,最後の短編の表題でもあります。どの作品も,それなりに謎があります。
 例えば・・・,生徒会長選挙で,投票総数が生徒数より1クラス分多かった謎,動機の謎より常に監視されていたのにどうしてそんな事ができたのかという方法の謎が主体です。例えば,高校の話ではなく卒業した中学校の卒業制作の鏡の額縁の秘密,その完成した額縁を見て,額縁のデザイナーが号泣したのはなぜかという謎です。例えば,ヘリコプターが特に好きというわけではないある先生が,ある日ヘリコプターの音が教室に聞こえてくるたびに授業を中断し,窓から首を出してヘリコプターを見上げたのはなぜかという謎。例えば,合唱でソロを歌うことになっていた生徒が,合唱コンサートの出番6時間前に突然いなくなり,その生徒がどこへいったのか,なぜいなくなったのかを推理していく。・・・などなど。
 小さな謎かもしれませんが「なぜ?」という謎があり,その謎を高校生(主として折木奉太郎くん)が解いていくのは,なかなか面白いですね。

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2021/03/10

クリスティーの「死との約束」

Appointment-with-death 最近フジテレビで放送された野村萬斎主演の「死との約束」は,アガサ・クリスティー原作の同名推理小説を,舞台を日本に変えて三谷幸喜が翻案したものです。原作はヨルダンの死海とアカバ湾の間の渓谷にあるペトラ遺跡が舞台,野村萬斎版では和歌山県の熊野古道が舞台です。この原作本を私は高校生の時に読んでおり,今では被害者と犯人だけ覚えているという状態でした。
 原作に関してはそんな状態でしたが,「死との約束」については,数年前にデヴィッド・スーシェが名探偵ポアロを演じたテレビドラマを見ています。野村萬斎が名探偵ポアロならぬ勝呂を演じた今回のドラマとスーシェがポアロを演じた英国のドラマとは,内容がずいぶん違います。気になったので家にあった原作を探し出し,パラパラとめくってみました。そうしたら,今回の野村萬斎版こそ,原作をかなり忠実にドラマ化したものだった事がわかりました。もちろん長い原作を2時間ドラマにしているわけですから,全く同じというわけではありませんが,クリスティーの原作をかなり尊重した作りになっています。
 野村萬斎版=原作では,被害者であるボイントン夫人の夫は死亡しています。それに対して英国ドラマ版では,被害者の夫であるボイントン卿が遺跡発掘の責任者として登場しています。そして英国ドラマ版のボイントン夫人は株で儲ける会社持ちの大金持ち。野村萬斎版=原作では,女性刑務所の元看守。亡き夫は刑務所長でした。野村萬斎版=原作では,ウェストホルム卿夫人は代議士,英国ドラマ版では旅行作家。登場人物の設定,動機,殺害方法さえ異なり,したがってポワロの推理も違います。
 英国ドラマ版は,"家族を金と恐怖で支配するボイントン夫人が被害者である事" と "犯人の設定" が原作と同じだけで,クリスティーの「死との約束」とは別物のドラマとなっていました。なぜこれほど徹底的に改変したのか,不可解に思うほどです。
 「死との約束」には,もう一つ,映画版というのがあります。ピーター・ユスティノフがポアロを演じた「死海殺人事件」です。私はこの作品も見ているのですが,すっかり忘れてしまっています。こちらはどういう内容だったのか,もう一度見てみたいと思います。

 さて,ここでネタバレ的な記述をします。「オリエント急行の殺人」と「死との約束」のネタバレです。両作品を読んだ事,映画やドラマを見た事のない方は,ここからはこのブログを読むべきではありません。

---<ネタバレあり>----------------------
 今までそう思ったことがなかったのですが,今回の野村萬斎=原作のドラマを見て,「死との約束」はクリスティーの代表作の一つ,「オリエント急行の殺人」の真逆の設定なんだと思いました。 
 「オリエント急行」では,列車のツアー客は,被害者と関係ない偶然乗り合わせた人たちで,被害者にはなんら他意のない人たちだと最初は思われていました。しかしやがてツアー客全員が被害者と関係があった事がわかります。一方「死との約束」では,ツアー客は被害者の家族であって,当然被害者と関係のある人達です。しかも被害者は家族を金とわがままで恐怖支配する,家族にとって「死ねばいい」とか「殺したい」と思っている存在です。そして「オリエント急行」では,ツアー客全員が犯人でした。「死との約束」では,ツアー客全員に殺害動機があるにもかかわらず,ツアー客全員が犯人ではありませんでした。
 確かに真逆ですよね。この「オリエント急行」と「死との約束」の関係(真逆の設定である事)は,世間ではあまり言われていないと思います。少なくとも私は,そんな指摘に出会った事がありません。

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2020/11/21

横溝正史の「三つ首塔」(ややネタバレ注意)

Mitsukubi-tou 横溝正史作品で文庫本になっているものは全て過去に読んでいるはずなので,「三つ首塔」も読んでいます。しかし記憶にあるのは,三つ首塔にたどり着いて感慨に耽る主人公たちの光景から始まる冒頭の印象のみです。この作品をもう一度読みました。
 初読当時は毎月のように次々と横溝作品の文庫本が発売され,流れ作業のようにそれらを読んでいった時代で,一作々々をじっくり読んでいくような状態ではありませんでした。今回じっくり読んでみると,やはり面白い作品でした。
 中学生の時に両親を病気で亡くした宮本音禰は,母の姉の嫁ぎ先,大学文学部長の職にある上杉誠也教授の家で令嬢としてなに不自由なくらしています。その音禰の運命が転がり出したのは,アメリカにいる遠縁の親戚が,弁護士を通じて100億円の遺産を音禰に譲りたいという連絡をしてきたことによります。遺産を譲る条件は,高頭俊作という青年と結婚する事。ある意味理不尽な条件です。
 音禰自身がこの話に乗るのかどうか迷っている時,たまたま上杉文学部長の還暦のお祝い会が開かれます。そこで遭遇する3件の殺人事件。余興のアクロバットダンサーの女性,高頭俊作を探すために上杉家に雇われた探偵,さらに,その探偵が見つけた高頭俊作自身が毒殺されたのです。その場で気を失って倒れて,別室を与えられて寝ている音禰の元に現れた高頭俊作の従兄弟,高頭五郎と名乗った青年。音禰はその青年に手籠にされてしまいます。
 やがてその高頭五郎は,弁護士側の探偵,堀井敬三と名乗って再び音禰の前に現れます。高頭俊作が殺されたため,100億円の財産は富豪の日本人の遠縁の者で分けることになり,堀井は遠縁の者を探すために雇われた探偵でした。その富豪の親戚が一堂に集まる会に,弁護士とともに堀井敬三が出席していたのです。親戚とその周りの者たちは,終戦直後の不安定な時代にあって曰くありげな人物揃い。
 やがて,その親戚とその周り者が続けて殺される事件が起こっていく・・・。
 物語は音禰の一人称で語られます(中盤で,この小説は音禰が綴った事件記録であることがわかります)が,警察サイドの等々力警部と金田一耕助のチームに疑われているのではないかという音禰の焦躁,恐れながらも関係を断てない高頭五郎に悩む音禰。結局その後,音禰は高頭五郎と共に警察サイドや殺人者からの逃避行を繰り広げることになります。
 やがて発見される三つ首塔。なぜか高頭五郎はその塔に執着している様子。音禰も実は子供の頃その塔を見た記憶がある。その地での冒険。
 この作品,横溝先生自身はあまり評価しておらず,その理由の一つは「本格推理小説ではない」というものだったようです。謎としては,連続殺人事件の犯人が最後まで隠されており,しかもフーダニットとしてサプライズエンディングといっていい結末ですが,そんな謎よりも一人称で語られる音禰をめぐるサスペンスが半端ではなく,高頭五郎は音禰の敵なのか味方なのか,いいやつなのか悪いやつなのかを含めて,そんなサスペンスの方が気になって,本格推理小説として読めません。
 最後,探偵が関係者を集めて「さて・・・」というのが本格推理小説だとすれば,この作品では三つ首塔の古井戸に落とされて絶体絶命の音禰と五郎,それを助けるのは音禰が敵として恐れていた金田一耕助。その時の金田一耕助のカッコ良さは,横溝先生の本格推理小説作品では味わえません。
 横溝先生としては,雑誌連載の終了の都合で最後が十分に書き込めず,それも不満の元になっているらしいのですが,最後に付け加えられた「大団円」の章でもわかる通り,ハッピーエンドで終わります。最初に音禰が五郎に手籠にされた件を含めて,ハッピーエンドとなります。
 ややエロチックな部分があり,初読の頃の高校生としては "ちょっと・・・” というところがあったのですが,今となっては大したことはありません。実に面白いミステリーでした。

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2020/11/15

ジョン・ディクスン・カーの「白い修道院の殺人」

White-priory あまりにも有名な雪の密室もの推理小説。私はグーテンベルグ21出版による電子書籍版でよんだので「白い修道院の殺人」ですが,創元推理文庫版では「白い僧院の殺人」という事になります(創元版の電子書籍はなし)。
 ヘンリ・メリヴェール卿の甥であるベネットは,招待されて訪れたイギリスの「ホワイトプライオリー(白い修道院)」という館で,そこに滞在していたハリウッドの大女優の撲殺死体に遭遇します。雪の積もった中,ホワイトプライオリーの別館で撲殺されていたもので,別館の周りは発見者であるホワイトプライオリー当主の弟,ジョン・ボーン氏以外の足跡はついていませんでした。女優は3時間前に殺害されたものであり,ジョン氏の足跡は新しく,ボーン氏が犯人である可能性はありませんでした。つまり,殺害が行われた3時間前の犯人の足跡は,雪がずっとやんでいたにも関わらず,別館の周りには付いていなかったのです。もちろん別館の中にも犯人はいない・・・。
 この有名な白い密室の状況に対して,順次3つの解決が登場人物たちによって提示されます。最後の3つ目の解決は,お馴染みのマスターズ警視とベネットによってホワイトプライオリーに呼び寄せられたヘンリ・メリヴェール卿によるものでした。前二つの解決が何気にミスディレクションになって,第三の真相がHM卿によって提示されると,読者としては「そんな方法があったのか」と膝を打つ事になります。
 周到に計算された傑作の誉高い推理小説で,読者の快い”やられた”感は,とても素晴らしいものでした。しかし「雪による足跡密室」というあまりにも有名なシチュエーションなので,真相を明かされた後で,トリックの既視感に襲われるのは致し方ないでしょう。

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2020/11/08

Siriに電子書籍を朗読してもらうのは,まだまだ・・・

Siri-reading-kindle 電子書籍(Kindle)で読んでいる本を,誰かに読み上げて欲しいと思っていました。寝ながら本を読むのもオツなものですが,寝ながら朗読を聞くのもいいかなと思ったのです。
  しかし私のKindle端末(Paper White)は一切音声を発する事ができません。それで諦めていたのですが,スマホにKindleアプリが入っており,それを読み上げアプリで読み上げて貰えばいいじゃないかと気付きました。
 私のiPhoneの読み上げソフトというと,デフォルトで入っているSiriということになります。それで,Kindleアプリで読みかけの本を出し,Siriで読ませてみました。あらかじめ,設定アプリのアクセッシビリティーから,読み上げを設定します。
 確かにSiriはKindeの電子書籍をを読んでくれます。しかし,かなりなまっていて,自然な感じとは言えません。NHKの「100分で名著」の中では,著名な俳優たちが朗読していますが,そこまで行かなくとももう少し自然に読んで欲しいものです。
 10年も前にパソコンで使っていた東芝製の読み上げソフトは,かなり自然な発音でした。この時は,1人でテキストを推敲するのに使っていたのですが,非常に役に立ちました。残念ながらSiriは,まだそこまでいっていません。

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2020/10/21

ジョン・ディクスン・カーの「帽子蒐集狂事件」

Mad-hutter-mystery 不可能犯罪を書かせたら随一のジョン・ディクスン・カーの「帽子蒐集狂事件」を読みました。いまからウン十年前,高校生の頃,創元推理文庫で読んだ作品です。
 この作品,電子書籍を入手するのに苦労しました。Kindleで書名検索しても出てきません。著者名で検索しても出てきません。書名で検索すれば,創元推理文庫の紙の本はヒットしますが,電子書籍はありません。しかし知人は,確かに電子書籍で読んだと言っていました。どういう事?,というわけで,知人のKindleを見せてもらって,書名は「収集狂」ではなく「蒐集狂」であり,著者名は「ディクソン・カー」ではなく「ディクスン・カー」である事を知りました。私は「収集狂」「ディクソン・カー」で検索していたのです。ちなみに,創元推理文庫の紙の本は「収集狂」だったために,私の検索でヒットしたのですね。
 さてその内容,何しろ高校生時代に読んだ本ですから,今ではすっかり忘れています。しかし高校生の時の感想として,面白い作品揃いのカーの推理小説の中にあって,あまり面白くなかったという記憶だけが残っています。カーの代表作ともいわれている作品で,しかも江戸川乱歩が「カー問答」(乱歩の評論集「続・幻影城」に収録されている有名なカー作品の評価)で絶賛しているので,そんなはずはないという思いが常にしていました。最近,電子書籍で「続・幻影城」を読んだのと,知人から最近電子書籍版で読んだという話を聞いたので,どうしても読みたくなったのです。というわけで,グーテンベルク21という出版社の宇野利泰訳電子書籍版を読みました。
 ロンドンで帽子の連続盗難事件が発生し,盗まれた帽子がロンドン市街の外灯の上に被せてあったり,トラファルガー広場のライオン像にかぶせてあったりという奇妙な事件が起こった。それだけでは大した事件ではないが,やがてロンドン塔で,盗まれた帽子をかぶった死体が発見され,事件はにわかに殺人事件に発展する。
 その被害者の叔父にあたる引退した著名な政治家,ウィリアム・ビットン卿の家で貴重なエドガー・アラン・ポーの未発表推理小説の直筆原稿が盗まれるという盗難事件が起こる・・・。
 カーには珍しく,不可能犯罪を扱っていません。まあ,そう言うと語弊があるかもしれませんが,不可能犯罪は強調されていません。だから途中の謎興味は,帽子盗難事件と原稿盗難事件はどう関係しているのかが中心になります。犯人と目される人物については,途中二転三転しますが,結局フェル博士はかなり前から真犯人をお見通しだったという事になって,真犯人の自白で終わります。
 真正面からの不可能犯罪でないだけに,やはり途中の謎興味が不足しがちです。それと帽子収集狂の正体はずいぶん前から推測がついてしまったので,その興味も薄くなります。だから興味は,殺人の犯人はだれかというフーダニットとなります。
 そういう意味で,カーにもこんな作品がありますという作品で,”初めて読むカー”としてはお勧めできません。カーの特徴をあまり表していない作品な訳です。
 いまいちという感想は,高校時代から変わりませんでした。

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2020/10/06

ロナルド・ノックス「陸橋殺人事件」

Viaduct-murder

 イギリスのカトリック教会で2番目くらいに偉い人だったロナルド・ノックスの推理小説「陸橋殺人事件」を読みしました。長い間日本では名のみ高く,実作は読めない時代が続いていた作品です。かなり前のことになりますが,創元推理文庫に入ってやっと普通に読める様になりました。
 「推理小説好きが最後に読むべき作品」とか「すれっからしの推理小説好きが,膝を叩いて喜ぶ様な作品」といわれ,どんなものなのか読む前から興味深い作品でした。
 ゴルフ場でプレイ中,下手なショットの後にボールを探しに行った人物が発見した男の死体。鉄道の陸橋の際に遺体がありました。ひと目で列車から転落した為に死亡したと思われる死体です。この遺体の男は,鉄道の土手で顔を損傷したらしく,人相の見分けがつかない状態でしたが,服装その他で同じゴルフ場を使っている男だと思われます。
 この時のゴルフ仲間の4人が,警察を尻目に様々な捜査と推理を重ねていく物語。各人の推理は,はじめ名推理の様に見えるのですが次々に的が外れていきます。そして最後には全然違った真相に達するという話。
 東川篤哉や麻耶雄嵩に,数人の高校生が探偵役となって活躍し,試行錯誤を重ねていくタイプの推理小説がありますが,それをゴルフ仲間の大人がやったという感じの推理小説です。面白く読みましたが,特に「推理小説好きが最後に読むべき作品」とか「すれっからしの推理小説好きが,膝を叩いて喜ぶ様な作品」とか思えませんでした。

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